2025/01/03(金) 10:00
栃木県宇都宮市の滞在体験型のファームパーク「道の駅うつのみや ろまんちっく村」を舞台に12月15日、、全日本自転車競技選手権大会シクロクロスが開催された。ろまんちっく村は「道の駅」という名前ではあるが、東京ドーム10個分の敷地面積を誇り、体験農場や森遊び、ドッグラン、温泉やプール、宿泊施設までが入った広大な施設である。
このコースは前年度の全日本選手権でも使用され、開催が1月14日だったことから、11ヶ月ののちに、再度同じ土地で選手たちが日本一を目指して競い合うことになった。ここで全日本が開催されるのは、これで3回目。「宇都宮シクロクロス」と題した国際レースも開催されており、シクロクロスファンにはおなじみの会場である。
ろまんちっく村の特設コースは、テクニカルな泥のキャンバー(斜面)、深い砂のセクション、砂利、芝、泥、シケインなど、シクロクロスの要素がちりばめられ、林間セクションの入り口に設定された大型の登坂「3段坂」など、パワーも必要となる。シクロクロスの王者にふさわしい総合的な能力が問われるバランスのよいコースと言えるだろう。
この日は朝から各種カテゴリーのレースが開催され、男子U23は、柚木伸元(日本大学)が制した。ロードレースはキナンレーシングチームで走る若手選手だ。
そして、いよいよ男女のエリートレースが開催される。
女子の最有力候補は、ディフェンディングチャンピオンの小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)。MTB、ロードでも活躍し、今季のシクロクロスでもひと
つ抜け出した強さを見せている。2週間前の大会は体調不良で欠場しており、そのダ
メージの具合が見えない要素となっていた。次に挙げるなら、御殿場シクロクロスを制した石田唯(TRKWorks)や、全日本のタイトルも持ち、今年2月の世界選手権にも出場、完走した渡部春雅(明治大学)、エリートに昇格したばかりであるが、徐々に存在感を増している日吉愛華(Teamまるいち/中京大学)らが挙げられた。
朝から気温は低かったものの、晴天に恵まれ、試走の頃にはかなり過ごしやすい気温となっていた。夜中の気温低下で凍結した林間エリアやキャンバーは、日当たりの悪いエリアではスタート時には凍結したままだったものの、キャンバーが溶け始めれば、非常に滑りやすく、難しいセクションに変わってしまう。気温の変化に応じ、どのようなコンディションになっていくのかを各自予想し、対応を判断することになり、この「見極め」も難しい要素となった。
エリート女子の出走は26名。緊張した面持ちで女子選手がスタートラインに並ぶ。
好スタートを切り、先頭で第1コーナーを回ったのは、小林あか里だった。続くサンドセクションでは、石田、日吉、渡部が続き、小林を追って走る。
この中から、日吉が遅れ、先頭は3名に。凍結していた路面が溶け始め、滑りやすくなったキャンバーも、着実にクリアして行った。
集団の中でも常に前に立っていた小林は、好ペースを刻み続け、じわじわと2名を振り切った。このまま単独で先頭に立つと、独走態勢に入る。
渡部と石田が2位争いの位置となり、先頭の小林を追いながら、デッドヒートを繰り
広げる。
小林は難度の高いコースでもミスなく、安定した走りで先頭をキープ。差は詰まるどころか、じわじわと開いていった。
小林は落ち着いて残りの周回を走り切り、独走のまま笑顔でホームストレートに現れた。集まった観客とハイタッチをかわしながら、笑顔でフィニッシュ。2位以下に50秒以上の差を開き、見事連覇を決めた。
2位には渡部が入り、16秒差の3位に石田が入った。
小林はディフェンディングチャンピオンというプレッシャーのかかる形での全日本ではあったが、応援もあり、そのおかげで、「プレッシャーも楽しめた」と語っている。
さらに、この日は表彰台で、観客への応援のお礼を伝えた後、オランダのチームに移籍し、ロード競技で挑戦するという来季の展望を語った。
小林は、アトランタ五輪にMTBで出場した母を持ち、父親もMTB選手であり、子供の頃から自転車競技に親しんできた。持って生まれたポテンシャルと、努力できる才能に恵まれた小林の今後の活躍に期待がかかる。
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【結果】
全日本自転車競技選手権大会シクロクロス 女子エリート
1位/小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)51:51.078
2位/渡部春雅(明治大学)+53s
3位/石田唯(TRKWorks)+1m09s
4位/日吉愛華(Teamまるいち/中京大学)+4m06s
5位/椿井和佳奈(信州大学)+6m04s
画像:Satoshi ODA