2024/10/07(月) 17:00
東京スポーツの前田睦生記者がレースの中から”思わず唸った”選手をピックアップする「今週の競輪好プレー」。今週はデビューからファンに衝撃を与え続けてきた深谷知広の好プレーをお届けします。前田記者直筆解説と一緒にぜひご覧ください。
熊本記念が8年ぶりに熊本競輪場で行われた。2016年4月の震災の後、ようやくだった。優勝したのは深谷知広(34歳・静岡=96期)で、深谷は震災後に再開応援イベントを企画して、支援してきた。
「また熊本で走れることを」と願いながら、長い時間が過ぎた。待つことが必要だった。イベントを行いつつ、その後の動きを待った。10月6日、12R決勝も待った。最終ホームで単騎の坂井洋(29歳・栃木=115期)が仕掛けていったところ、その動きに乗って行くかと思われた。
が、先行まくりだけでなく、番手の経験も増え、位置取りの動きも備え、レース全体を把握する能力が高まっていた。「脚をためよう」。熊本は500バンクから400バンクに形を変えたとはいえ、直線の長さはその趣を残している。
しがみつくように前に前にと攻めていく地元の嘉永泰斗(26歳・熊本=113期)の走りもあった。前団の動きをひたすら冷静に見極めて、勝利の道を圧巻のスピードでぶっ飛ばした。
2センターから空を飛ぶように駆け抜けた姿こそが、深谷知広。デビューから、ファンに衝撃を与え続けてきた走りがまたしてもあった。熊本勢の優勝がもちろん期待されるシーンといえるわけだが、今回“ふさわしい”人が優勝したと言っていい。「深谷!ありがとう!」。この言葉しか、ない。★は当然、満点の5つだ。
熊本のファンは、8年、待った。その待ち続けた8年という時間は、また新しい時間を生み出していくということを、深谷知広は、その走りで伝えてくれた。
すごいで賞=★★★★★(星5つ)