経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ・レポート

2021/04/11(日) 10:46

経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ・レポート

新型コロナウィルスの感染拡大を受け、7月に開幕し、レース日程も大幅に変更されながらも14レースを開催した2020年の国内リーグJBCFシリーズの最高峰リーグJプロツアー。最終戦となる経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップDay-2は、10月11日に群馬サイクルスポーツセンターで開催された。このレースの結果を受け、今シーズンのリーグ優勝者、優勝チームが決定されることになる。
経済産業大臣旗はリーグ内で最高のステータスの大会であり、今年唯一の「プラチナ」にレーティングされ、優勝者には900ポイントが与えられる。2位以下のポイントも他のどのレースより高く、結果次第では、接戦となっている個人とチームの総合優勝争いが大きく入れ替わる可能性も残されている。

前年の同大会優勝チームマトリックス・パワータグを代表し、フランシスコ・マンセボより経済産業大臣旗が返還される

また、この大会は「経済産業大臣旗」をかけたチーム対抗戦でもあり、優勝チームには真紅の経済産業大臣旗、通称「輪翔旗」が与えられる。
会場は群馬サイクルスポーツセンターの6kmサーキット。この大会は2日連続で開催される予定だったが、台風の接近によりDay1は中止され、1戦のみの開催となってしまったのだ。Day-2も一時は開催が危ぶまれたが、天候も回復し、30周180kmの長距離レースとして開催されることになった。

スタートラインには、リーダージャージを着るレオネル・キンテロ(マトリックス・パワータグ )を先頭に選手たちが並ぶ。開幕当初は参加を見合わせていたチームも復活し、この最終戦では前年までのレースと近い規模の選手たちが参戦する形になっていた。

シリーズの最終レースがスタート。会場は緊張感に包まれていた

スタート時には路面は濡れていたが、気温もじわじわ上がり、サーキットも天候も、レースの進行に問題のないコンディションに改善されていった。スタート直後から積極的にアタックが仕掛けられる。2周目に風間翔眞(シマノレーシング)、西尾憲人(那須ブラーゼン)、永冨一騎(群馬グリフィンレーシングチーム)の3名が先行。ここに佐野淳哉(レバンテフジ静岡)、前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)の2名が合流し、5名の先頭集団が形成された。

5名の集団が形成された

メイン集団はTEAM BRIDGESTONE Cyclingや愛三工業レーシングチームなどがコントロール、差は一時2分以上まで開いたが、1分30秒前後に落ち着くことになり、比較的落ち着いたペースで周回を重ねて行った。

心臓破りの坂を上るメイン集団

TEAM BRIDGESTONE Cycling がメイン集団をコントロール

途中、選手らが飛び出すシーンもあったが、本格的な追走にはならないまま集団に戻り、この体制がキープされることになった。

5名が吸収されると、次の展開を狙った積極的なアタックが次々とかけられ、レースは一気に活性化

レース終盤に差しかかると、マトリックス・パワータグが先頭に立ち、メイン集団のペースアップを始め、先行していた5名を吸収。すると集団が一気に活性化し、アタックの掛け合いが始まった。この中から新たに、橋本英也(TEAM BRIDGESTONE Cycling)、中井唯晶(シマノレーシング)、佐藤遼(レバンテフジ静岡)と先ほどまで先頭にいた西尾憲人が抜け出しを決め、4名の先頭集団を形成した。メイン集団とのタイム差は1分50秒まで開いた。
これを放っておくはずがないのが、リーダーを抱えるマトリックス。再び集団の先頭に立ち、ペースアップ。ラスト4周でこの4名を吸収する。

レース終盤、集団は30名ほどに絞りこまれた

集団はゴールへの駆け引きをしながら終盤周回を走る

アタックがかけられるたび、マンセボが自らチェック、ことごとく動きを封じ込めていく

新城雄大(KINAN Cycling Team)がアタック

ラスト3周。新城雄大(KINAN Cycling Team)や小石祐馬(TeamUKYO)がアタックするが、マトリックスの鉄壁の守りを崩すことはできなかった。フランシスコ・マンセボ(マトリックス・パワータグ)がことごとくこれらのアタックをつぶし、決定的な動きを起こさせない。

ラスト2周を前に角田祐輔(レオモベルマーレレーシングチーム)がアタック

ラスト2周、マトリックスがコントロールを再開

ラスト2周になると、リーダーキンテロを従えたマトリックスが集団の前方を固め、他チームの決死のアタックも全て鎮圧していく。

最終周回、山本元喜(KINAN Cycling Team)が決死の攻撃

ラスト1kmのバックストレートに現れたのは、真紅のプロリーダージャージを着るキンテロだった。この後ろにマンセボが続き、二人でラスト300mのホームストレートに突入。マトリックスの活躍の立役者マンセボを先行させ、マンセボ、キンテロの順にガッツポーズでフィニッシュラインを越え、1-2フィニッシュ。

3位にはホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックス・パワータグ)が続き、前回の経済産業大臣旗とまったく同じように、マトリックスが表彰台を独占する形で完全優勝を遂げた。

マンセボ、キンテロが1-2フィニッシュ。マトリックスが完全優勝を決めた

マトリックスが前回に続き表彰台を独占

マトリックスパワータグはチーム優勝も獲得し、4年連続で輪翔旗を手にすることにになった。さらにこのレースの結果で、年間のチーム総合順位でも宇都宮ブリッツェンを抜き、逆転優勝。キンテロが個人総合優勝を決め、2年連続で個人とチームのダブルタイトルを劇的に達成することになった。個人ランキングでは、ホセが2位に浮上しており、マトリックスはリーグの個人ランキングでも1-2を達成。圧倒的な強さを示すことになった。

リーダージャージの獲得を決めた二人

2020年もチーム優勝を決め、輪翔旗を獲得したマトリックス

マンセボが再来日した9月から、チームが一気に活性化し、快進撃を続け、ダブルタイトル獲得にたどり着いたマトリックス。過去にはツール・ド・フランス個人総合4位、ブエルタ・ア・エスパーニャ個人総合3位という、世界最高峰のレースで、トップクラスのリザルトを記録しているベテラン、マンセボ。その経験値とレース勘、さらに衰えない身体がチームを強烈に牽引した感がある。

2020年もマトリックスの完全優勝という形で幕をおろすことになったJプロツアー。2020年はコロナ禍の中、イレギュラーな開催となってしまったが、2021年はどのような形で展開され、どのような結果が待っているのか。東京五輪の開催も予定されており、レースの活性化や新たな選手たちの活躍も期待したいところである。

 

【結果】経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップDay-2 180km
1位/フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)4時間38分10秒
2位/レオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ )+0秒
3位/ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)+6秒
4位/大前 翔(愛三工業レーシングチーム)+8秒
5位/今村駿介(TEAM BRIDGESTONE Cycling)+8秒
6位/孫崎大樹(TEAM BRIDGESTONE Cycling)+9秒

【団体賞】
1位/マトリックスパワータグ  2160p
2位/TEAM BRIDGESTONE Cycling 945p
3位/愛三工業レーシングチーム 810p

【敢闘賞】
西尾憲人(那須ブラーゼン)

【中間スプリントポイント】
3周回完了時 西尾憲人(那須ブラーゼン)
9周回完了時 佐野淳哉(レバンテフジ静岡)※未完走
18周回完了時 風間翔眞(シマノレーシング)

【Jプロツアー個人総合優勝】
レオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ)

【U23個人総合優勝】
織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)

【チーム総合優勝】
マトリックスパワータグ

 

画像提供:一般社団法人 全日本実業団自転車競技連盟(JBCF)(P-Navi編集部)

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