2023/11/09(木) 17:05
マイナビ ツール・ド・九州2023は10月8日、開催3日目を迎え、熊本県を舞台に、第2ステージである「熊本阿蘇ステージ」を開催した(初日はステージレースとしての位置付けなしの開催)。厳しい登坂である1級山岳が、6つも登場するこの大会の最難関ステージだ。このステージの結果が、総合成績を大きく左右する重要なレースになると予想された。
熊本阿蘇ステージには、阿蘇五岳等、九州の大自然の魅力を発信するコースが設定。「瀬の本レストハウス」から南阿蘇に向かい、小周回を5度回り「道の駅阿蘇望の郷くぎの」にフィニッシュする107.73kmを走る。レース序盤に1級山岳である箱石峠が設定され、小周回には1級山岳のケニーロードが含まれているため、コース内で6回の一級山岳を越えることになる。今大会のクイーンステージと言えるだろう。
一級山岳を6度越える熊本阿蘇ステージ
スタートから雨が降り、体感気温も低く、選手たちを苦しめる1日となった。
各賞首位のリーダージャージをまとう選手を最前列に、スタートを待つ。雨の中、気温も低く、厳しいコンディションとなった
個人総合首位を行くのは、第1ステージで勝利した兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)。ポイント賞も兒島が首位に立っている。雨の中ではあるが、多くの観客に見送られ、兒島らを先頭に第2ステージがスタートした。
序盤は逃げが決まらないまま、大集団のまま、14.7km地点の一の宮の中間スプリントポイントへ。
雄大なコースを走る
ここは兒島が着実に1位通過し、首位を行くポイント賞の得点も自ら積み重ねた。
箱石峠に向かう上りで横塚浩平(VC福岡)ら4名が抜け出し集団を形成
1級山岳、箱石峠を前に、横塚浩平(VC福岡)や岡本隼(愛三工業レーシングチーム)ら4名が抜け出し、グループを形成する。ここから抜け出した横塚が山岳賞ポイントを先頭で通過。だが、この直後に集団がこの4名を吸収し、レースはいったん振り出しへと戻った。
雨と霧に包まれてはいるが、絶景が広がる阿蘇を選手が駆け抜けていく。レースは周回コースへと入った。
12名による先頭集団が形成された
早くも1周目、動きが生まれた。1級山岳であるケニーロードを経て、先頭は12名の精鋭選手たちに絞り込まれた。この中には、ツール・ド・フランスを制したヴィンチェンツォ・ニバリの実弟であるアントニオ・ニバリ、三大グランツールのひとつであるブエルタ・ア・エスパーニャを走り、九州に乗り込んできたアンドレイ・ゼイツ(アスタナ・カザクスタン)や、チーム復帰後強さを見せているベンジャミ・プラデス、ツアー・オブ・ジャパンを連覇しているネイサン・アール、前週のおおいたアーバンクラシックを制したライアン・カバナ(キナンレーシングチーム)、若手の中でめきめきと頭角を現している門田祐輔、留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)、海外経験も豊富な石上優大(愛三工業レーシングチーム)らが含まれていた。
山々の間を抜けていく
林間を上っていく
アップダウンの厳しい山岳コースだ
3周目、この中からライアン・カバナがアタックし、独走を始めた。独走力の高い選手の飛び出しに、緊張感が走る。4周目、ここに石上、留目、ニバリ、ゼイツら7人が合流、8名の集団となった。
ライアン・カバナ(キナンレーシングチーム)がアタック
集団前方で積極的に動く留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)
この先頭グループに動きが出たのは、最終周回のケニーロードの上りだった。アンドレイ・ゼイツが、ペースを上げ、集団から抜け出した。だが、この加速に付いていく力を残している選手は、誰もいなかった。
ゼイツはそのまま独走態勢に入り、山頂を通過。そのままハイペースを刻み、独走でフィニッシュラインへ向かい、勝利をあげた。
アンドレイ・ゼイツ(アスタナ・カザクスタン)が加速、単独で集団前方に躍り出た
ゼイツは独走のまま逃げ切り、ステージ優勝を遂げた
2位争いはゼイツのチームメイトであるニバリと、日本人として唯一このグループに残った留目のスプリント勝負となり、ニバリが競り勝っている。
ゼイツは「ブエルタ・ア・エスパーニャから、あまり時間がないままの参戦だったが、高いモチベーションで今日のレースに臨んだ」と意気込みを語った。厳しい天候であったが、事前に悪天候を知り、覚悟していたこともあり、問題にはならなかったという。「チームがよく機能し、自分をサポートしてくれた」と、チームメイトへの感謝を語り、「最後の上りは全力で走り、リスキーであったが、下りもこなせた」と、勝利への道のりを振り返った。「16年のキャリアの中で、日本でレースをしたのは初めてで、このすばらしいロケーションの中でレースができて、とても嬉しい」と喜びを語った。
このステージ結果を受けて、ゼイツは個人総合賞首位となり、青のリーダージャージに袖を通した。山岳賞はベンジャミ・プラデス・レヴェルテ(JCL チーム右京)が獲得した。
笑顔で表彰台に立つゼイツ
ポイント賞を守った兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)
新人賞は、この日3位となった留目が首位に立った。ポイント賞は兒島直樹が守っている。
この日の健闘で順位を上げ、新人賞を獲得した留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)
ツール・ド・九州は、翌日の大分ステージが最終ステージとなる。格の違う強さを見せつけたゲイツがリーダーを守るのか、覆す猛者が出てくるのか。山岳賞やポイント賞の行方にも注目が集まっていった__。
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【結果】マイナビ ツール・ド・九州2023 第2ステージ熊本阿蘇(107km)
1位/アンドレイ・ゼイツ(アスタナ・カザクスタンチーム、カザフスタン)2時間57分12秒
2位/アントニオ・ニバリ(アスタナ・カザクスタンチーム、イタリア)+21秒
3位/留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム、日本)+21秒
4位/ウィリアム・イーブス(ARAスキップ・キャピタル、オーストラリア)+25秒
5位/ベンジャミ・プラデス・レヴェルテ(JCLチーム右京、スペイン)+25秒
【個人総合成績】
1位/アンドレイ・ゼイツ(アスタナ・カザクスタンチーム、カザフスタン)6時間15分50秒
2位/アントニオ・ニバリ(アスタナ・カザクスタンチーム、イタリア)+25秒
3位/留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)+27秒
4位/ウィリアム・イーブス(ARAスキップ・キャピタル、オーストラリア)+33秒
5位/ベンジャミ・プラデス・レヴェルテ(JCLチーム右京)+35秒
【ポイント賞】
1位/兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)31p
【山岳賞】
1位/ベンジャミ・プラデス・レヴェルテ(JCLチーム右京)44p
【新人賞】
留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)
【チーム総合成績】
1位/EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム 18時間58分36秒
※( )内の国名は海外チーム在籍選手の国籍
画像提供:ツール・ド・九州2023実行委員会
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【ツール・ド・九州2023開催レポート】
小倉城クリテリウム
第1ステージ福岡(P-Navi編集部)