2024/08/20(火) 13:16
全日本自転車競技選手権大会ロードレースが、6月22日、23日の2日間に渡り、静岡県伊豆市の日本サイクルスポーツセンターで開催された。
ロードレースに先行し、21日にはタイムトライアルの全日本選手権が開催され、男女各カテゴリーの王者が決定された。
毎年会場を変えて行うことが多い全日本選手権だが、本年は前年度と同じ会場を使用し、コースも通常は一般開放されている5kmサーキットに加え、厳しい登坂が含まれる日本競輪選手養成所の3kmコースを加えた8kmサーキットを用いる。厳しいアップダウンが続く、この上なくタフなコースだ。
アップダウンが続く厳しい8kmサーキット。女子のコースとしてはかなりきびしく、選手間に大きな差が出るだろう
22日は、午後開始の女子に先立って、午前にはU23の男子のレースが開催され、JプロツアーでもU23の首位を走り、急成長を見せている寺田吉騎(シマノレーシング)が優勝した。
U23の興奮覚めやらぬ中、女子の出場選手がスタートラインに集合した。
メディアが集まる注目の與那嶺恵理(ラボラル・クチャ-ファンダシオン・エウスカディ)はこれまで全日本を6回制している
女子はエリートとU23が同時に走る形で開催される。レース距離は、8kmコースを11周する88kmだ。特に国内のみで走る女子選手にとっては、タフなコースを使ったレースを走る機会はあまりなく、経験値のない中で、非常に厳しいレースになると予想された。
選手にタイム差を告げるためのボードも、ウェルカムメッセージで緊張した選手やチームスタッフをお出迎え
本命は、全日本選手権で6勝をあげており、パリ五輪もロードレースへの出場を決めている與那嶺恵理(ラボラル・クチャ-ファンダシオン・エウスカディ)。海外チームに所属し、ヨーロッパのレースを走っており、抜きんでた力を持っている。
前日のタイムトライアルは雨の中のタフな設定となったが、この日は朝から晴れ、路面もドライ。ただ気温は上がり、蒸し暑さを感じる中でのレースとなった。
緊張感漂う選手は、12時30分、定刻にスタートした。1周目は集団のまま推移したが、3周目に手塚悦子(IMEレーシング)が飛び出した。手塚は先行し、単独で先頭を走り続けた。
30名がスタート
1名が先行し、集団は周回をめぐるなかで少しずつ人数を絞り込んでいった
厳しい8kmコースの周回を重ねる中で、選手たちは次々脱落していき、集団は小さくなって行った。
折り返しになる5周回目、追い上げたメンバーが手塚に合流し、先頭集団を形成した。ここからレースは一気に展開した。この中には、大本命の與那嶺の他、ヒルクライムでも活躍する木下友梨菜(ベルマーレ レーシングチーム)、東京2020五輪を日本代表で走った金子広美(三重県自転車競技連盟)、海外チームに所属する牧瀬翼(WINGS PLUS)、昨年のU23チャンピオンであり、MTBやシクロクロスでも活躍する小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)、U23ながら、前日のタイムトライアルの全日本でエリートを押さえ、優勝した石田唯(早稲田大学)らが入っていた。
5周目までに集団は一気に絞り込まれていた
6周回目に入ると、ここからさらに選手が絞り込まれていく。與那嶺がペースアップ。昨年はここで誰も応じることができず置き去りとなり、後半は與那嶺の独走でレースが終わったが、今年はそうはいかなかった。木下、金子、小林の3名が與那嶺を追い、4名の先頭集団が作られた。
與那嶺のハイペースについて行かれず、さらに2名が脱落してしまう。この中でも木下は耐え、先頭は與那嶺と木下の2名に絞られた。
先頭は與那嶺と木下友梨菜(ベルマーレ レーシングチーム)の2名に
海外経験豊富な無敵の女王與那嶺と、昨年からロードレース参戦を始めたばかりで「鈴なり妖怪鈴」の名で、youtubeで活躍し、その親しみやすいキャラクターにファンも多い木下との間に展開される一騎討ちに、観客たちはざわつき、沸いた。
5名が先頭2名を追うが、差は詰まらない
木下がアタックを仕掛け、與那嶺はすぐに反応。與那嶺のアタックにも、木下は落ち着いて反応してみせ、この位置に残る資格のある選手であることを証明して見せた。
與那嶺と木下は先頭交代をしながら協調して最終周回に入る。予想しなかった展開に会場は沸いていた
木下が先行する形でゴール決戦へ
この後2名は最終周回まで協調し、先頭交代をしながら走った。
木下が先行する形でホームストレートに突入すると、木下の後ろから與那嶺がスプリントを始める。木下はギアを上げ、食らいつこうとするが、與那嶺には敵わなかった。
木下の背後から仕掛けた與那嶺が一気に加速する
與那嶺は片腕を天に向かって突き上げ、木下を寄せ付けぬまま、ガッツポーズでフィニッシュ。7回目の優勝を勝ち取った。
落ち着いてレースを運び、きっちりと優勝を勝ち取った與那嶺
3位には石田が入った。石田はU23カテゴリーでは1位でチャンピオンとなり、タイムトライアルと合わせ、2冠を獲得する形になった。
與那嶺は「(他の選手の)みなさんの緊張が伝わってきて、(自身の)五輪の出場が発表された後で、『これは勝たないとヤバい』と自分にも緊張をもらえた」「最後、スプリントでしっかり勝てたということは自分への自信にもなった」とユーモアを交えて語った。7回目の勝利となるが「全日本は一年で一番嫌なレース」であり、「7回勝ったということでも、(勝つことは)全然簡単じゃない」と絞り出し「本当に嬉しい」とプレッシャーから解放された安堵の笑顔を見せていた。
優勝した與那嶺、2位の木下、U23の優勝、全体の3位となった石田唯(早稲田大学)
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【結果】
全日本選手権ロードレース2024
女子エリート+U23
1位/與那嶺恵理(ラボラル・クチャ-ファンダシオン・エウスカディ)3時間4分35秒
2位/木下友梨菜(ベルマーレ・レーシングチーム)+0秒
3位/石田唯(早稲田大学)+2分23秒(U23)
4位/金子広美(三重県自転車競技連盟)+2分32秒
5位/牧瀬翼(ウイング プラス)+3分2秒
◆全日本選手権ロードレース(男子)のレポートはこちら
画像:Satoshi ODA(P-Navi編集部)