2024/12/04(水) 18:00
さいたま新都心で今回10回目となる「2024ツール・ド・フランス さいたまクリテリウム」が11月2日、開催された。
世界最高峰のロードレースに位置づけられるフランスを1周するレース「ツール・ド・フランス」を冠とし、今年このステージレースで活躍した選手らをゲストに招き、国内のトップ選手と、この日のために設営された特設コースで走り、クリテリウムレースなどを展開する人気の大会だ。
今年は10回目の節目となり「感謝を伝え」、「皆様と盛大にお祝いできる大会にする」とともに、「絆を深め、記憶に残る大会を目指す」と掲げ、記念大会が企画された。今年初めて、さいたまスーパーアリーナのメインアリーナを通過するコースが設定されるなど、さらなるにぎわいや盛り上がりを生み出すべく、工夫が凝らされた。
さらに今年は、さいたま市内の小学校児童と保護者4,000名をアリーナ内の座席に無料招待し、キックバイクに乗る子どもたちのための「キッズクリテカップ」、スポーツコンテンツやワークショップなど、子どもたちが楽しめるコンテンツが詰まった「スポコミフェス」、盛り上げ応援するための「チアフェス」を開催するなど、地元の子どもたちのための催しもしっかりと組み込まれ、より地元への感謝と配慮が込められた構成となった。
今年は、ツール・ド・フランスで栄誉あるグリーンジャージを着用できるポイント賞を獲得したエリトリアのビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ)が初来日するほか、過去にツール・ド・フランスも制しており、日本に多くのファンを持つクリストファー・フルーム(イスラエル・プレミアテック)、今年ツール・ド・フランス史上最多勝利の35勝目を上げた世界のトップスプリンター、マーク・カヴェンディッシュ(アスタナ・カザクスタン)らの人気選手も参戦。来日選手を歓迎する企画として、今年も合気道や琴の体験が用意された。道着に着替えた選手が、合気道を体験、琴の音色を楽しんだ後は、実際に演奏体験も楽しんだ。
そして迎えた大会当日。あいにくの天気予報ではあったが、雨がパラついたり、止んだりを繰り返す中、さいたま新都心一帯でのイベントが始まった。朝からキッズ企画や「さいたまるしぇ」と名付けられたグルメゾーン、フェスタと名付けられたイベントゾーンがオープン。昼頃からは、一般応募の方々が走る「体験走行」が開催され、パラサイクリングを含むタイムトライアルレースの後に、クリテリウムが始まった。
クリテリウムで使用されるのは、片側がふくらんだ矢印のような形に構成された、1周3.6kmのコース。途中でさいたまアリーナのメインアリーナに入る室内走行パートが含まれ、ヘアピンコーナーが2箇所。オーバーパスをくぐり、出て来る上りの頂上に山岳賞が設定されており、4、8、12、16周目の4回、フィニッシュラインに設定されたポイント賞では、2、6、10、14周目の4回、それぞれ1〜3位通過の選手にポイントが付与される。選手たちが走るのはコースを17周する61.2kmだ。
今にも本降りに変わりそうな不安定な天気の下にもかかわらず、多くの観客がコース沿いに陣取り、期待に胸を高ならせる中、選手たちがスタートした。
埼玉県出身の藤田涼平(さいたま佐渡サンブレイブ)らを含む逃げが先行するも、すぐに吸収され、1回目のスプリント賞はヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)が先着した。
大人気のフルームとロマン・バルデ(DSMフィルメニッヒ・ポストNL)が加わり、今大会で現役を引退する畑中勇介(キナンレーシングチーム)と天野壮悠(シマノレーシング)らも入った集団が先行し、会場は大いに沸いた。この頃から、雨が本降りに変わり始め、路面にも水が流れ始める。クライマーであるバルデが1回目の山岳ポイントを先着。
2回目のスプリントポイントを前に、メイン集団が追い上げ、先頭集団は吸収された。スプリントポイントはまたフィリプセンが先頭通過。2回目の山岳ポイントは、再びバルデが1位通過した。トップスプリンター、ジョン・デゲンコルプ(DSMフィルメニッヒ・ポストNL)らが一時先頭集団を形成したが、メイン集団に吸収された。
3回目のスプリントポイントは、カヴェンディッシュが獲得。この後、再び逃げ集団が形成されたが、集団に吸収された。雨はますます強くなり、マナーよく傘を差さず、レインコートで観戦する観客たちの多くは、雨が浸透し、ずぶ濡れになっていたことと思うが、それでも沿道を埋め続けた観客たちは、声援を送り、バルーンスティックやカウベルを打ち鳴らし、観戦を楽しんでいた。
今季でチームから離脱することを発表した新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)、バルデ、プリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)という人気の3名が抜け出し、先行。待ってましたとばかりに観客たちは歓声を送り、会場はヒートアップ。
バルデはこのまま最後の山岳賞ポイントも1位通過し、最多ポイントとなり、山岳賞獲得を決めた。
バルデが遅れ、2名先行のまま最終周回へ入った。ログリッチは新城を振り切り、単独に。独走のままゴールを目指すが、メイン集団が追い上げる。
チームメイトに引き上げられたギルマイがスプリントを開始、今年のツール・ド・フランスでポイント賞を獲得した脚力を見せ、さらりとログリッチをかわすと、そのままフィニッシュラインに飛び込み、今年の大会の覇者となった。
2位にはログリッチが残り、3位には追い上げたカヴェンディッシュが入った。
ポイント賞はフィリプセン、敢闘賞はフルームに贈られた。
レース後は、タイムトライアル並びにクリテリウム各賞の表彰式が執り行われた。チームタイムトライアルは、シマノレーシングが優勝している。
感謝がテーマとなる10周年の今年は、これまで大会を盛り上げてきた選手への感謝を込め、特別表彰やセレモニーも盛り込まれた。パリパラリンピックで女子ロードレース(C1-3)2連覇を達成した杉浦佳子選手にさいたま市長特別賞が贈られた。この大会にも、6度目の出場だ。9回出場の畑中や、大会の常連であり、毎回会場を盛り上げてきたカヴェンディッシュの引退セレモニーが開催され、まだ熱気が残るスーパーアリーナは、これまでの健闘をたたえる温かい拍手で包まれた。
シビアな天気予報が出ていたにもかかわらず、さいたま新都心には、例年にさほど劣らない観客が集まった。クリテリウムの中盤からは本降りとなり、気温も低く、厳しい状況であったが、天候悪化で帰る観客は少なく、最後まで沿道を観客が埋めていた。多くの観客が降りしきる雨も、ものともせず、笑顔で声援を送り、心の底から観戦を楽しんでいる様子に、10回の開催を経て、大会が定着していること、間近に世界トップの選手たちの姿を見られるこの大会を心待ちにされている方々が確実に増えていることを感じた。
さいたま市は、自転車の走行環境の整備も着々と進み、整備距離はなんと215kmにも達しており、今後もさらに延伸する計画だ。さいたまクリテリウムのような「楽しみ」要素も設けることで、自転車を活用した市民のための街づくりをさらに進めていく計画だという。これだけの大会を継続開催し、今年はさらに拡大し、悪天候の中でもきっちりと運営する姿に、さいたま市のパワーを感じた。この大会とさいたま市が、これからどう発展していくのか、期待せずにいられない。
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【結果】
ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム2024
1位/ビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ)1:35:09
2位/プリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
3位/マーク・カヴェンディッシュ(アスタナ・カザクスタン)
4位/ヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク)
5位/ニコラス・ヴィノクロフ(アスタナ・カザクスタン)+0:05
【スプリント賞】
ヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク)
【山岳賞】
ロマン・バルデ(DSMフィルメニッヒ・ポストNL)
【敢闘賞】
クリストファー・フルーム(イスラエル・プレミアテック)
【ヤングライダー賞】
ビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ)
【チームタイムトライアル】
優勝 シマノレーシング
画像提供:さいたまクリテリウム組織委員会/SSC
(P-NAVI編集部)