佐賀県・唐津〜呼子のショートサイクリング

2021/04/30(金) 23:58

佐賀県・唐津〜呼子のショートサイクリング

佐賀県の唐津市から呼子港までをサイクリング。

唐津市は、九州の北西部に位置し、古代より唐など大陸への玄関口として栄えてきたまちであり、約400年も前から伝わる「唐津くんち」は多くの人を集めて賑わう日本を代表する大祭のひとつだ。
今回はこの唐津市の中心街から、玄界灘のビュースポット、さらには名護屋城跡など桃山文化の史跡を多く残すまちとして有名な呼子に向けて走る。距離は38kmほど。


今回の走行コース。行きに大きめの上りがあるようだ

この日は、唐津湾に広がる虹の松原近くのホテルから出発。虹の松原は日本三大松原のひとつであり、約100万本のクロマツが群生している景勝地だ。


虹の松原

スタートしてほどなく、高台に城が見えてきた。唐津城だ! 豊臣秀吉の家臣である寺沢志摩守広高が築いたもの。現在の天守閣は54年前に完成したそうで、真新しくすら見える。2年前に天守閣内のリニューアルを終えたばかりだという。


唐津城が見えてきた!


唐津中心街を脱出。次第に自然が豊かになってくる

唐津の中心街近くはそれなりの交通量があり、用心しながら進む。海鳥も多く、港町の風情が漂っている。


呼子へ向かう。交通量はかなり多い

しばらく走ってくると、少々複雑な分岐に差し掛かった。呼子に向かうには、奥の上り坂に向け右折。二段階右折になるのだが、横断歩道の押し歩きを含めた方が安全だろう。
ここから、上り基調の区間が始まる。視界が開けると、右手には広がる海や市街地が見える。勾配はそれほどキツくないが、比較的スピードを出している車が多いので、死角に入らないよう注意したい。


少し懐かしい雰囲気も漂う家々が立ち並ぶ中を上っていく

ゆったりとしたコーナーを回ると、ノボリとマイクロバスが見えてきた。派手な看板はないものの、車体には「からつバーガー」と書いてある。寄ってみようか。
自転車を止め、道を渡ると、マイクロバスを店舗に営業するハンバーガー屋だった。値段も比較的リーズナブルであるし、味が気になって、カウンター越しにシンプルなハンバーガーをひとつ注文。しばし待つ。


からつバーガーにストップ。「パリっとふわっと」に惹かれる

車の中で、バンズやパテをグリルしているようだ。香ばしい香りが漂ってくる。「できました!」笑顔の女性がバスのドアを開け、丁寧に外までハンバーガーを差し出してくれた。


これが「からつバーガー」。ノスタルジックな包みにキュン

なんとも風情ある包み! 昭和っぽいパッケージにキュンとくる。せっかく焼いてくれたので、一番おいしい時にいただこう。かぶりつくと、こんがりあぶられたバンズがパリッと音を立てた。おいしい! ハンバーガーのバンズとしては、自分が経験した史上最高の味かもしれない。パテはごく小ぶりだが、ソースがよく絡み、新鮮なシャキシャキレタスもたっぷり。一つの食べものとして、かなり完成度が高い。登坂中にブレーキして立ち寄った自分の判断を褒めてやりたい、と自画自賛(笑)。

さて、ここからもたんたんと上る。交通量は少なくなく、道幅も広くないので、できる限りフラフラしないようにラインをキープしながら上って行こう。
道中、何度も「ゲソの踊り食い」の看板を目にする。イカで有名な呼子まで、あと何キロくらいあるのだろうと考える。


「ゲソの踊り食い」看板が何度も現れ、どうにも気になってしまう

棚田が見えてきた。恋人の聖地に認定されている「浜野浦の棚田」が近いようだ。緑いっぱいの時期は、さぞかしキレイなことだろう。特に夕景の美しさには定評があるようだ。


美しい棚田が見えてきた


田園地帯を行く。集落が近く、交通量も多いが、道路沿いには店舗も多い

しばらく上ると、下り坂が見えてきた。もうピークは過ぎたのだ!この辺りまで来ると交通量はぐっと少なくなる。広がる自然を貸切のように満喫しつつ、周りに気をつけながら緩やかな下り坂を気持ちよく走っていく。このルートは終始集落の近くに伸びており、食堂やコンビニなども点在しているため、食べ物の調達やお手洗いに困ることはない。

気持ちのよいスピードで、呼子エリアに入った。港や呼子大橋に向けての標識も多いので、迷うことはないだろう。


呼子到着!朝市などで有名な観光地だ


めあての「中尾まんじゅう店」へ

まもなく、港エリアに到着。呼子は観光地でもあり、グルメも豊富! 今回は老舗菓子店らしい店構えの「中尾まんじゅう店」に立ち寄ることにした。ガラスには「いきなり団子」「肉まん」とあるが、昭和っぽいショーケースをのぞき込むと、それらしいものはない。聞くと、「いきなり団子」はかなり早い時間に売り切れるのだとか。残念!


売り切れ続出のショーケースには、大ぶりのふわっとしたまんじゅうが無造作に並んでいた


わらかいがコシのある生地の中に濃いカスタードクリームがたっぷり詰まっていた

白いフワッとした大ぶりのまんじゅうが並んでおり、クリーム、くりまんなどと中身が書かれている。お値段85円! よもぎ餅や串団子も気になったが、店名も「まんじゅう」だし、クリームのまんじゅうをいただくことにした。ふんわりしながらも、コシのある生地の中に、濃いカスタードクリームがたっぷり入っている。おいしい! これで85円とは、驚きだ。
近隣にもおしゃれなコーヒーや、いかしゅうまい、ソフトクリームなど、気になる店舗が並んでいたが、冬季は時間が遅くなると一気に冷えるので、またの機会に。帰路にも登坂があったのが気になっている。

海辺を少し散策して、唐津中心街に向けて出発することにした。
帰路に向かうべく、設定してきたルートを確認すると、再び中尾まんじゅう店の前を通りすぎる設定に。イヤな予感を感じながら進むと、ドーンと激坂がそびえたっているではないか! 慌てて、回避ルートを探したが、海沿いを走って帰ろうと思うなら、ここから行くのが最もシンプル。ルートに従って、坂を上ったのだった。
一気に上った後も、しばらくはアップダウンが続くが、景観も美しく、これまでと雰囲気が変わって飽きないし、交通量も少なく、走りやすい。気持ちよく、ペダルを踏み込んでいく。


アップダウンが続く

坂をたんたんと上っていくと「訳あり野菜」の直売が見え、止まってみようかと足をゆるめたら、奥には大量の牛が草を食んでいた。唐突な展開にひとり笑ってしまう。そういえば、そんな香りが漂ってきていた。


「訳あり野菜」?どんな野菜かと看板に目をひかれる


その裏には大量の牛が!思わず笑ってしまった

美しく整った住宅街に入り、気持ちよく進んでいたが、見てはいけないものが視界に入った気がする。ブレーキをかけ、引き返しておそるおそる確認すると、上半身のない「とびだしボーヤ」の姿が! これは意外と怖い。注意喚起のための演出なのか、実際に誰かが突っ込んで折ってしまったのか分からないが、こういう手法は効果があるなと勉強にもなった一幕だった。


世にも恐ろしい(?)上半身だけの「飛び出しボーヤ」。視界に飛び込んでくる違和感は大きかった

どことなく、空気感が変わってきた。干し草ロールを眺めていると、視界の先に少し輝くものが見えてきた。海だ!


干し草ロールから視線を戻すと、キラッとしたものが

少し降ると、海岸線沿いの道に合流した。ここからは海景色を楽しみながら行こう。はるかかなたまで見晴らす大海原、というよりは、海に浮かぶ島や、岬のように飛び出した陸地が見え、心和む海景色というところ。水も美しく、浮かぶ島はどこか愛らしく、親しみが持てて、冒険のように楽しい。


美しい海岸線を楽しもう。島や岬の姿がすぐ近くに見え、何とも言えない心和むような安心感を覚える


山肌に神社?こんな発見も楽しい

海岸線エリアを気持ちよく走り抜け、再び市街地へ。たまごの直売スペースも多く、多様なものを生産している土地なのだろうと思いをめぐらせる。


美しいビーチも。夏は海水浴で賑わうことだろう


何軒か出合った、たまごの直売場。それぞれのシステムを見るのも楽しい

行きに通った道をたどるルートにはなっているが、帰りはまた唐津のお店に寄って帰ろう! 悩んだ末に、駅の近くを散策してみることにした。


12月も近いのにコスモスが群生して揺れていた。気候が温暖なのだろう

最後に気になるケーキ店に立ち寄るべく、ルートを変えたのだが、商店街に漂う雰囲気に心惹かれ、フラフラと商店街に入っていく。風情と現代的な店構えがうまくマッチした外観。どうやって店舗の足並みをそろえたのだろう?


魅力的な商店街へ


ああっ!「いきなり団子」だ!

ふと、さきほど断念した「いきなり団子」が店先に並んでいるのに気づく。吸い寄せられるように「吉田餅店」へ。ケーキ店に寄る予定だったのに! でも、ほんのり温かく、おいしそうな120円の団子を買わない手はない! 一つで恐縮だが、いただくことにした。


コンパクトな店構えの「吉田餅店」


薄い皮の中に、甘いほっくりしたさつまいもとあずきが。ほんのりあたたかく、感動の味だった

上質なあずきを使ったあんに、本来の甘みを生かしつつも、しっとりと炊いた甘いさつまいも。「いきなり団子」というと素朴な家庭の味というイメージで、さつまいもそのものを食べるおやつのイメージだったのだが、この「いきなり団子」は和菓子のよう。「いきなり団子」って、こんなにおいしいんだ。感動して「これまで食べたいきなり団子の中で一番おいしいです!」とご主人に真剣に訴えてしまった。「そうですか」と少々驚きつつ、笑顔を見せてくれるご主人。この味だから、他の商品もきっとおいしいに違いない。次回来た時は他のものも購入しよう。

さて、ゴール予定時間が迫っている。最後の立ち寄りにしたケーキ店「パティスリーガラ」へ急ごう。


「パティスリーガラ」へ。フランスの菓子店のような雰囲気


どうしても気になったホワイトチョコのケーキ

この店舗は、これまでの店とガラッと雰囲気が変わり、フランスをイメージした洋風のお店。中に入ると、生ケーキと焼き菓子が並んでいた。イートインではないから、ホテルに持ち帰って食べるため、運びやすいものを選びたい。が、どうしても、ホワイトチョコ&ベリーのケーキが気になって、イチかバチか、持って帰ることにした。決めきれず、ケーキは二つ。今日の夕飯ということで。
きっちり箱に詰めてもらい、リュックに入れて、中を揺らさないよう背中をピンと伸ばし、ホテルを目指す。今日のルートは、ほどよい上りあり、海景色あり、グルメも優秀で楽しかった!


ホテルに帰り、ケーキをいただいた。チョコケーキも濃厚で美味だったが、白いケーキは、ほぼケーキまるまるホワイトチョコという初体験の衝撃だった。もちろん美味しい。

唐津城に迎えられ、日が傾く前に速やかに帰着。車は渋滞していても、自転車は空いている道を抜けて来られるから、速い。距離はそう長くないけれど、峠あり、海景色あり、グルメありと、地域の魅力を楽しめて、満足感の高いライドだった。

この翌日には、呼子の歴史めぐりサイクリングに参加した。こちらのレポートも、お楽しみに!

(※昨年冬のレポートです)

写真:編集部(P-Navi編集部)

閉じる

新着ニュース一覧