2022/09/08(木) 16:56
長野県富士見町の富士見パノラマリゾートをメイン会場に「第30回シマノ・バイカーズフェスティバル」が7月30日、31日に開催された。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて中止が続いていたため、開催は3年ぶりとなる。
30回の歴史があるこの大会は、現在はオフロード(舗装道路ではない道)を主とし、レースと、近隣の高原地帯を走るツーリングとを組み合わせたイベントになっている。レースパートも、レースエリアに設営されたコースで競われるクロスカントリーレースと、ゲレンデを下るダウンヒルレースの2種が同時進行する。イベント参加者の中には、キャンプを楽しむ方も多く、この大会を核に、この週末は丸ごと楽しむ参加者も少なくない。コンポーネントの世界ブランドであるシマノが主催するからこそ、といえる要素が多く含まれ、オフロードと自然を楽しみ尽くす、夏の風物詩として愛されてきた大会なのだ。
メイン会場の富士見パノラマリゾートからは美しい山並みが見渡せる。この魅力的な環境の中を遊び尽くす!
宿泊方法としてキャンプを選び、楽しむ参加者も
これまでの2年間は、涙を呑んでの中止となったが、今年は、万全の感染症対策を施した上での開催となった。複数の競技、ツーリングが同時進行されるため、大会スケジュールは実に複雑だ。早朝からレースコースでの試走時間が設定され、レースを走る参加者が、コース確認と身体ならしのためにコースを走る。同じ会場を用いているが、コースは、より安全に楽しめるよう毎年、工夫・変更されている。参加者によると、今年のクロスカントリーコースは、より気持ち良く、リズムに乗って走行できる、今の流行に合った走り心地で走破できるものになっていたそうだ。
朝7時半に開会式が始まった。今年は諏訪大社で令和4年寅年御柱祭りが開催された年とあって、表彰ステージにも御柱が展示されると同時に、開会式でも「木やり歌」の披露があり、その神聖な響きに会場が聴き入る一幕もあった。
開会式では「木やり歌」が披露された
レースエリアで始まったのはクロスカントリーコースでのレースだ。それぞれのカテゴリーの対象選手のレベルや車種に合わせてショートからロング、フルコースへと数段階で切り替え、分刻みのレースを展開していく。コースの難度を調整していくため、ミスが許されないスタッフは集中して持ち場に付く。
最初は、太いタイヤを履いたファットバイクと、変速のないバイクを用いたシングルスピードクラスの60分耐久レース。ファットバイクは独特の音を鳴らしながら、迫力ある走行を見せ、シングルスピードでは仮装が許されるため、個性豊かな扮装の選手たちが参戦し、見るものの目を楽しませてくれた。
極太タイヤのファットバイクでコースを走る
シングルスピードクラスでは仮装をして走る参加者も
ツーリングパートでも、朝8時から、富士見エリアや八ヶ岳山麓など、さまざまなコースのツーリンググループがスタートして行った。ツーリングには、オフロードだけでなく、オンロードのコースも設定されており、e-バイクのレンタル付きのライドは、自転車を持っていない方でも参加できる。また、オフロードコースは、基本ガイドツアーで、専門のスタッフが同行するため、ビギナーでも安心。中にはゴール地点で温泉やグルメを楽しみ、バスでスタート地点に戻る、という送迎サポートや、人気ベーカリーをめぐり、購入したパンには搬送サポートがあるライドも! 収支を考える必要がある一般的なイベントでは、まず実現しないであろう夢のような企画が詰まっていた。コース自体も、シマノスタッフだけでなく、地元に精通したプロライダーが監修したものもあり、楽しさは折り紙付き。毎年、ツーリングイベントの人気が上がっているというのも、実に納得だ。
美しい田園風景を走る
涼やかな林間を走るツーリング参加者。エリアにより、ガラッと趣が変わるのも魅力的だ
ゴールし、補給を頬張る
9時からはダウンヒルコースのレースもスタート。「エンデューロ」と呼ばれる、下りセクションのみでなく、走行パートも加えられたコースで競われる種目から始まった。
また、クロスカントリーエリアでは、キッズレースがスタート。近年、この地域を中心に、後進の育成に力を入れる元プロ選手がキッズを指導するスクールが増えてきたのだが、キッズライダーのレベルが、ぐんぐん上昇しているのを感じる。夏の思い出作りの参加、というよりは、しっかりとバイクにまたがり、正しいポジションでペダルを回し、1秒でも速く前へ向かおうという意欲に満ちた子供たちが増えているのだ。特に中高学年クラスでは、大人顔負けのスピードでコースをこなすキッズライダーも現れ、会場の大人たちも圧倒された様子だった。
出走直前まで大きな日傘でキッズライダーを守る保護者も。皆、真剣だ!
大人さながらの闘志を見せ、抜群のライディングテクニックでレースを走るキッズたち
大会を通じて、大きな話題になったのが「ドロップハンドル90分エンデュランス」レースだ。これまでオフロードを走るのは、ゴツゴツのタイヤを履いたMTB(マウンテンバイク)が一般的で、この中に、クロスカントリー、ダウンヒルという用途の違いや、ファットバイクなどのタイヤのサイズ違いの車種が含まれていた。さらにシクロクロスという冬場のレースで用いられるバイクもオフロード走行ができるものの、レースバイクという位置付けであった。
ここに近年「グラベルロード」が登場。ドロップハンドルのロードバイクでありながら、太いオフロード対応のタイヤを履き、中には衝撃を吸収するサスペンションも付け、路面を選ばず走れるバイクで、じわじわと支持を広げている。このカテゴリーは、シクロクロスとグラベルロードというオフロード対応のドロップハンドル付きバイクに限定し、90分の耐久レースとして初めて開催された。
スタートは「ル・マン」形式が採用され、参加選手は、指定の場所にバイクを置き、均等に離れた位置に整列し、スタートの号砲とともに、走ってバイクに向かい、飛び乗ってレースをスタートさせる。さらに注目されたのが、ショートカットポイントが設けられ、くじ引きで「当たり」を引けば、ショートカットできるという運任せのシステムが採り入れられた点だ。運営側としては、選手が集中し、接触が起きるリスクを減らしたいという思いから導入したそうだが、結果として、遊びゴコロ満載の企画になった。「当たり」を引いた周回ではラップタイムが一気に短縮され、レースの行方がとても面白いものになった。
走る、走る、走る。自転車レースでは非常に稀な「全力疾走」。観客は大いに盛り上がった
なんと、当たりを引けばショートカットOK!?
ランをもこなさねばならない参加者は「しんどいよ!」などと笑顔で文句を言いながらも、楽しんでいる様子。ドロップハンドルのバイクゆえに、走行スピードも速い。これまでのオフロードレースにはないスピード感あふれるレースとなった。また、これまでオンロードレースに参加してきた層がこの大会に参加するきっかけになり、大きな可能性を秘めたレースとなった。
レースカテゴリーのこの日最後の種目は、クロスカントリーでは、4時間と2時間の耐久レース、ダウンヒルでは全長約1070m(高低差187m)のコースを2~3名のチームで一丸となって駆け下りる「チームダウンヒル」。個々の力に加え、チームの団結力も問われるレースで大盛り上がりとなり、この日のレースは幕を下ろしたのだった。
4時間耐久は長く日本のトップを走り続けた山本幸平さんを先頭にスタート
チーム一丸となって駆け下りるチームダウンヒル
この日、会場内には、出展社ブースと試乗コースも設営され、にぎわいを見せた。だが、一口に「試乗」と言っても、スケールが違う。用意されたコースは3種類。このラインナップが、とても贅沢だった。シングルトラックのオフロード用コース、激坂のゲレンデでe-バイクの力を試せるコース、そして公道を含む舗装道路、砂利道、林道、農道などあらゆる路面を試すことができる2.6kmのメインコース。2.6kmもの距離をリアルな路面で試走できることなど、滅多にない。さまざまな路面に対応するバイクが並ぶこともあり、しっかりと走行性能やフィーリングを試せるこのコースは非常に好評。景観が豊かだったこともあり、感想を聞くと「試走のつもりで出たが、ただライドを楽しんで走り終えてしまった」と笑顔で語る参加者も。いずれにしても、満足度はピカイチだった。
ずらりと並んだ展示ブースが参加者を楽しませる
もう一つの目玉は「バイカーズマルシェ」。地元の名産品が並ぶ人気企画だ。今年は富士見近郊の八ヶ岳山麓から諏訪湖周辺には味にうるさい層が認めた絶品のパンを売る70~80店のベーカリーからスタッフが厳選したパンを入荷、数量限定で販売することになった。マルシェには、地元の朝採り野菜やハムベーコンなどの畜産加工品も並ぶ。中でも「メロンより甘い八ヶ岳生とうもろこし」は、すぐに完売する人気ぶりだった。「しあわせ卵」と名付けられた地元の農業実践大学校が生産する、卵殻がパステルブルー色の、南米に生息するアローカナという鳥の卵など、人気のお取り寄せ商品も並び、マルシェには参加者だけでなく、一般観光客も多く立ち寄っていた。
近年人気のバイカーズマルシェ。人気商品は早々に売り切れる
卵殻がパステルブルー!お取り寄せで人気の「しあわせ卵」も販売
翌朝が明け、2日目もクロスカントリーでは、ビギナーやキッズレース、さらに2時間耐久、ペア走行ができる30分マラソン、ダウンヒルでは、スターティングリスト順に出走するダウンヒルが開催され、ツーリングも8つのライドが開催された。
最後の種目は、未就学児の自転車かけっこ「ミルキー」だ。車輪が付いた乗り物であれば、種類は問わず、親のサポートもOKとあって、ベビーカーに乗せられた0歳児から出走可能となっている。今回から会場がゲレンデ下に移り、美しい景色を背景に開催されることになった。
やや緊張した面持ちでゴールを目指す子どもたち
ゴールのチェッカーフラッグに向けて走る!
最年少出走は生後4カ月の赤ちゃん。パパが代わりにダッシュ!
ベビーカーで参加する乳児もいれば、レースばりに全力で駆け抜ける子もいる。走る姿が愛らしく、観戦客も多く集まる人気のカテゴリーだ。今年も多くの愛らしいドラマが展開され、大人たちは目を細めて見守った。
ミルキーの最終組の後ろには、このイベントを支えたシマノサポートライダーたちが並んだ。ライディング教室の講師やレースサポートなど、2日間フル稼働した
多様なコンテンツが展開され、多くの参加者が、全力で楽しんだシマノ・バイカーズフェスティバル。久しぶりの開催となった今年は、改めて、そのジャンルの広さと、それらをそれぞれのスタイルで満喫する参加者の姿を見て、まさに夏のフェスティバルだったと感じた。
会場内のミストシャワーを全身で浴び、涼むキッズライダーたち
0歳の赤ちゃんからシニア、超初心者からベテランライダーまで、誰でもたっぷりと楽しめるシマノ・バイカーズフェスィバル。来年の夏休みのスケジュールに加えてみてはいかがだろうか。
画像提供:株式会社シマノ(シマノ・バイカーズフェスティバル)、編集部(P-Navi編集部)