2023/09/04(月) 12:34
夏の「走ってみっぺ南会津!」が帰ってきた。会津高原の自然の中を走り、景観や地元のグルメを楽しむ人気ロングライドだが、東京2020オリンピックへの配慮や、コロナ禍への対応などで、近年は、開催できた年でも9月開催が続いていたのだが、今年は4年ぶりに、緑が鮮やかな7月の会津高原で開かれることになった。
美しい盛夏の会津高原で開催された「走ってみっぺ!南会津2023」
今年は、元々開催が定着していた「海の日」にライドが設定され、前夜祭も制限のない形となる。夏の「走ってみっぺ」が、まさにフルスペックで帰ってきたのだ。
7月上旬から日本列島を猛暑が襲い、この週末も酷暑が予想されていた。筆者も不安で事前に何度も天気予報を確認したが、南会津の予想気温はいつ見ても拍子抜けするほど低い。考えれば納得なのだが、メイン会場はスキー場であり、高原地帯に位置することから、夏でも涼しいそうだ。最高気温は連日、東京よりも5~6度低いとか。これほどベストポジションに位置していたのかと、改めてこの土地のポテンシャルをかみしめた。
前日に参加者を集め開催された前夜祭。「楽しむこと」「楽しませること」に全力だ
前日夕方に「会津高原たかつえスキー場 スペーシア」へと参加者が続々と集まってきた。ここでまず、前夜祭が開催される。地域の上質な食材を贅沢に使った料理や、地元のお酒がふるまわれ、食の魅力度が高いことに加え、栃木のプロチームの選手たちも参加し、大いに盛り上がる。前夜祭パーティーをメインイベントと捉える参加者もいるほど、人気が高い。実際のところ、ロングライドイベントには珍しく、前夜祭込みのパッケージでのエントリーが主流だというから驚きだ。
冒頭には銘酒「花泉」の鏡開きが行われ、そのあと参加者にふるまわれた。料理台にはセルフサーブ型で郷土料理が並ぶ。地方色があり、味のよいメニューに舌鼓を打ちながら、それぞれの卓を囲んだ参加者たちは笑顔で話に花を咲かせた。憚られることなく、食べて、しゃべって、笑い合える空間は久しぶりで、参加者のテンションも、4年前よりさらに
高かったように思う。
ふるまわれた地元の銘酒「花泉」
よくある定番のパーティーメニューではなく、地元の食材を惜しげなく使った料理が並ぶ
思わずおかわりしたくなる地元のお米
風味豊かな「山椒漬け」
毎年人気の「まんじゅうの天ぷら」
ステージでは、プロ選手たちのトークショーや、地元提供の賞品をめぐる抽選会などが開催され、大いに盛り上がった。
会場の熱気は時間を追うごとにアップ!前夜祭は大盛り上がりで幕を下ろした
そして翌朝。メイン会場となる標高1000mの会津アストリアロッジに参加者が続々と集まってきた。
たとえ台風が来た年も、このエリアだけは雨が降らなかった、という強運に守られた「走ってみっぺ」だが、今年もその強運を発揮。南会津は快晴に恵まれていた。
スタート地点となる「会津アストリアロッジ」
「走ってみっぺ」は、コース全てを走る100km(エントリーは中学生以上)と、途中で折り返す60km、30km(小学生以上で参加可能)の3コースが設定されている。ライドはスキー場から下った後、本格的な走行パートに入る。コースは「T」字形に設定されており、30kmは二つ目のエイドで折り返し、60kmは、「T」の左側のウィングにあたる方向に進み、高畑スキー場を越え、屏風岩まで行ってゴールに戻り、100kmは右側のウィング部分にあたる南郷スキー場方面まで行ってからゴールに戻る。
スタート会場への下りと上り以外は、目立ったアップダウンはないが、なだらかな勾配があり、どのカテゴリーも、帰路はじわじわと上る形になり、脚力のない参加者にとっては、厳しい要素となる。前半に飛ばしすぎない、はしゃぎすぎないことが重要だ。コース内は、心が晴れ晴れするような美しい田園風景や渓流が続き、疲れを吹き飛ばし、背中を押してくれる。
分けられた数十名ごとのグループの先導は、プロ選手などのペースメーカーが務める
ライドは、100kmの参加者からスタート。数十名ごとにグループを作り、ロードのプロ選手らが先導する。スピードを落とし、安全に下ってもらうためだ。冬季の降雪の影響で、路面には荒れている部分もある。スタート後は緊張や興奮もあるものだが、このペースメーカー制度のおかげで、大きなトラブルは起きていないようだ。
続いて60km、そして30kmがスタートしていく。交通量が多くないルートを使ってはいるが、分散してスタートすることで、地域の交通に負担をかけない配慮が施されている。
参加者が次々と夏の会津高原に繰り出して行った
この日は、最高気温は30度を上回ことが予測されてはいたが、東京の酷暑と比べたら、かなり涼しく、カラリとして走りやすい。ここ数年は9月の開催が続いていたが、7月は、木々や草原にはまだ黄緑色に近い若い葉も残っており、田畑も緑色。陽の光を浴びて輝く緑が、とても美しかった。
街の様子や田園風景を楽しんでいると、あっという間に第1エイドの「舘岩物産館」に到着。多くの参加者は、ここまではスタートから隊列を組んでやってくる。ここで自転車を降りると、一気に緊張がほぐれるようだ。おそらく、お土産品であろう、個包装のアーモンドクッキーが提供されていた。封を切り、さっそくいただくと、サクサクして、上質なお味。ドリンクを飲んで、エイドのスタッフの方々と会話を交わし、リフレッシュして、再スタート。気持ち的には、序章を終え、ここから「ザ・ロングライド」の展開が始まるような感覚だ。
第1エイドでクッキーをゲット!まだ元気いっぱいだ!
自分の間合いで再スタートし、隊列を組んだり、自分のペースでゆったり乗ったりと、それぞれの好みの方法でコースを走っていく。
ほどなく、前沢曲家集落に差し掛かる。ここは国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されており、茅葺屋根の家々が並んでいる。中には、そば屋やカフェもあるのだが、こちらの家のほとんどは、今でも住居として使用されているそうで、実際に暮らしが営まれている住居群であるというところが、また価値のあるところと言えるだろう。この集落に立ち寄り、タイムスリップしたかのような感覚を楽しむ参加者も多い。
集落の散策を楽しむ参加者。昔話の世界に飛び込んだような不思議な空間だ
茅葺屋根の資料館前にて
走るにつれ、この日、352号と並行して流れている舘岩川の存在感が次第に強くなってくる。いったん、集落を抜けるが、この後は山々を背負った田園風景が広がる。時折、天に向かってまっすぐ伸びた木々の脇を抜ける涼しい林や渓流も登場し、心を鎮め、和ませてくれる。
コースは川沿いの道にT字形に伸びている。序盤は舘岩川沿いを走る
スノーシェードを越えると、「T」字の分岐点はすぐそこだ。この分岐のそばに第2エイドが設定されている。
最初は「第2エイド」なのだが、分岐点近くにあるため、2回、3回と立ち寄る参加者も多い。そのすべてを、母のような寛容さで受け入れてくれるところがすごい。
さて、「包容力のある」第2エイドに到着。今年は、ブランドトマトである南郷トマトに加え、青々とした上質のゆでアスパラガスも登場。さっそく、塩をつけたトマトにかぶりつく。甘さと、近くのスーパーで食べるトマトにはない濃い「トマトの味」が、口の中いっぱいに広がった。トマトには、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質も入っている。それを採れたての、ジューシーで新鮮なタイミングでいただけるとは、最高に贅沢な補給と言えよう。
ふっくらとしたアスパラも食べ応えがあり、ごちそうレベル。ナイフとフォークで前菜としていただいてもよいシロモノだった。「じゅうねん味噌」をつけていただく餅も振る舞われており、小腹が空いてしまった参加者は、餅も味わい、大満足。贅沢すぎるエイドを後に、屏風岩を目指してスタート。
南郷トマトとグリーンアスパラガスが並んでいた。贅沢な絶品!
エイドのグルメを楽しむ参加者。どれも「ここだからこそ」の味なのだ
ペットトレーラーで愛犬と走る参加者も!
この頃には、参加者も分散され、それぞれのペースでコースを走っている。橋を渡り、伊南川とともに走る。ここからは、若干の上り基調。慣れているロードバイク乗りには、気にならない勾配だが、登坂が苦手なビギナーには、少々効いてくる区間だ。
渓流にかかる橋を渡る
木々が並ぶ涼しげなエリア
だが、この道沿いには、このイベントを象徴する「ランチ」のエイドが含まれている。ごほうびに向けて、走るのだ!
次のエイドに向けて、走る!
うねるように伸びる道は、伊南川を何度も渡り直すのだが、渡るたびに美しい渓流と緑、山々が織りなす美景が広がる。さぁ、名物エイドまで、あと少し。
画像:走ってみっぺ!南会津(Naoki YASUOKA)、編集部
※後編はこちらからご覧ください!(P-Navi編集部)