2022/09/22(木) 17:57
オホーツクエリアで、北海道北見バスが運行する「いいとこどりバスツアー」の「ハッカミントエクスプレス」の運行が始まった。これは、オホーツクの絶景エリアを走るサイクリングツアーではあるが、自転車を10台ほど収納できる特殊なトレーラーを引いた車両で、参加者と自転車とを運び、景観にすぐれ、走りやすいところだけ自転車を下ろしサイクリングをするスペシャルツアーだ。
走りやすく景観の美しいスポットのみを走る。終日バスが帯同してくれるので、万が一のトラブルへの心配も無用!
北海道は大きく、絶景をつないで自転車で回るのは、現実的には、時間に余裕があり、脚力やテクニックにそれなりの自信のあるサイクリストに限られていた。それでも「気持ちの良いエリアを走ってみたい」という声が大きいことを受け、長距離の移動やアップダウンエリアは車両でパスし、楽しめるところだけを走ってみるバスツアーが企画された。現在運行されているのはオホーツク海沿いを走る海コースと、北見~美幌~屈斜路湖を走る山コース。まだ運行が始まったばかりだが、すでに年齢・性別・スキルを問わず幅広い層に大好評だという。今回、海コースの運行に同行させていただいてきた。
集合場所は、北見バスステーションに隣接するハッカミントステーション。この横に林間の風景でラッピングされたトレーラーを引く車両がやってきた。このトレーラーに自転車を収納するという。
自転車と荷物を運ぶトレーラーを接続した車両が到着!
自転車を積み込む。しっかりとした緩衝材があるので安心
通常は参加者が自分で積み込みを行うそうなのだが、今回はスタッフの方などが請け負ってくれた。このトレーラーに10台ほどの自転車を収納できるという。朝9時、いざ、スタート。車両の中では、スタッフの方が、道中の観光案内をしてくれる。雑談に花も咲き、楽しい時間が過ぎる。
いよいよライドパートスタート!
バスは北上し、常呂町へ入った。最初にバスを降りるのは「ワッカ原生花園」。網走国定公園であり、北海道遺産にも指定されている。300種類以上の草花が咲く海浜植物の一大群生地だ。敷地は極めて広いが、一般自動車の進入は禁止されており、園内の移動は自転車に限られる。入り口のネイチャーセンターに、各種のレンタサイクルが準備されている。このツアーでは、4.5kmほど先にある「花の聖水 ワッカの水」まで走り、折り返す9kmを走る。
我々も自転車を下ろし、原生花園に漕ぎ出した。ここはオホーツク海とサロマ湖とを分ける砂州の上に広がっており、左右に美しい水の景観が広がるが、実は片方はサロマ湖で、もう片方はオホーツク海。不思議な気分だ。
両サイドに水辺が広がる。オホーツク海とサロマ湖だ
美しい水面を眺めて走り、草原の間を抜けていく。ごくゆるいアップダウンがあるが、小さなお子さんでも走れるレベルのもので、ルートは非常に走りやすい。一同はのんびり自転車を走らせた。
橋に差し掛かった。真っ青な水が美しい
眼下に広がる美しい水をのぞき込んでみる
快調に走り、サロマ湖第2湖口にかかる橋に着いた。左右に広がる美しい水辺を楽しもう。真っ青な海は壮観で、橋の上で少し足を止めて、美しい景観を楽しんだ。橋を越えると、一部未舗装エリアに差し掛かる。細いタイヤの自転車の方は自転車を置き、歩いて林の中へ入ると、広場があり、そこに井戸が設置されていた。
木立の中に入っていく
井戸組み上げ体験も楽しめる
ワッカとは、アイヌ語で「真水」を意味し、「水が湧くところ=WAKKA-O-I」に由来しているという。オホーツク海と、海の水が混じった汽水湖であるサロマ湖に挟まれた砂州上で、真水を汲み上げられるとは、実に不思議だ。飲用可能な方の湧き水を口に含むと、ごくほんのりと、塩の風味が感じられるような気がした。この花の聖水エリアには、常呂遺跡の住居跡群が発見されている。古代から、住みやすい場所であったに違いない。
澄んだ水は、ほんのり塩気がしたような気がする
来た道をゆったりと戻る。景色は、反対側から見ると、また異なって見えるから不思議である。
自転車を積み込み、能取へ向かう。某有名アイドルグループが、航空会社のCMを撮影したことで有名になった岬のあるエリアだ。
続いては田園風景を走る。帆立貝が山と積まれた光景も地元ではおなじみ
美しいオホーツク海が見えてきた
まずは、能取湖の北西部のエリアを軽く走行するとのこと。自転車を降ろし、走り出した。お天気に恵まれ、オホーツク海は真っ青だ。青い海と、豊かにしげったてんさい畑を眺めながら、のんびりとペダルを踏み込む。この日は農作業をする方もおらず、動くもののない穏やかな景色に、時間の流れも忘れてしまいそうだ。ここを4.5kmほど走り、疲れる前にお迎えのバスに乗り込む。この「もうちょっと走りたい」と感じる「さじ加減」が重要なのだろう。
自転車を積み込み、次のポイントへ向かう
続いては、能取岬へ。トンネルを抜け、岬の1km手前からでバスを降り、走り始めた。ごくゆるい上り坂を走っていくと、右手に真っ赤な鳥居がちらりと見えた。こんな林の中に、鳥居? 興味が沸き、皆でバイクを置いて、見に行って見ることにした。
木々の間にひっそりと建っていた真っ赤な鳥居。「美岬神社」という神社だった
真っ赤な鳥居は美しく、真新しい紙垂がかかっていて、管理されているようだった。鳥居の文字を見上げると「美岬神社」と書いてあるようだ。後でわかったことだが、知る人ぞ知るパワースポットだったらしい。静かで美しい林間に気高く立つ鳥居には、なんとも言えない気品が漂っていた。
美しい海に向かってダウンヒル!
清い気持ちになった一行は足取りも軽く、能取岬へ向かう。
能取岬。CMで一気に有名になった
左に曲がって岬に向かって下ると、視界が開け、真っ青な海が広がり、草原と白と黒のボーダーの灯台が見えてくる。一度見たら、忘れられない景観だ。子供の頃に戻ったようなわくわく感とともに、灯台に向け、ダウンヒルを楽しむ。灯台の周りには、美しい草原が広がり、遮るもののない、真っ青な海の景観も楽しむことができる。観光客の人気スポットであるが、この日はまだ空いていて、景観を悠々と楽しむことができた。周遊を終え、自転車を積み込むと、次のスポットへ。
次はランチタイム!「網走道の駅」で休憩だ。各自が好みのものを食べるべく、いったん解散に。筆者は、名物の「網走バーガー」を頼むことにした。
ボリュームがあるのに驚くほどさっぱり。それぞれの食感も楽しい「網走バーガー」
長イモフライ。外側はパリっと、中はねっちょり。クセになる食感だ!
「網走バーガー」は、カラフトマスのフライと山わさび、地元産のフレッシュな長イモが入ったご当地バーガー。昆布味の長イモフライと共にオーダーした。作ってくれた熱々のバーガーは、厚みがあってボリューミーだが、フライの中身が淡白なカラフトマスで、山わさびの爽やかな風味も効いており、味付けも醤油ベースであるため、さっぱりといただける。大振りにカットされたシャキシャキの長イモの食感も面白かった。
これまた初挑戦の長芋のフライは、もっちりとした食感が味わえることがウリ。外側はパリっとしており、味も、食感もやみつきになりそうだ。
食後は網走の人気ジェラート店「Rimo」が作るピスタチオソフトをセレクト。地元産の牛乳で作られた、コクのあるピスタチオ風味のソフトクリームに、甘酸っぱいラズベリーソースと、ベリーがよく合う。ナッツ系のソフトクリームでありながらも、しつこくなく、さすがの味だった。
デザートは網走の有名店が作るピスタチオのソフトクリーム!
満ち足りた気分でバスに乗り込む。最後に走るのは、オホーツク海エリアだ!
JR釧網本線の「北浜駅」でバスを降車。「流氷に一番近い駅」とも言われるこの駅自体も非常に有名で、さまざまな映画やドラマ、紀行番組に登場しており、国内外の観光客に人気の観光スポットとのこと。風情ある駅舎に入ると、壁や天井にも、びっしりと名刺が貼られていた。この風習は国鉄時代から続いているという。
「北浜駅」駅舎内は名刺でいっぱい!海外のカードも少なくない
オホーツク海を望むホーム。2月は流氷が接岸し、観光列車が走る
ホームに出ると、オホーツク海はすぐそこ! 冬期は流氷を楽しむ観光列車も運行されるという。ここから自転車を走らせる。この日は、まだ暑い時期ながらも斜里岳をも望むことができる好天に恵まれており、遠くの山々のシルエットや広がる青い海を楽しみながら走行した。
ゴールに設定された小清水エリアも豊かな自然で知られており、「小清水原生花園」も有名だ。道中、濤沸湖を訪れる野鳥を観察できる「濤沸湖水鳥・湿地センター」に立ち寄ることにした。センターは無料で利用できるが、双眼鏡など、野鳥を観察できる環境が整備されており、学芸員の方が、フランクにわかりやすく見所や特徴を解説してくれる。実際に目の前の湖にはたくさんの鳥が飛来しており、強く興味をそそられた。一行は説明に聞き入り、観察を楽しんだ。
夢中になって野鳥の観察をする
スタッフの方が楽しみ方、見どころを丁寧に教えてくれた
ここからは、ゴールに向かうのみ。走行パートは残りごくわずかだ。
「見て! 馬がいますよ!」
草原に目をやると、馬たちが草を食んでいた。かなりの数だ。思わず自転車を止め、歩道に上り馬を見に行った。眺める私たちにまったく動じることなく、食事を続ける馬たち。国内で、これほどの馬の大群を見たのは、初めてだったと思う。ごくありふれた日常のようでありながら、とても珍しく、美しい光景に衝撃を受けながら、しばし自転車を止め、見入ってしまった。
大量の馬が草を食んでいた
再スタート。傾いて来た陽を浴びながら、爽快に自転車を走らせる。「小清水道の駅」に到着。あっという間だった。総走行距離は23kmほどと、小学生でも走れる距離ではあるが、旅をした総移動距離は大きく、達成感も大きい。
傾いてきた陽を浴びながら、ゴールを目指す
買い物をして、バスに乗り込み、北見バスステーションを目指す。17時すぎに帰着し、解散。楽しかった!
ゴール!走行距離は短いけれど、達成感は大きい。車内の移動も楽しかった
北見バスステーションに帰着。お土産も積み込めるため買い物もオッケー!1日満喫できた
この夏は家族単位の利用もあったという。もちろんレンタサイクルの利用が可能で、手ぶらで利用できる。今後レンタサイクルにe-bikeやキッズバイクなどのラインナップも増える見込みとのこと。どんな方でも、ダイナミックな北海道のライドを楽しめるこのツアーは、これから人気が出てくることだろう。今年の運行は路面凍結のリスクがない10月末まで。ご興味のある方はお早めに!
詳細はハッカミントサイト
画像:編集部(P-Navi編集部)