2021/05/07(金) 21:34
茨城県の守谷に、気になるデリカテッセンがあった。日本では唯一、ソーセージの本場ドイツのエアライン「ルフトハンザ」のファーストクラスの機内食にも使用されている、いわば、世界のトップからその質を認められており、店舗では食事も可能で、ランチに立ち寄るサイクリストも多いという。このソーセージに惹かれた仲間たちと、地元ライダーにコースを作っていただき、ランチライドを行うことになった。
到着したのは、つくばエクスプレスの守谷駅。秋葉原からは快速で32分。本数も多く、料金もリーズナブルで、このつくばエキスプレス沿いの駅は、県外からはアクセスしやすい。
ちなみに終点のつくば駅までいけば、筑波山へのヒルクライムや、ナショナルサイクルルートに認定された「つくば霞ヶ浦りんりんロード」にもアクセスできる。筆者は守谷駅から、地元メンバーが集まる「もりや学びの家」に向かい合流。この日は晴天に恵まれ、美しい景観が望めそうだ。
このエリアには利根川と鬼怒川が流れているのだが、双方の流れがYの字型になり、合流しているポイントがあるという。今まで、利根川と鬼怒川がひとつになっているなど、考えたこともなかった。さっそく、この合流ポイントを目指す。まずは鬼怒川を越える。赤い鉄橋が冬の景色に映えてより美しく見える。
鬼怒川を越える
ここから、路地に入り、川へ向かい進んで行くようだ。ひっそりとした佇まいの鳥居の横を抜け、川沿いの道へと入る。まさに探検気分!
木々や建物の間から光が漏れてくるひっそりとした道を探検のように抜けていく
鬼怒川沿いには、葉を落としてしまった木々はあれど、鮮やかな緑色の草に覆われており、春のような華やいだ景観が広がっていた。広がる眺めは雄大で、空が広い。車も来ず、まるで貸し切りのような開放感! 都心からこの距離で、これだけの環境を走れるのは魅力だ。ぼんやりと、前方に太陽の陽に輝く水が見えてきた。あれが合流地点か? ワクワクしていると、舗装道路が終わり、オフロードへ突入。今回は全員ロードバイクで来ており、自分のライディングテクニックにまったく自信のない筆者は、ガタガタする砂利道の上を走るのは、ヒヤヒヤだった。今にも転んでしまいそう。タイヤの太いクロスバイクだったら安心なのだが……。まごまごしていると「草の上の方が走りやすいですよ!」とアドバイスが飛んできた。なるほど! 砂利の少ないエリアを選びながら、バイクを進めていく。
見えた!前方に広がるのが鬼怒川と利根川の合流地点か
ふと顔を上げると、前方の川岸が「へ」の字型になり、その先に水辺が広がっている。港に着いたかのようなふしぎな景観! ここが合流地点だ。ちょうど、Yの字の股のところに突き当たったわけだが、この有名な川が、ここで一つになっているとは、非常に感慨深い。ちなみにこの一つになった川は、ここから利根川として流れていき、霞ヶ浦から流れ出る常陸利根川とも合流し、千葉県の銚子で海に流れ出ていく。バイクを押して、丘の上に登るなどして、それぞれの川を眺め、しばし、この秘密基地のようなスポットの時間を楽しんだのだった。
路面には農耕車の通行を知らせるオリジナルのピクトグラムも
帰路の砂利道は、復路で左側となる草の上を選んだら、しっかりと固まっており、難なく走ることができた。オフロードで走行位置を選ぶことを「ラインを選ぶ」と言うのをよく聞くが、この「ラインを選ぶ」重要性を体感できる一コマだった。
海までの距離を知らせる看板を発見
ふと「海まで97km」という看板に気が付いた。利根川はここから97kmも流れていくのか__。
川の壮大な旅に思いを馳せる。
川沿いの道をゆく
守谷のマンホールには市の鳥「小綬鶏(コジュケイ)」と市の花「ヤマユリ」が描かれていた
ここから市街地に復帰し、住宅街や緑豊かなエリアを抜けていく。道幅がさほど広くない道路でも、ドライバーが配慮してくれるので、ストレスなく走ることができた。さすが茨城県!
市街地をゆく。「一言主神社」の看板が見えてきた!
大きな鳥居の下を自転車に乗ったままくぐり、神社へ向かう
奥まった道へ入り、ループのような道を走っていくと、巨大な鳥居が現れた。この存在感の大きなこと! 道は鳥居の下にそのまま伸びているため、バイクに乗ったまま鳥居の下をくぐる。「一言主神社」に到着だ。ここは809年に創建された1200年もの歴史を持つ神社で、「一言の願いも疎かにせず、叶えてくれる」と言われているのだそう。「誠道に従い、有言実行を示された言行一致の神」として崇められ、「力ある言葉の神、また何事も解決する万能の神」として時の朝廷からも厚く崇敬されてきたそうだ。歴史の教科書に載る「朝廷」という言葉に、少々驚いた。この目の前の神社が、それほど長い歴史を持っているとは。
由緒ある「一言主神社」へ
神社に参拝。「すべての願いを聞き入れてくれる」神様に期待!?
風情ある境内で一休み
お参りをし、お守りを見にいくと、なんと自転車にぴったりの二輪車お守りがあるではないか。ハンドルやミラーなど、車体につけるようだ。ビビッドな色のものは、反射材が使われており、走行中に光ることで、実際の役割としてもライダーを守ってくれる。それぞれが好みの色味を選んで購入し、ハンドル周りに装着した。
二輪用守りを発見!
全員で早速装着した
開放感最高の景観を楽しむ
ここから再び市街地へ。美しい並木道に入り下っていくと博物館が見えてきた。ここは「ミュージアムパーク茨城県自然博物館」。地元の小学生の定番の遠足先とのこと。中には世界最大のマンモス、松花江マンモスや、同じく世界最大級の大型の植物食恐竜、ヌオエロサウルスの骨格標本が展示されているのだとか。宇宙や地球の生い立ちなどが展示解説されているそうで、大いに興味はあったが、かなり時間をかけてめぐる施設のようなので、今回は外観だけで断念することにした。子連れで訪れるには最適の施設だろう。
自然博物館へ到着。中には恐竜の骨格標本が。付近の自然環境も最高だ
博物館への道は美しい並木道に整備されており、走るだけでも気持ちよい
再び、気持ちのいい並木道を走り、いよいよランチスポットへ向かう。ここからはまだ15kmほど離れている。空腹になればなるほど、おいしいはずだ!
気になっていた広大な田園風景を抜けることに。平らな大地の中を走る爽快な開放感を楽しんだ
なんと牛が放牧されていた。のどかな景観に癒される
大地の中に連なる鉄塔もまた美観
広大な田園風景の中を抜けていくと、放牧中の牛たちが草を食んでいた。この自由さに驚く一同。2021年は丑年とあって、記念撮影を試みるメンバーもいたが、距離があり、牛と一緒に撮影するのは難しそうだった。地域の景観を楽しみながら、バイクをさらに走らせる。
鉄橋に戻ってきた!「懐かしい」感覚が沸く
橋から眺める鬼怒川は穏やかで絵画のよう
鬼怒川ぞいの道に合流し、ふたたびあの赤い鉄橋へ。鬼怒川を渡り、守谷市の市街地に入る。「帰ってきた」というなんともいえない懐かしさのような感情が湧き上がる。この鉄橋が川の流れと合わさり、なんとも美しく、皆で止まって記念撮影をした。ここからの眺めは人工物も少なく、穏やかで、市街地の喧騒がうそのようだ。
さぁ、ランチスポットへ向かおう。田園風景や市街地を抜け、ここから数キロバイクを走らせると、ついにこの日の目的地「ハンス・ホールベック」が見えてきた。
地元でも大人気の「ハンス・ホールベック」。惣菜を買いに来る方々の行列が絶えない
店舗周辺には、何とも言えない良い香りが漂っており、ランチを待ちわびた皆の食欲をさらにそそる。奥の駐車場脇に自転車を並べて停め、いよいよ店内へ。
入り口のショーケースにはたくさんのハム、ソーセージ類やオードブルなどの惣菜が並んでいる。どれもおいしそうで、ワクワクは最高潮に。奥のレストランスペースへ誘導され、皆でメニューとにらめっこ。ランチは3種。王道のソーセージか、店舗名物のローストポークか、スペシャルメニューのドイツ風ハムステーキ「カスラー」か。それぞれがあまりに魅力的で、なかなか決められない一同。結局、メンバーそれぞれが別メニューを選び、オーダーした。筆者はやはりルフトハンザのファーストクラスで出されるというソーセージが気になり、ソーセージセットをセレクト。
まずは前菜から。一品一品が絶品で、時間をかけて食べたくなる
ほどなく、スープと前菜が運ばれてきた。ザワークラウトとともに盛られた一品一品の上質なこと! レバーペーストも、まったく臭みがなく、旨味がたっぷりだ。これはメインも相当期待できるに違いない。はやる心を抑えきれない一同。良い香りとともに、メインデッシュが運ばれてきた。歓声が沸き上がる。
メインディッシュが登場! ボイル、焼きソーセージと、輪切りにし、焼きつけた太ソーセージが盛り合わせされている
ソーセージセットには、調理された4種のソーセージが盛り合わされていた。口に入れ、噛み締めると、どれもジューシーで、濃厚な旨味とともに、さまざまな味がじんわりと広がってくる。味が、深い。まったく脂っこくなく、いくらでも食べられてしまいそうだ。色も、太さも、こんがりと焼き付けたり、ボイルしたりと調理法もさまざま。それぞれ味や風味、噛みごたえも違う。ひとことで「ソーセージ」と言っても、これだけ多様な種類があり得るのかと感動した。一つ一つを大切に味わいたくなる逸品だった。
3時間じっくり焼き込んだ国産豚「ローストポーク」は店舗の名物料理
この日のスペシャル「カスラー」はキノコソース添え。筑波もち豚の肩ロースをハムに仕上げたもの
会計に席を立つと、ショーケース前には購入のためにたくさんの人々が列を作っていた。地元の方々が夕飯のために、惣菜やソーセージを買いに来る、地元でも愛されている店舗らしい。よく見たら、惣菜の値段はかなりリーズナブル。あの前菜もテイクアウトで食べられる! たしかに、この店舗が近所にあったなら、この日のメンバーは全員、足しげく通うだろう。
おいしいランチにありつけた満足感に満たされながら、駐車場に向かう。ランチが行程の最後に組み込まれていた意味が、この時わかった。すっかり満たされてしまい、戦意(?)喪失。「もう帰ろう」モードになってしまう。この後、長距離を走るのは厳しそうだ。
一同、ゆったりとペダルを回し、車を停めていた「もりや学びの家」に向かう。満足感はあれど、やはりゴールが近づくと、どこかさみしい気持ちになるのはなぜだろう。
「もりや学びの里」に帰着。小学校の旧校舎を生かした社会教育施設で、世界から招いたアーティストの活動拠点にもなっている
5kmほど走って、「もりや学びの里」に到着。ここで解散だ。この施設はバーベキューなどの使用も可能(現在は新型コロナウィルス感染拡大の影響で利用は制限されている)ということもあり、あのソーセージを買ってきて、ここで焼いて食べる守谷ならではの「贅沢バーベキュー」も良いかもしれない。
この日の走行距離は35kmほど。ほぼ上りもなく、平坦コースであり、非常に走りやすかった。目標はランチだったわけだが、ただ目当てのレストランに向かうだけでなく、少し周遊すれば、こんなにも楽しめるのだ!
自転車は「密」を作らず行うことができ、有名観光地のような混み合う場所でなくても環境を十分楽しめるし、心身の健康にもプラスの効果が高い。新型コロナウィルスの感染拡大が続く厳しい状況であるが、健康維持や免疫力アップのためには身体運動は欠かせない。その時々の状況を見て、行政の指示に従いながら、サイクリングを楽しんでいかれたらと思う。
(このレポートは2020年初冬に走行した時のものです。自治体のガイドラインに従い、感染予防への最大限の配慮をして走行しております)
画像:編集部(P-Navi編集部)