2022/04/08(金) 18:00
埼玉県越谷市は、関東平野の中央に位置しており、平坦が続く土地。自転車で楽に移動できることから、利用する方が多いそうだ。そんな環境だからこそ、サイクルラックが準備され、工具が自由に使える「サイクルカフェ」が生まれた。現在、登録されているサイクルカフェは15軒(令和4年3月現在)。今回は、越谷市のレンタサイクルを利用して、桜と、サイクルカフェめぐりを楽しむ「おひとりさまライド」に出発した。
今回のスタート地点は、レンタサイクルを貸し出す拠点の最寄り駅「越谷レイクタウン駅」。駅前にはアウトレットも入った大型ショッピングモール「イオンレイクタウン」が広がっている。走り終えた後も、ショッピングや食事を楽しめる環境は魅力的だ。
越谷レイクタウン駅で下車。手ぶらなのが嬉しい
人気のショッピングモールもすぐそこに
まずは、「水辺のまちづくり館」へ。ここに越谷市の観光協会さんが管理するレンタサイクルがあり、ロードバイク以外は何と無料でレンタルできる! ロードバイクも有料とはいえ、1日500円。リーズナブルだ。
水辺のまちづくり館には多様なレンタサイクルが並ぶ。今回は、このバイクに決めた!
施設の入り口には、一般的なママチャリと、少しスポーティーな自転車が並んでいた。キッズバイクも用意され、ファミリーサイクリングにも対応できる。
今回は大きめのホイールを履いたカゴ付きのクロスバイクをセレクト。トップチューブが地面と並行に設定された車体は、一見、大きそうに感じたが、またがると、意外とハンドルが近く、問題なく乗れた。ママチャリと同じくらいタイヤが太く、安定感があるが、ホイールが大きいので、こげばグングンと気持ちよく進んでくれそうだ。
貸し出しはシンプルで、身分証明書を提示し、フォーマットに記入するのみ。9時から16時まで自転車を使うことができる。鍵を受け取り、タイヤに空気を入れ足して、快適性をアップ。そして、いただいたサイクルカフェのマップを参考にして、店舗を選ぶ。今回はスマホでGoogleマップを表示し、次の行き先を「自転車」で検索し、出た提案ルートを参考にしながら、好みのルートで走る作戦を取ることにした。いざ、出発! 晴天の中、越谷の街へ、ペダルをこぎだした。
サイクルカフェマップをゲット
施設裏に回り、いざ、スタート!
水辺のまちづくり館の裏手、大規模調整池の周辺にしつらえられた遊歩道に入る。つぼみがふくらんだ桜の木々が並ぶ。もう少し時期が遅ければ、ピンクに彩られ、さぞかし美しかったことだろう。
一般道に出て、北へ。まずは、車の心配のない新方川の堤防上の道を行くことにした。青空の下、菜の花が咲き、黄緑色の草に覆われた堤防は、のどかな春の雰囲気に包まれていた。のんびり進んでいると、ここにも桜並木が並んでおり、一部、もうすでに開花しているエリアも! 濃淡のあるピンクの花で彩られた道の美しいこと。ここには散策や撮影を楽しむ多くの方が、たたずんでいた。
新方川の堤防上へ。春の景観に心躍る
早咲きの桜などに彩られたエリアも
川沿いの道を離脱して走ると、ほどなく住宅地の中に、風情ある門構えが見えてきた。「花田苑」だ。駐輪場に自転車を停め、入園料を払って、中に入る。そこには、和の世界が広がっていた。
穏やかで大きな池が中央に広がり、橋が随所にアーチを描く。その奥には、和の建築が見える。池を中心に園路がめぐらされた、このような庭園を「池泉廻遊式庭園」と呼ぶのだそうだ。花田苑の敷地面積は21,290平方メートルに及ぶ。
花田苑に到着。ウェディングのカップルが撮影をしていた
広い池が中央に配置された池泉廻遊式庭園が広がる
丁寧に整えられた木々と、アーチを描く橋。ここでも白無垢姿のカップルが撮影をしていた
手入れの行き届いた日本庭園は、外に広がる住宅街とは、違う時間が流れているかのようだった。晴天に恵まれ、ウエディング写真を撮影するカップルや、時期をずらした七五三なのか、晴れ着姿の子供の姿も。地域に愛されている特別なスポットなのだろう。
花田苑には「こしがや能楽堂」も併設されており(入口は別)、無料で見学することができる。屋外に能舞台が設けられ、特に夜間の上演時は、幽玄な世界が広がることだろう。この日は施設利用者がおり、見学可能なのは、ロビーと展示室のみであったが、ガラス越しに趣のある能舞台を眺めることができた。
屋外に設けられた能舞台
話しかけてくるような「面(おもて)」の展示も
和の世界を堪能した後は、ランチタイム。春の景観が愛されている「キャンベルタウン野鳥の森」経由で、サイクルカフェを目指そう。「キャンベルタウン野鳥の森」の桜の開花はまだだったが、お弁当を広げる保育園の一行もおり、多くの人々が散策と滞在を楽しんでいた。
白鷺のオブジェが飾られた「白鷺橋」を渡り、「キャンベルタウン野鳥の森」へ
併設の公園ではピクニックを楽しむ一行も
向かいの大吉調整池の周囲にもぐるりと桜並木が続く
こしがやサイクルカフェの1軒目には、「ヒナノ珈琲 越谷店」を選んだ。住宅街を抜け、大通りに出ると、ふわっとおいしそうなパンの香りが漂ってきた。白を基調としたおしゃれな建物の「ヒナノ珈琲」を発見! パンの香りの元は、カフェの隣にあるベーカリー。サイクルラックの横に自転車を停め、さっそくカフェに入る。
「ヒナノ珈琲」に到着
明るく、センスの良い店内には、気兼ねなく使えるひとり用のスペースも完備
店内に入ると、自然光を生かした、明るく、開放感のあるスペースが広がっている。店員さんが、おひとりさま用のスペースへ案内してくれた。テーブルには一人ひとつ、電源も用意されている。ナビでスマートフォンを使ってしまうため、充電できる設備は、とてもありがたい。
メニューを受け取ると、種類の豊富さに驚いた。パスタやオムライス、カレーなどの料理に加え、大ぶりなプリン、人気のマリトッツオなどスイーツもたくさん。レモンやミントをあしらったジャー入りドリンクなど、まさに「映える」メニューが満載なのだ。モッツァレラチーズが乗った大きなサラダに強烈に惹かれ、このサラダとパン、ドリンクのセットをオーダー。このあとの立ち寄り計画を考えて、ランチはヘルシーにしておきたい。
大きなモッツァレラが乗ったビッグサラダのランチ。テーブルに電源があるのも嬉しい
運ばれてきた大皿のサラダには、つやつやの大きなモッツァレラがドーンと乗っていた。何と、ぜいたく! ナイフを入れると、やわらかい中身がクリームのように流れ出してきた。別がけのドレッシングをかけ、絡めながらいただく。冷たくて、味わい深くて、おいしい。添えられたパンは、ふわふわのモチモチで、温かく、甘味もあり、これひとつだけでも十分楽しめるクオリティ。コーヒーは惜しげもなく大きなグラスに注がれていて、この日は予想外の暑さで、身体がカラカラになっていたが、すっかり満たされた。満足感もあり、食べて気持ちよいランチだった。このカフェを選んで正解!
自転車にまたがり、再スタート。腹ごなしに少し走ろう。埼玉県の鳥である「シラコバト」の名を冠した公園エリアを目指すことにした。シラコバトは国の天然記念物にも指定されている貴重な鳥で、実は埼玉県のマスコット「コバトン」も、シラコバトである。余談だが、シラコバトは「ぽっぽっぽ」と鳴く。童謡「鳩ぽっぽ」のモチーフになったとも言われている鳥だ。
道中にはさまざまな産直販売スポットも
走りやすそうな道を選びながら走り、スムースに「しらこばと水上公園」に到着。この付近は運動公園や広場が集まっており、地域の広大なレジャーエリアになっている。平日にもかかわらず、たくさんの家族連れが来訪しており、テントもたくさん並んでいた。心豊かに暮らす、幸せなこどもたち。笑顔いっぱいの家族たちを眺めていて、筆者も幸せな気持ちになった。
コバトンの森
たくさんの家族連れが春の1日を楽しんでいた
ここからは、デザートタイムとして2軒目のサイクルカフェを目指す。選んだのは「珈琲屋OB 北越谷店」。ビッグサイズのフード、ドリンクが人気らしい。
ほどなく、大通りに面したカフェに到着した。ログハウス風の建物に、サイクルカフェのタペストリーがかかっている。サイクルラック横に自転車を停め、中に入った。
サイクルカフェ「珈琲屋OB 北越谷店」に到着
席間に仕切りもあり、落ち着ける店内
天井が高く、様々な窓から自然光が降り注ぎ、店内は想像していたより明るかった。奥の窓には、ステンドグラスが貼り込まれている。個々のテーブルの周りがうまく仕切られていて、リラックスして滞在できそうだ。
小さめのテーブルを選び、席につく。このカフェも席に電源タップが備え付けられていて、ありがたい。オーダーはタブレットで行うようだ。ここの売りは、デキャンタサイズのドリンクの上にパフェが盛られる「くりーむそーだパフェ」。でも、どこか洋風な「クリームあんみつ」なども魅力的。悩み抜いた結果、「まっちゃパフェ」をオーダーした。
人形のようにかわいらしい「まっちゃパフェ」
運ばれてきたパフェは、上部のアイスにレーズンの目が二つ付き、帽子のようにワッフルコーンをかぶり、ふわふわのホイップクリームを全身にまとった人形のような可愛らしい作り。サイズも大きいし、インパクトも大だ!
いざ食べてみると、アイスは比較的さっぱり。抹茶ゼリーは、とても大ぶりにカットされ、食べ応えはあるけれど、甘さ控えめ。驚くほどさらりと食べられる。女子高校生御用達系メニューかと思ったけれど、大人でもごく普通に味わえた。お会計時に、次回以降10%引きの券もいただき、お礼を言って店を出た。また、来てしまいそうだ。
さあ、気持ちよく走って、ビッグパフェ分のカロリーを消費しなくては! 桜の名所として知られる元荒川沿いを行こう。
桜並木が続く元荒川沿いの道
道に覆いかぶさるように枝を伸ばす桜。満開のときには、どれほど美しいことだろう
残念ながら、美しい桜並木の桜は、つぼみ状態だった。堤防上の道を、時には囲むように立っている桜の木々が満開を迎えたら、どれだけ美しいことか。桜はなくとも、青い空と、若草に覆われた堤防、穏やかな川の流れは美しく、景観を楽しむことができた。
ここで、気になっていた地域の和菓子屋さんにも立ち寄ることにした。川沿いから離れ、「岡埜製菓店」へ。おそらく昭和の頃から開店していると思われる店構えは、どこか懐かしさを感じさせる。
「岡埜製菓店」へ到着
お供え用の盛菓子以外はほぼケースは空!
店内に入ると、和菓子のケースは、なんとほぼ空! 奥から出てきた女性が、この日はなぜか飛ぶように売れてしまい、ほとんど売り切ってしまったと申し訳なさそうに教えてくれた。この店は、蜜漬けにしたクワイのまんじゅうなどでも有名なのだが、大福も、いちご大福も、桜餅もなく、残っていたのは六方焼きとカステラ饅頭、どら焼きのみだった。失意の中、唯一味のわからない「カステラ巻」を購入した。
失意の「カステラ巻」は、あんも上質で美味
店舗を出て「カステラ巻」を割ると、中にはふっくら炊かれた粒あんがたっぷり入っていて、外側は、少し潰したカステラのようだった。しっとりして、食べやすい。いつか、また食べにくるぞ!と誓い、お店を後にした。
午後になり、道路も混み始めたようだ。サイクルカフェ「CAFE803」なども並ぶ52号線が比較的空いており、この道で南下することにした。
道中には、五月人形が並ぶ専門店があるなど、発見もあり楽しかった
このルート上には自転車の通行位置を示す矢羽根や、自転車専用通行帯が設定されており、交通量は少なくなかったが、安心して走ることができた。このままルートは49号に入る。
自転車専用通行帯が整備され、とても走りやすい
自転車が少し前に出て信号待ちできる配慮も!クルマから見えやすく、左折巻き込みを防ぐことができる
反対車線側にどら焼きの看板が見えた。「シュークリームどら焼き」の文字が強烈に気になって、Uターン。店舗に入ってみると、ケースにはずらりと贈答用の箱が並ぶ。どら焼きは、ケースの上に並んでいた。フレーバーは栗入り、白あん、梅あん、黒糖入りと多様。気になった「シュークリームどら焼き」は、冷蔵品らしく、店舗奥にあるとのこと。スタンダードな粒あんと「シュークリームどら焼き」をチョイス。受け取ると、どら焼きはずしりと重かった。
どら焼きの看板が並ぶ「えびす」へ
落ち着いた店内。「しばられ地蔵」のモナカも人気
店舗を出て、さっそく「シュークリームどら焼き」をいただく。中には、ホイップクリームと、おそらくホイップが混ぜられたカスタードクリームが入っていた。だが、不思議と脂っこいもたつきもなく、ふわりと軽い。ぶあつい粒あんどら焼きも、粒が光るような上質のあんと、しっとりした皮がベストマッチ。食べ応えもあり、"オオモノ"のオーラが漂う一品だった。
どら焼きのラインナップも豊富!
しっとりした皮の間にホイップとカスタードクリームが入った「シュークリームどら焼き」
デッドラインの時間が近づいている。南下し、この日最後の桜スポットである綾瀬川の堤防を目指した。
綾瀬川へ
美しい水辺をゆく
橋を渡り、川の南岸に入る。そこから右折して、堤防上の道を進む。この先にある「金明第2ふれあい広場」の周辺が桜の名所らしい。軽くコーナーを越えると、長く続く桜並木が視界に飛び込んできた。思わず声をあげる。こりゃすごい!
遠くまで続く桜並木
広場側では、早咲きの桜だろうか、もうすでに満開を迎えていた
残念ながら、多くの木がつぼみのままだったのだが、花をつけている木々もあり、満開時の雰囲気を窺い知ることができた。あと数日も経てば、間違いなく、ここに絶景が広がることだろう。広場で元気に遊ぶこどもたちの歓声を聴きながら、しばらくこの付近の散策を楽しんだ。
ナビの指示するままに細い路地を抜けてスタート地点を目指す
さあ、スタート地点に戻ろう。帰路はルート検索をし、まっすぐに越谷レイクタウンを目指す。それでも、住宅地を縫ったり、走っていいのか戸惑う細い路地に入ったり。地域のさまざまな表情が見られて楽しかった。
無事に、水辺のまちづくり館にゴール。鍵を返し、ライド終了だ。これだけ走れて、楽しめて、無料というのはすごい!
越谷サイクルカフェは、軒を連ねるカフェも増え、近々新しいマップが公開されるそうだ。これから、ライドには最高の季節がやってくる。平坦の越谷は、サイクリング未経験の方でも走りやすいし、楽しみどころも満載。みなさんも、越谷でサイクリングデビューをしてみては?
画像:編集部
参考:こしがやサイクルカフェ(P-Navi編集部)