花が彩る春の山梨ライド

2021/06/22(火) 12:26

花が彩る春の山梨ライド

春は新緑が芽吹き、花々が咲き誇る美しい時期。気温もほどよく、自転車で走るにはぴったりの季節だ。だが、今年も新型コロナウィルスの感染拡大状況が思わしくなく、密を作りにくい活動とはいえ、多くの自転車関連のイベントが中止や延期を決めている。山梨県にも「桜と桃のサイクリング」と名付けられた桜と桃の花の絶景を楽しめる人気のロングライドイベントがあるのだが、こちらもコロナ禍で2年連続の開催中止となった。とはいえ、花の開花時期は限られ「待ったなし」の状況。3月末に企画された桜の美しさを堪能しようという有志のグループライドに帯同させてもらうことになった。

今年の桜は開花が早く、まさに満開を迎えていた。イベントは「中央市農村公園」をスタート/ゴールとし、中央市と笛吹市に渡り「∞(無限大)」マークを描くルートを走るが、今回は富士山の眺めも堪能したいというメンバーもいたため、イベント走行ルートの笛吹市側の東半分を生かし、希望者は北のフルーツライン側にも足を伸ばし、走る予定だという。
参加メンバーの集合地点は「山梨県森林公園金川の森」。この公園にはサイクルステーションが設置され、幅広いラインナップのレンタサイクルで園内の自転車散策も楽しめる。今回の参加メンバーはそれぞれの自転車に乗ってここに集合。イベントとは逆回り、時計回りで、笛吹市側のルートを走る。


いよいよライドスタート!木々を抜けて行く

川沿いに木々を抜けて行くと、桜が満開ではないか。全員が自転車を降り、思い思いの角度から桜を撮ったり、記念撮影したり。スタート早々にライドはストップ。ここで、この日のライドはこんなペースで進むのだろうというイメージを全員が持ったように思う。春の景色が美しすぎて、止まって写真を撮らずにはいられないし、この景色を楽しむために来たのだから!


さっそく美しい桜の前で記念撮影。大輪の花が咲いていた


桜のトンネルを抜けて行く

ゆったり時間を過ごした後にライドスタート。桜のトンネルを抜けていく。今回の主役は桜。ここから、絶景が楽しめるスポットを目指すという。フルーツの生産が盛んなエリアなのだろう、随所に桃の果樹園が広がっている。桃の花は三分咲き程度だろうか。
花が咲き始め、ほんのりピンク色に染まり始めた桃畑と、その向こうにそびえ立つ残雪を被った南アルプスがなんともいえない気高い景観を醸し出すスポットを発見。先頭は一度通り過ぎたものの、Uターンし、このエリアへ。ガイドブックなどには載っていない魅力あるスポットを見つけ出し、楽しむのは、あたりをしっかり見回せて、小回りが利く自転車ならではの特権だ。


まもなく見頃を迎える控えめな桃の花と、美しい南アルプスの眺め


一同、各々が探し出した「ベストスポット」で記念撮影

それにしても、なんと美しい!  晴天に恵まれ、奇跡のような美しいコンビネーションに感動。あくまで収穫第一の桃畑であり、うまく画角に収めることはできなかったけれど、美しい空間を満喫したのだった。ここからは、地元のメンバーに案内してもらいつつ、桃畑の間を抜け、集落の中を走り、繰り返すアップダウンを越えていった。

桃畑の間を行く


集落の中を抜ける。細い道に冒険のようなわくわく感が高まる

最後は少しがんばる上り坂。見渡せば、道の左右には春の絶景が広がっているのだが、少々(いや、かなり)運動不足の身には、登坂がキツく、あまり楽しむ余裕が持てない。


なかなかの上り坂。ここを越えたら、きっと絶景が待っている!

ついに「八代ふるさと公園」に到着! 甲府盆地が一望でき、桜と桃の季節は、ピンクの絨毯が広がる絶景を楽しめる人気スポットだ。公園内には古墳がふたつあり、上に登ることが許されていて、さらに高い位置から景観を楽しむことができる。


古墳にも登ることができ、園内を自由に楽しめる


各所から美しい景観が見晴らせる

この公園は、大ヒットしたドラマのロケスポットとしても有名で、主人公が叫ぶ印象的なシーンで使われたこともあり、多くの観光客がやってくるという。一同もこの丘に上り、なにやら叫んでみようかとも思ったが、時勢的にも大声は禁止なので、大人しく景観を楽しむのみにしたのだった。


人気ドラマで主人公が叫ぶシーンが撮影された人気スポット

山梨には、話題のリニア中央新幹線の実験線が通っており、この八代ふるさと公園にもリニア実験線展望台が設置されているという。上ってくる時に見えた高架橋が、実はリニア実験線だったのだ。2027年に運行開始予定のリニア中央新幹線は、なんと時速500kmで走るという。その姿を、この目で見ることができるのだろうか。公園を出て坂を下ると、すぐに高架橋が見えてきた。あれがリニア実験線か! がっちりとしつらえられており、防音壁が設置されているのか、一見鉄道路線には見えず、ぼんやりと高速道路かと思っていた。言われてみれば、高速道路にしては幅が狭すぎる。これが新しい交通の姿なのか。思わず見入ってしまう。


前方にリニアの高架橋が見える


枝に簡単に手が届きそうな果樹園の間を抜けて行く

果樹園の間を縫い、着々と高い場所へと上って行く。この上に、何があるのだろう? やぐらとちょっとしたベンチが見えてきた。展望台だ!
着いたのは「花鳥山展望台」。イベントでも、ビュースポットとして立ち寄る設定になっている。リニア実験線を見られる丘として有名なのだそうだ。
「あ!ちょうど試運転が通るかもしれない!」。地元メンバーの声に、一同に緊張が走る。カメラを構えてスタンバイしていると、線路の近くに立つメンバーから「『ゴーッ』って音が聞こえる!」という報告が。ドキドキ高なる胸を押さえながら、カメラを構えていることしばし。
きた! スルスルと、カモノハシを想起するような長い口(ノーズ?)を持つ白っぽい車両が現れた。これが本物のリニアモーターカーか!
だが、秒速で過ぎ去ると思いきや、なんだか遅い。時速500kmってこんなもの? いぶかしがる私たちに「すぐそこに停止場所があって、折り返すから減速してるんだよ」と教えてくれた。なるほど。それにしても、狙いすませたように展望台でリニアに出会え、しかもこんなにゆっくり観察できるとは。ほどなく、折り返した車両がこちらに向かってきた。動画や静止画を撮る一同。


ゆっくりと折り返してきたリニアの顔を撮ることに成功。皆、大興奮!

勝手にスピーディーなオシの強い色柄の車体をイメージしていたのだが、車体は高架橋とかぶるくらいシンプルなデザインで、サイドから見ただけでは高架橋と一体化して見えるほど。音も大きくなく、洗練された未来の乗り物という印象を受けた。いずれにしても、貴重な経験だった! ここまで上ってきた甲斐があったと一同満面の笑顔。

ここからもうひとつの人気スポットへ向かう。地元では「花鳥山神社」とも呼ばれ、親しまれているという「浅間神社」だ。一本杉で知られているというが、桜の名所でもあるこの神社には、やはり多くのひとたちが集まってきていた。皆で自転車を停め、神社の風情ある美しいいでたちを楽しんだ。樹齢はどれくらいになるのだろう。満開の大きな桜が並び、圧巻の眺めだ。


風格のある桜の木。下に立てばオーラが降りてくるようだ。それぞれ撮影を楽しんだ

また、この神社の駐車場はリニア実験線を見晴らすベストスポットとしても知られている。気品ある南アルプスと桃畑を貫くリニアの眺めは、山梨のいまを象徴する景観と言えるかもしれない。


浅間神社前は南アルプスとリニア実験線を眺められる貴重なスポット

ここからはしばらくライド。美しい景観やリニア観察に時間を使いすぎてしまい、少々予定より押しているようだ。境川自転車競技場はカットし、ちょいと補給に行こうという話になった。行き先は、皆がそれぞれ気になっていたというスイーツの店だ。

道はアップダウンを繰り返すが、上れない勾配はない。里の雰囲気や、果樹園、田園風景など、どこに行っても美しく、心がなごむような景観が広がる。地元の方が先導し、交通量の少ないルートを選んでくれたこともあり、気持ちよく走ることができた。


「たまご村」に到着!


看板商品の放牧たまごを使ったプリン

到着したのは「たまご村」。たまごそのものだけでなく、プリンやシュークリーム、シフォンケーキなど、放牧たまごやオーガニックたまごを使ったスイーツや惣菜なども販売している。聞けば全国で、放牧たまごを使ったプリンを作っているところは他にないのではないかとのこと。ケースにならぶ生菓子系も、シフォンケーキやバウムクーヘンもおいしそうで、ひとつを選び取ることができず、悩み抜いてしまった。
筆者は、シュークリームに心を決め、レジに向かうと、あまりにもおいしそうな厚焼きたまごが鎮座しているではないか。どうしても食べてみたくて、こちらもお買い上げ。これこそ、たまごの味がわかり、ここでしか食べられないものだから。


大ぶりな玉子焼き。持つとずっしり重い


味わい深いたまごを堪能できた

表に出て(イートインスペースはコロナウィルス感染対策で閉鎖中)、さっそく玉子焼きを切り分け、全員で味見。しっかり焼かれていて、弾力すら感じられる存在感。たまごの味が活きていて、ゆっくり味わいたくなる玉子焼きだった。


バニラビーンズ入りの濃厚カスタードクリームがたっぷり!

さて、本命のシュークリームは? クリームは予想通りのクオリティ。濃厚ながら、まったくくどくない。皮も歯応えも、厚みも、量も、すべてのバランスがちょうどよく、何度でも食べたくなる絶品だった。景観にも、走行にも、おやつにも大満足の一同。ここから石和方面に向かって走る。


あちこちに魅力的な景観が点在しており、一同はそのたびに止まりながら進む

道中にも、美しい眺めが次々現れる。美しいまち、美しい季節。ときどき立ち止まって、撮影を楽しむなど、ゆったりと走行を楽しんだ。ほどなく、石和に到着。ここでこの日のライドはいったん解散となった。楽しかった! 富士山の眺めを楽しむメンバーは昼食を取ってから北上し「フルーツライン」と「ほったらかし温泉」に向かうという。筆者は笛吹川沿いをゆるゆると走り、スタートした「金川の森公園」を目指した。


驚くほどリーズナブルな価格で美味なるスイーツを販売する「桔梗屋工場アウトレット」

道中、桔梗信玄餅で有名な「桔梗屋工場アウトレット」を発見。ここでは少し変形したもの、賞味期限の近い菓子などをアウトレット価格で販売するだけでなく、詰め放題(朝開催・整理券が必要)なども開催しているという。すぐに食べるおやつを購入して休憩してもよいし、カフェ利用も可能。ただ、アウトレット店舗は遅い時間にはほとんどが売り切れてしまうため、買い物希望の方は、早めの訪問をオススメしたい。


「金川の森」に帰着。まばゆいほどの花が出迎えてくれた

「金川の森」にゴール。花に彩られ、春の公園はとてもあでやかだった。長い距離ではなかったが、行く先々で春ならではの美しい景観を堪能でき、気持ちも上向きにしてもらえたような楽しいライドだった!
このライドが開催された時期はまだ桜のみであったが、イベントが開催予定だった4月上旬には、桜と桃の花が咲く絶景を楽しむことができたという。2年連続の中止になってしまったのだが、来年の開催を期待したい。

このエリアは走りやすく、楽しみどころ、見どころも多く、グルメも非常に充実している。桜や桃の花が終わってしまっても、鮮やかな新緑、盛夏、紅葉の秋と、どの季節に足を運んでも、その季節の魅力を満喫できることだろう。山梨県内には、この他にも人気のサイクリングコースがたくさん存在している。またチャンスを見つけて、ご紹介していきたい。乞う、ご期待!

※ガイドラインに従い、マスク着用など感染予防への最大限の配慮をして走行しております。
※今年3月末の緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置が発出されていない期間でのライドです。

画像:編集部(P-Navi編集部)

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