福岡・大島1周ライド

2021/01/13(水) 13:35

福岡・大島1周ライド

福岡県沖に大島という島がある。九州本土から6.5kmの位置に浮かぶ福岡県最大の離島なのだが、2017年に『神宿る島』宗像・沖ノ島と共に大島の宗像大社中津宮と沖津宮遥拝所が関連遺産群として世界遺産にも登録されたことで注目を集めた。
島の周囲は約15km。1周にあたる道路も概ね15km程で、乗り慣れたサイクリストでなくても、気軽に島1周体験ができる距離だろう。歴史や文化面での価値に加え、美しい海に囲まれ、大半を山林や原野が占める自然景観にも優れた島であり、ここでサイクリングを楽しむ観光客が近年、急増しているという。今回はこの島で、島1周ライドを体験してきた。

大島1周ライドに向かうべく、宗像市の神湊港を目指す。神湊港から大島へは1日7便あるフェリー『おおしま』と旅客船『しおかぜ』が運航されており、運賃は570円(小児は290円)。『おおしま』は手荷物料金320円を支払えば自転車と共に乗ることが可能(搭載可能な便が限られているため、必ず事前確認を)。今回は地元で走行性に優れたミニベロをお借りし、地元のみなさんと第2便9時25分発のフェリーに乗り、大島を目指すことになった。

宗像にしばし別れを告げ、フェリーに乗り込んでデッキに向かう。
気持ちの良い風だけでなく、美しい海の眺めも楽しむことができた。


美しい海の先に大島がクッキリ見えてきた!


期待を胸に船を降りる

次第に大島がハッキリ見えてくる。人気の観光スポットなのだが、中でも電動アシスト自転車を使った島1周の人気が上がっており、朝イチの便で、貸し出し用の自転車が全てはけてしまうことも珍しくないのだとか。レンタル料も非常にリーズナブルで1回500円。小ぶりな島ではあるが、それなりのアップダウンがある。スポーツバイクでの走行に慣れているなら問題ないが、そうではないならば少しキツい。だが、アシスト付きの自転車であれば誰でもこの魅力的な島での1周体験ができるのだ。


大島港で準備、ここからスタートする

島に到着。今日は一同、16時20分発のフェリーまで、この島で過ごす予定。島は時計回りすることが多いのだが、今回は反対周りに進んでみることになった。スポーツバイク派、ミニベロ派、e-バイク派、地元のレンタサイクル(電動アシスト自転車)派と、メンバーの中でも乗る自転車は多様だ。


スタート後、程なく、海が見えてきた


不思議な雰囲気を醸し出す「夢の小夜島」

大島港を出発して、程なく、海中に立つ特殊な形の真っ赤な鳥居が見えてきた。夢の小夜島だ。見た目は巨岩というところだが、連歌師宗祗(れんがしそうぎ)の筑紫道中記に歌われた由緒ある島とのこと。鳥居の赤と島を覆う松がとても美しい。鳥居の形が少々個性的であり、右肩上がりになっているのだ。この何とも縁起が良く、躍動感のある鳥居も大島の名物なのだという。

この近辺に島グルメの多くが集まっており、おしゃれカフェや海鮮丼、ボリュームサンドイッチなどを楽しむことができる。今日はゴール後、この近くの店舗でサンドイッチをテイクアウトし、ランチ予定なのだ。夢の小夜島付近には気持ちのよい芝生が広がり、ベンチやテーブルも並んでいた。ライド後、ここに帰ってくるのが楽しみだ!


再スタート、豊かに茂る緑の中を行く

早速、上り坂が登場。さほど厳しい勾配ではないのだが、それなりの上り。前方には山が見え、豊かな緑の間を抜けていく。島というと『海景色』のイメージがあるけれども、緑モリモリの上り坂もあるのだなと、深い自然の中の音に耳を澄ます。

上りを終え、ルート上は左折だが、まだ時間に余裕もあるので、右に行ってみることになった。みんなの後を追うと、まさかの下り坂。一瞬、帰り道への不安がよぎったが、気持ちよく木々の間を抜け、30m程の標高差を下ったのだった。


まさか下りだったか!
それでも先に何が見られるのか楽しみで、一同、細い道を下っていった

あっ!海だ!
自転車を置き、浜辺まで降りてみると、視界いっぱいに美しい海景色が広がっていた。この海岸線は入江状になっており、迫り出した入江には、露出した岩の上に緑が群生しており、何とも風情のある光景だ。水は澄んで美しく、入りたい衝動に駆られる。一同は浜際の時間を楽しんだのだった。


入江に囲まれた美しい浜でしばし時間を過ごす

さぁ、ルートに戻ろう。この日は猛暑日だったこともあり、少しの勾配も厳しく感じてしまう。電動アシスト組はスイスイ快調に登っていくが、モーターがついていない派は木々が生い茂る道を大量の汗をかきながら上ることになった。これもまた、ヨシ!


分岐点復帰_上り坂が一つプラスになったけれども、いった価値があった!

先程の分岐点からは下り基調で、気持ちよくバイクを進めていく。景観が開け、海が見えてきた。海際の歩道部分に上がると、まさに絶景が広がっていた!


気持ちよくバイクを進めると、また、美しい海が見えてきた!


何と美しい海!澄んだ水に吸い込まれそうだ

欄干の上からも底までがハッキリと見て取れる透き通った海はコバルトブルーとターコイズブルーのブレンドで、楽園のような美しさ。これまでの木々に囲まれた景観とは全く異なる種類の美景に感動もひとしおだ。


世界遺産、宗像大社沖津宮遙拝所が見えてきた


少々、疲れてはいるが、長い階段を上る

この先には宗像大社沖津宮遙拝所がある。

この海をこれまでにどれ程、多くの参拝者たちが想いを込めて眺めてきたのだろう

隣島である沖ノ島は島そのものが御神体。2017年に『神宿る島』として世界遺産にも登録されている。神職以外の立ち入りは禁止され、沖ノ島で見聞きしたことを口外してはならない、島から石一つでも持ち出してはならないなど、厳格な掟で守られてきた聖なる島だ。渡船できない島を遥か遠くから拝むため、大島のこの地に遙拝所が設置されたという。この日は残念ながら叶わなかったが、空気の澄んだ日にはここから沖ノ島がハッキリ臨めるそうだ。この遙拝所も2017年に世界遺産の構成遺産として登録されている。

日本神話に登場する日本最古の神社、宗像大社は三宮からなり、沖ノ島が沖津宮、中津宮はここ大島にあり、三宮すべてが世界遺産として登録されている。大島めぐりは世界遺産をたどる旅としても楽しめるのだ。


木漏れ日の美しい道をいく


そして、最大の難所へ、止まって休憩する参加者が続出!

ここからは登坂。ルート内で最も厳しい上りが待っている。モーター付き組は悠々と、上るが、一般スポーツバイク組の特に乗り慣れていないメンバーは大汗をかきながら、つづらを越えていくことになった。とは言うものの、勾配は7%程度。乗り慣れたローディーにはなんでもない登坂なのだが__。

太陽の照りつける登坂を終え、峠で一息。
「いやー、キツかったねぇ」と、みんなで笑い合う。少々、キツイ登坂もまた、アクティビティの一つ。ここからは木々の間の道へ。涼やかな木漏れ日の中をいく。


無事峠を走破し、また脇道へ
この道の先には、何が待っているのだろう?

馬!?突如視界に飛び込んできたのは牧場の白い柵と馬のオブジェ。戸惑っていると、すぐに草を食む馬たちが見えてきた。


馬だ!まさかの光景に参加者一同大喜び、牧場の中をいく

ここはカナディアンキャンプ大島牧場。この大島の恵まれた環境の中で、馬の預託を受ける養老馬・育成牧場だ。毛並みの良い馬たちが草を食む光景を眺め、自転車を停めて、徒歩で風車展望所へ向かう。おとぎ話に出てきそうなオレンジ色の風車に向かい、草原の中に伸びる木製の柵付きの遊歩道をいく。絵本の中の世界のようだ。


次に目指すのは、あの風車!
想像していなかったメルヘンな眺めに、また、気持ちが上がる


愛らしいフォルムの風車

ツヤツヤのレンガで覆われた風車に到着。ノッポ帽をかぶったような形が何とも可愛らしい。じゅうたんのようなフカフカの草に覆われた大地とその先に広がる美しい海の眺めを楽しみ、みんなでしばし滞在。天気が良ければここからも沖ノ島が臨めるそうだ。
また、遊歩道を戻り、自転車にまたがる。下り基調の道を颯爽と進み、脇道へ。この先には何があるのだろう?


灯台が見えてきた!灯台の先は断崖絶壁、迫力ある景観が楽しめる

「海へ向かっていく」予感が漂う細い道の先には真っ白な灯台が立っていた。タイル張りの四角い灯台は断崖絶壁の上に立っており、灯台横から見晴らせば玄界灘と海岸線のダイナミックな景観が楽しめる。

ライドもいよいよ終盤戦。上りはあと一つだ。


海に向かって建てられた手作りの鳥居
背後になにかドラマがありそうで、想いをめぐらせてしまう

一気に下り、海際の大島キャンプ場付近へ。ここには手作りと見られる鳥居が立っていたが、やはり、これも右肩上がりのデザイン!このスポットからも天気が良ければ沖ノ島が臨めるという。海側から見た鳥居が正面のようで、船による参拝だったのか?鳥居が沖ノ島に向けて建てられたものだったのか?詳細は分からないが、時間の流れを感じさせる独特の雰囲気を醸し出していた。

ここからは最後の登坂に差し掛かる。木々に囲まれた自然豊かなエリア。時に稲穂を揺らす水田も現れる。水が美しく、ミネラルの豊かな土壌で採れる産物は栄養豊かで、さぞかし美味しいことだろう。


 島の中には水田も多い、田園風景の中を行く

ホトロセ峠を越えたら、あとは下るのみ。ランチは目前だ。一気に下り、田園地帯を抜け、今回は宗像大社の中津宮前も通過し、夢の小夜島前へゴール!

キツかったけれども、楽しかった!距離にすれば15km余りのライドだが、やはり、「島を1周した」という達成感は大きい。見所も景観もバラエティー豊かで、エリアのストーリーも深く、満足感タップリのライドだった。

電動アシスト付きの自転車であれば脚力に自信がなくても、誰でも気軽に体験でき、走行の爽快感や達成感は同じように大きい。近年の人気の高まりも理解できる。

この日は多くのメンバーがKitchen KAIKYUでランチ。めいめいがオリジナルのサンドイッチをオーダーした。揚げたてのカツが挟まれたビッグサンドイッチはボリューム満点!


運ばれてきたサンドイッチのボリュームに仰天!


漁業の島ということもあり、新鮮な海鮮を求め、海鮮丼を食べに行ったメンバーも

近海は豊富な魚介類を育む筑前海域有数の漁場となっており、漁業も盛んな大島だが、この日は新鮮な魚の差し入れがあったそうで、我々にも刺身を振る舞ってくれた。頬張ると、コリコリと、歯応えがあり、感激!関東のスーパーで買う刺身とは完全に別物。こういう新鮮なものを最高の状態でいただけるのが旅の醍醐味だ。


干洲に渡るのも楽しい!
ウニやヤドカリをはじめ、珍しい生物もたくさん!
散策し始めると、興味深く新鮮な発見だらけで戻れなくなる

帰りのフェリーまで干潮時には渡れる干洲に渡り、散策を楽しんだ。手を繋いで渡った2人は結ばれるという伝説もあるのだという。


港方面を散策、船が停泊するエリアの風情も良い


島に別れを告げ、フェリーに乗り込む

名残惜しいが、帰りのフェリーの時間がやってきた。レンタサイクル組は自転車を返却し、持ち込み組は自転車を船へ積み込む。

出航し、島が遠ざかっていくのを見ると、何とも切ない気持ちになる。今回はワイワイと、島を1周したが、シッカリ世界遺産をたどるも良し、宿泊して、さらに島グルメを満喫するのもオススメ、夏ならば海を楽しんでも良いだろう。


25分程の乗船を終え、宗像市神湊港に帰着
楽しかった!

宗像に到着し、自転車を降ろす。これで本日のライドは終了。遠くなってしまった大島を振り返り、楽しかった1日を振り返る。「また来たい!」_そう思わせてくれる魅力的な島だった。

(*2020年夏のレポートです)

写真:編集部 一部参加者提供(P-Navi編集部)

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