2022/05/31(火) 12:13
富士スピードウェイを舞台に「FUNRiDE(ファンライド)presents 富士チャレンジ200 supported byパラチノース(以降、富士チャレンジ)」が、先月17日に開催された。
富士スピードウェイを舞台に開催された富士チャレンジ200
いわゆる耐久レースの中に分類されるイベントであるが、レースの設定が走行時間ではなく走行距離であり、最長200kmの設定距離を走り終えた時点で競技終了となる。制限時間7時間の中であれば、速く走り終えても、ゆったりと走ってもよい。それぞれのスタイルに合った形で参加でき、富士スピードウェイのサーキットを爽快に走れるというところで、多くの参加者を集めている人気のレースイベントだ。
カテゴリーは、200、100に加え、今年から50(ソロのみ)も新設された。ソロだけでなく、チームでの参加も認められており、まさに様々なチャレンジが可能。昨年東京五輪の自転車ロードレースでも使用された富士スピードウェイを走れるというところにも、注目が集まり、コロナ禍の難しい時期にエントリーが行われたにも関わらず、1300人あまりの参加者が集まった。
1300名あまりの参加者がサーキットを走った
当日は少し気温の低い曇天となったが、早朝から意気揚々と参加者たちが集結した。
【全日本「最速店長」選手権開催】
最初に開かれたのは、月刊誌サイクルスポーツの人気企画「第11回全日本最速店長選手権」。全国のサイクルショップの店長の中から、サイクルスポーツ編集部が選抜した有力店長たちがエントリーし、日本一速い店長の称号をかけ、ロードレースで競うというもの。専門ショップのスタッフには元プロの競技選手なども多い。さらにショップ店長の多くは販売PR用に価格度外視で組み上げたロードバイクに乗っており、機材の面では現役の競技選手よりも優れていることも多い。例年、選抜された店長たちはプライドをかけて走り、非常にレベルの高い戦いが展開される。
ウォーミングアップする店長たち。この日はライブ配信も開催された
ラインナップする店長たち。前列には元プロ選手の姿も
このタイトルにかける店長たちの思いは熱く、スタート前のウォーミングアップでは、エリートの全日本選手権のスタート前を連想させるほどの緊張感が漂う。午前7時10分にスタートしたレースは、早朝にも関わらず、熾烈な戦いが繰り広げられた。ドラマチックな展開を経て、最終的には岩島啓太店長(エイジサイクル)が3回目のタイトルを奪取。2位に入った野中秀樹店長(KhodaaBloomショップ東越谷店)は、なんとエントリーモデルのアルミバイクに乗っての準優勝。高価な機材がすべてではないこと、さらには、ブランドのエントリーモデルの性能の高さを、自ら示してみせた。
【「鬼ごっこ」企画開催】
早朝に大いなる盛り上がりを見せたレースの後、試走が行われ、いよいよ富士チャレンジのスタート準備が始まった。
ゲスト・サポートライダーを先頭に参加者が整列
ゲストライダーがスタートラインの最前列に並ぶ。聴覚障害者のオリンピック「第24回夏季デフリンピック」への出場を控えたデフリンピック日本選手団から4名の選手が出場。さらに、東京五輪自転車ロードに日本代表として出場し、まさにこの富士スピードウェイ
にゴールした金子広美選手、youtuberのtom’s cyclingのTOMIさん・YOPIさんも共に走る。
東京五輪自転車ロードに参加した金子広美選手も参加
また、実業団レースなどにも出場している関東甲信越の4つのチームから選手たちが参加。グループに分かれて、3つのペースを設定し、完走を目指す参加者のペースメーカーとして一定ペースで走るサポートを行った。自分に合ったペースのグループに入れば、そ
のままシンプルに完走を目指すことができ、ぐっと走りやすくなる。
スタートを待つ参加者の列は長く続いた。参加者の層は厚く、トップスピードで順位を競い合うレーサーから、長距離に挑戦するビギナーまで幅広い。今回もビギナーへの配慮として、自分のペースで走りたい参加者のために「マイペーススタートライン」が設けられ
た。前方から出る参加者は順位やリザルトを狙うレーサーが多く、ゆったり走りたい参加者がここに混じると、追い抜かれ、怖い思いをするだけでなく、接触リスクも生じてしまう。スタート位置を分けることで、様々な狙いを持つ参加者たちが同時にスタートしても、それぞれが気持ちよく安全に走れるようになる。
参加者たちは間隔を保ちながらスタート。接触などのトラブルは生じなかった
この狙いは、功を奏する。参加者は接触もなくスタートし、1周の追い越し禁止区間を経た後、全員がスムースにレーススタートに移行した。今回は、「鬼ごっこ」の新企画が盛り込まれていた。「最強のホビーレーサー」と呼ばれ、プロ選手をも打ち破ってきた高岡亮寛さんが率いる「Roppongi Express(RX)」という最強のホビーレーサーチームが、一般スタートの1分前にスタートし、チームで先頭交代をしながらスピードをキープし、逃げる。これを一般レーサーが追い、22周(約100km)を逃げ切れたらRXの勝ち、捕まえたら一般レーサーの勝ち、というチャレンジだ。RXを追う中で、健闘したレーサーの中から敢闘賞が選出され、甘味料「パラチノース」のスティック1年分が贈られる。
1分前に先行スタートした「Roppongi Express(RX)」が先頭を逃げる
RXは1周約6分30秒(平均約42km/h)で周回を重ねたが、リアルスタート後の参加者はこれを上回る最速約6分05秒(平均約45km/h)という高速ペースでRXを追い詰め、8周回でRXを捕まえてしまった。
協力してRXメンバーを追い詰める参加者の集団
捕まった後、口々に「速いよ!」と言いながらRXのメンバーがレースを降りてきた。雨の影響もあり、うまく力を発揮できなかったようだ。また、実力者も多く、団結し、スピードに乗せた一般レーサーの集団の力があまりに大きかったのだろう。敢闘賞は「上位着順で(RXが捕らえられた8周目までの)通過順位の合計が最も小さい値の選手」に与えられることになり、ゴール後、加藤光雄さん(EXTENDED VAX SAYAMA)が選ばれた。
【それぞれのチャレンジ】
参加者たちがサーキットを走り抜けていく。各カテゴリーの表彰台を目指すレーサーたちの集団は高速で周回を回っていくが、多くの参加者は完走や自分が設定した目標に向け、それぞれのペースで走る。チーム参加者はメンバー交代のタイミングでピットに戻ってく
るが、ソロの参加者も休憩や再スタートは自由。規定されているのは、エントリーした距離のみであり、各自のスタイルでチャレンジを楽しむことができる。
サーキットを走る参加者たち
最初にフィニッシュするのは、今年新設の50kmのカテゴリー。短距離決戦でスピードを上げて走り抜ける参加者もいれば、「まず50kmから」集団走行に挑戦する初心者もおり、意義のあるカテゴリーになった。優勝者は1時間10分04秒(平均時速42.62km/h)で走破した末岡正充さん(ぼっちれーしんぐ)となった。激戦となった100kmの部は、2時間21分51秒(平均時速 42.11km/h)で走破し、2位以下に大きな差をつけ、独走でゴールに飛び込んだ小林政徳さん(チーム光)が最速だった。
100kmの部を制した小林政徳さん(チーム光)
最長の200kmは雨と低温の影響もあり、大波乱の展開に。このカテゴリーを制したのは濱地勇樹さん(チームNCFD)。4時間54分24秒で200kmを走破した。激闘となったレースをどう決着するのかと見守る観客の前で、ラスト2周で飛び出し、独走を保ち、初優勝を飾った。
最後は独走でフィニッシュに飛び込んだ200kmソロの勝者濱地勇樹さん(チームNCFD)
【パラチノースタイム!】
大会の冠スポンサーとなったのは甘味料「パラチノース」。昔、「虫歯になりにくい甘味料」として知られていた記憶があるのだが、この糖は甘味も一般的な砂糖(精白糖)の半分で、小腸全体を使って、ゆっくりと吸収されるため、身体がエネルギーとして長く使うことができ、持久系のスポーツの補給に向いているそうだ。
バイクからこんなアピールも
この日は「パラチノースタイム」が設定され、パラチノースを使った糖質補給食品がふるまわれた。特設スポットにはスポーツ羊羹、エナジーバー、カステラ、パラチノースを水で溶いたドリンクなどが並ぶ。
パラチノース入り補給食を試せる「パラチノースタイム」が設定された
スポーツ用の糖質補給商品は速やかに吸収できる糖質を大量に含んでおり、非常に甘いことが特徴。「甘いものが苦手なひとは持久系の競技は難しい」と言われるほどだ。だが、筆者も味見してみたが、パラチノースの糖質補給食品は甘くなく、さっぱりとおいしくいただける。だが、エネルギー源となる糖質はしっかりと含まれているという。甘さ控えめのお菓子のようにパクパク食べられてしまうので、むしろ危険を感じる(笑)くらい食べやすい。
パラチノース入りカステラ、羊羹、エナジーバーなどが並ぶ。どれも控えめな甘さで食べやすい
参加者は次々レースを小休止し、このスポットを訪れて、ふるまいを味わっていった。「甘くなくておいしい!」「食べやすい」という声が聞こえてくる。この甘さでこの糖質量を摂れるのは、長時間の運動をする場合には、非常にありがたい。
パラチノースが徐々に血糖に入るため、事前に食べておいても、運動中のエネルギー切れを回避できるという。トップアスリートだけでなく、運動中に飲食しにくいビギナーの方などにも、救世主となるかもしれない。
パラチノースの活用法について高岡亮寛さん(RX)tom’s cyclingのTOMIさん・YOPIさんらが語るトークショーも
血糖値の急激な上昇を起こしにくい性質を生かし、糖尿病などの予防やヘルスケアに配慮したパラチノーススイーツも全国に増えているという。普段何気なく摂っている「糖」について考える貴重な機会になった。
【ブースめぐりも楽しい!】
この日も、メンテナンス製品、オリジナルウェア、アスリートフードなど、さまざまなブースが並んでおり、レースを終了した参加者や、チームで参加し順番を待つ参加者などがブースめぐりを楽しんでいた。
目を引いたのが、和のパッケージの「MANA BAR(マナバー)」。人工甘味料、保存料、着色料不使用で、さらには小麦粉を一切使わない「グルテンフリー」。オーツ麦、大豆、玄米などの穀物を使ってこのエナジーバーを作り上げているという。健康に意識が高い方でも、安心して食べられるこだわりの商品だ。
「MANA BAR(マナバー)」が並ぶ。「ゴマ&ワカサギ」フレーバーは旨味が詰まっており、エナジーバーとは思えない深い味わい
てんさい糖や、吸収速度が遅い糖質源であるリンゴ濃縮果汁を使用し、甘さを控えながらも、おにぎり1個分のエネルギーとタンパク質が摂れるそうだ。エナジーバーも、進化している。気になったのが「ゴマ&ワカサギ」というフレーバー。魚がエナジーバーに??? 聞けば、パッケージに富士山が描かれているご縁もあり、山中湖さんとコラボし、限定で作り上げた商品だという。魚には有効成分も多く、身体にはよさそうだが、味は? 食べてみると、まったく魚の「くさみ」はなく、旨味だけが活かされており、噛み締めると深い味がする。ゴマとほんのりとした甘味が相まって、スイーツというより、完成度の高い食べものという印象。純粋にいくらでも食べられるくらい美味だ。それぞれの嗜好に合わせ、補給食品も進化していることを思い知らされた。
この日は、想定外に気温が下がってしまい、春の気温を味わってしまった後の身には少々辛かった。サイクリストにおなじみの大阪のレストラン「エスキーナ」が、キッチンカーでやってきて、温かいフードを提供してくれていた。
気温が低い中、熱々の料理を提供してくれた「エスキーナ」のキッチンカー
お手製のシロップが並ぶ。暑い日はソーダ割りが人気
一番人気は、熱々の「バターチキンカレー」だったようだが、筆者は「ジンジャーシロップ」のホットドリンクをオーダー。ピリッとしたジンジャーがカラダを芯から温めてくれ、ほどよい甘味でほっこり。飲み干すのも惜しかったが、やっぱり一気に飲み干してしま
った。屋外での活動を知っているからこそ用意できるメニューだと感動。「外でいただくからこそ、いっそうおいしいもの」があると納得した。
【制限時間いっぱいまで楽しめる】
終盤の時間帯は走行者が減り、この世界トップクラスのサーキットを独占して走れるのも、このイベントならではの魅力。時間をかけてゆったりと走るのもアリだし、ブースめぐりや休憩を挟み、サーキットが空いてから悠々と走るのも、かしこいかもしれない。
上質のサーキットを自分のペースで気持ちよく走れるのが最大の魅力
それぞれの「ゴール」に向けて走る
サーキットでは、最後の最後、制限時間が来る瞬間まで、参加者たちが走行していた。車両が走るために設計されたサーキットであり、当然のことだが、路面状態もよく、ビギナーの方でも気持ちよく走れる富士スピードウェイ。今年もファミリーやビギナーから、
仲間で結成したチーム、セミプロともいえる脚力の持ち主までが、それぞれの趣向に合わせて富士チャレンジを走った。設定が「時間」ではなく「距離」であるため、参加のハードルも低く、個々の趣向に合わせて走りやすい。今年は表彰式を中止するなど、感染防止対策が徹底されたイレギュラーな形であったが、来年以降は、より平常の形に近づき、さらに賑わいを増す開催となるだろう。
画像提供:富士チャレンジ 大会実行委員会、編集部(P-Navi編集部)