北海道・北見グルメライド

2020/10/23(金) 15:30

北海道・北見グルメライド

北海道北見市。ブーメランのような形で、南北に細長く伸びたこの市は北端がオホーツク海に面するオホーツク地域最大の都市だ。日本最大の汽水湖サロマ湖を抱え、広大な田園地帯や森が広がり、湯質の良さに定評のある温泉も有しており、多様な楽しみ方ができる。東京都の65%に匹敵する面積があり、東西に伸びる道路は110km。常呂川沿いに南下すれば、ほぼ平坦で長距離を走れることもあり、多くのサイクリストにも愛されている。そして、何と言っても北見の一番のウリは上質ながらリーズナブルな価格で購入できる“スイーツたち”。平昌五輪の女子カーリングで、日本代表選手が『もぐもぐタイム』で頬張り、全国から問い合わせが殺到した『赤いサイロ』も北見スイーツの1つだ。今回はレンタサイクルを使用し、北見のスイーツを中心に巡るグルメライドをご紹介したいと思う。

オホーツク地域ではスポーツバイクのレンタサイクルを行っており、前日までに予約をすれば、担当者が指定の時間に女満別空港やJR北見駅まで自転車を持ってきてくれる。このレンタサイクルは女満別空港で返すことも可能であるし、乗り捨て料金(2,000円)を支払えば、道の駅流氷街道・北見市常呂交通ターミナル・小清水ツーリストセンターなど、オホーツクエリア内の複数の拠点でも返却することができ、多様な旅のニーズに応えてくれる。

今回はJR北見駅にクロスバイクをお持ちいただき、北見中心街や端野エリアのスイーツを巡ることにした。運ばれてきたのはアメリカの人気スポーツバイクブランド『スペシャライズド』のクロスバイク。走行性能に優れ、太目のタイヤで安定感も高く、路面を選ばずに誰でも乗りやすいバイクだ。レンタル料金は3時間で1,000円。今回は北見近郊のみを散策予定なので、3時間一本勝負だ!

まずは北見を代表するサイクリスト御用達の和スイーツから始めよう。最初に向かったのは老舗『大丸 本店』。どら焼きなど、親しみのある和菓子だけでなく、茶席用の美しい上生菓子もあり、生ケーキ、クッキーなどの洋菓子も充実していて、どれも好評。何から何まで揃うデパート的な総合菓子店なのだ。

和洋菓子が並ぶ『大丸 本店』

増えるサイクリストのニーズを受け、店頭にはロードバイクを停めるためのサイクルラックも完備。グループで訪れたり、イベントの立ち寄りスポットになったりすることも多く、このラックが埋まってしまうことも。
この店舗でサイクリストの定番商品は『ほっちゃれ』だろう。『ほっちゃれ』とは北海道の方言で、産卵を終えたサケのメスを指す。命をまっとうすることの喜びや子孫繁栄への願いを込められ、名付けられたそうだが、この魚型が絶妙に食べやすい。

大丸の看板商品「ほっちゃれ」

ほっちゃれ」はサイクルジャージのバックポケットにピッタリ

シッカリした硬さがありながら程好く、シットリした皮の中には甘過ぎず、風味が生きた、こしあんがたっぷり!個舗装されているため、サイクルジャージのバックポケットに入り、崩れにくく、片手で手軽に食べられることから、この地域の補給食として定着している。今回は食べ続けるライドであり、補給食の準備は不要なのだが、『ほっちゃれ』を準備するところから始めよう。ちなみにこの『ほっちゃれ』はオーブントースターで温めると、外がカリッとし、あんがホクホクになり、最高に美味しい。駅からも徒歩5分程度の位置にあり、ゴール後に再度、立ち寄って、お土産として購入するにも最適だ。

店舗前にサイクルラックが設置され、『お休み処』(ラック横のスペース)があることから、サイクリストの支持が高い(画像はサイクリングイベント開催時のもの)

この店舗にはイベントスペース・ギャラリーを兼ねた休憩所『お休み処』が併設されており、購入した商品をその場でいただくことができる点もサイクリストに支持される理由だ。バイクラックも見える位置にあり、安心して、時間を過ごすことができる。

鮭型の「ほっちゃれ」、つぶらな目が愛らしい「アマビヱ」の上生菓子

この日は新型コロナウィルス感染拡大を受け、江戸時代に疫病対策として描かれたという妖怪『アマビヱ』を象った上生菓子も販売されていた。ご利益があるかどうかは分からないけれども、あまりに愛らしいので思わず購入。
続いては人気の団子を食べに行こう。北見の街も北海道の街並みの特徴である碁盤目に近い区画割になっているので、店を探しやすい。分かりやすく学園通りを北上すれば約1kmで到着するが、交通量の少ない道を選び、北見の街を散策しながら向かうのも良いだろう。

団子が人気の『銘菓処 宝屋』に到着!

『銘菓処 宝屋』は地域に溶け込む店構えで、どこかなつかしい雰囲気。ここもショーケースには団子や大福に加え、生ケーキやエクレヤなどの洋菓子も販売されている。
目移りしてしまうが、地元の方々がこよなく愛する串団子をセレクト。フレーバーは豊富で、あんがかかった白と草、正油(みたらしあん)、ごま、黒みつが並んでいる。全部選びたいところだが、この先も食べ続けることを考え、最もスタンダードな正油に決めた。ちなみに豆、草大福に加え、みそ、いもあんが並ぶ『大福もち』もかなりの人気。遠方から車で買いにくるファンも多い店なのだそうだ。

生地のキメが細かく、モチモチの串団子!あまりの美味しさに他のフレーバーも食べたくなる逸品

店舗を出て、ちょっと御行儀が悪いけれども、団子をいただくことにした。フンワリかつモチモチの驚く程、柔らかい団子にシンプルな正油あんがよく絡み、確かに美味しい!何本でも食べられそうな軽さだった。大量買いされる方が多かったのも頷ける。

エネルギーをチャージし、次なるスイーツへ!お腹を空かせるべく少々、散策に出た。実は北見中心街はスイーツの宝庫で、ごく近い距離に人気店が集中している。『宝屋』から次なる目的地は直線で行くと2.4kmしかないため、少し周遊してから次の店舗に向かうと良いだろう。

北見中心街にはたくさんの公園が点在しており、気持ちの良い緑の空間が広がるエリアも多い。オススメは北見工業大学周辺で、東陵公園や野付牛公園という大きな公園が広がり、清々しいライドを楽しむことができる。

お次は洋菓子に進出だ。人気のケーキ店『ティンカーベル』に到着。

かわいらしい外観の『ティンカーベル』、どことなく甘い香りが漂う

この店の一番の人気商品は4種のチーズとカスタードクリームをブレンドしたフィリングをパイタルトに流し込んで焼いた『チーズベイク』。卵、バター、蜂蜜など、上質な地元の素材を厳選した材料で焼き上げた『オホーツクベイク』。どちらも見た目は派手ではないのだが、1度、頬張れば、2度と忘れられなくなる美味しさを誇る。

たくさんの洋菓子が並ぶ店内、焼き菓子も生ケーキも味には定評がある

シットリ密な「オホーツクベイク」、薄切りでいただいても良質な素材から引出されたうまみが口の中いっぱいに広がり、食べ応え十分

ショーケースに並ぶケーキも色とりどりで、思わず眺め入ってしまう。オホーツク地方は国産小麦の一大産地でもあり、上質な食材に恵まれた地域なのだが、その素材を巧みに活かし、目にも鮮やかで美味なるケーキを作り上げているのだ。都内のデパ地下で売られている同様のケーキの半額程度のことも多いのだが、味は間違いなく、どれも絶品なのだ!

極上のいちごが輝くタルト。いちご、タルト、クリーム、どれもが上質

イートインスペースでサービスのコーヒーと共にスイーツを味わうことができる

この店舗にはイートインスペースがあり、無料でコーヒーも提供してくれる。悩みに、悩み、ショーケースでキラキラ輝く大粒のいちごが並んだタルトに決めた。いちご一粒、一粒の大きさ、新鮮さ、味の濃さにウットリ。フィリングが流し込まれたタルトはシットリ濃厚でありながらもサクサク感が残り、食べ応えもバッチリ。これが400円とは!信じられない。
心もタップリ満たされたことなので『ティンカーベル』を後にする。お土産も買い込みたいけど、今はガマン!さて、甘いものが続いたので、次はスイーツをお休み。目指すは、人気ベーカリー!

そのまま大通り進むこと約2km、線路を越え、南下していく。少し遊び心でいきたいならば小町川沿いなどを選んでも良いだろう。今回のクロスバイクは舗装道路を外れても少々の道だったら問題なし。

人気ベーカリー『ドン・マイスター』

『ドン・マイスター』に到着。ハード系のパンからフワフワのパンまで。菓子パンも食事パンも幅広く展開するものの、どのパンもクオリティーが極めて高く、パン好きを唸らせるベーカリーだ。北海道産の小麦だけでなく、豆や玉ねぎなど、北見の地元食材も絶妙に活かしており、北見土産としても喜ばれるだろう。こちらも都内のデパート系ベーカリーと比べたら、破格の価格帯。どれも、これも買って帰りたい衝動に駆られる。

ハード系もフワフワ系も絶品、リーズナブルな値段にプライスカードを思わず二度見してしまう

そそられるルックスに耐えられず買ってしまったシェルクリームパン

筆者のオススメは地元の金時豆を大量に散りばめた金時食パン。そのまま食べれば極上のフワフワ感を楽しめるが、それだけではない。トーストすると、内側には驚く程のシットリ感を封じ込めておきながら、表面はカリッと、噛み締める音が周囲に響き渡るくらいクリスピーに仕上がる奇跡のパンだ。自転車では残念ながら変形してしまい、持ち帰れないのだが、この食パンを用いたフレンチトーストは個別売りされているそうだ。
あれだけ「甘いもの以外を』と、思いながら店舗に入ったのに、気づけば、北見名産のホタテを形取ったシェルクリームパンを購入していた。ズッシリ重く、モチモチの薄皮の魅力に負けてしまったのだ。しかも焼きたてときたら、買わずにはいられない!
頬張ると、濃厚でありながらも甘ったるくないクリームがタップリ入っており、モチモチの生地とあいまって、中毒性のある美味しさだ。ケーキの後でもクリームパンを完食させてしまう恐るべし『ドン・マイスター』。
背負うリュックいっぱいにパンを買い込みそうになる衝動を抑えながら次へ、ここからは観光とライドを楽しもう。
東へ向かい、1.6km程で『北見ハッカ記念館』へ到着。
北見は明治35年頃から生産を始めたハッカの産地で、北見の薄荷(ハッカ)産業は日本近代化産業遺産として経済産業省から認定も受けている。昭和9年に開業したホクレンの薄荷工場が役割を終え、解体された際に北見市へ寄贈され、この『北見ハッカ記念館』としてオープンすることになったのだ。

『北見ハッカ記念館』の隣に立つ「薄荷蒸留館」、中に足を踏み入れると、フレッシュなミントの香りにハッと、させられる

残念ながら記念館の外装が補修工事中で姿を見ることはできなかったのだが(内部は公開中)、普段はレトロな白い風情のある外観で人気の立ち寄り&写真スポットになっている。

中ではハッカの作業工程を紹介、実際に作業を体験することも可能だ

今回は薄荷生産最盛期のハッカ小屋をイメージしたという薄荷蒸留館を訪れてみた。ハッカ小屋とは複数の農家が共同所有し、収穫したハッカを蒸し、蒸留作業を行っていた場所のこと。ここでは作業工程を実際に蒸留しながら来場者が体験できるようになっている。

ハッカ製品で有名なブランドではあるが、本場ならではの品揃えを誇る

中にはたくさんのハッカ製品も販売されているのだが、新生活様式を乗り切るのにピッタリなアイテムも!今、最も売れているのはハッカの清涼感を活かしたマスク用スプレー『マスクdeオドラント』。元々、花粉の飛散時期などにマスクの不快感や花粉症の不快感を軽減させるため、ハッカオイルをマスクにスプレーするユーザーは多かったそうだ。ただ、この製品にはハッカオイルだけでなく、ラベンダーやカラマツオイルを配合し、さらにエタノールも加え、殺菌作用も持たせたことでヒット商品になった。

「マスクde オドラント」はハッカの香りがマスクをつけるストレスをグッと軽減させてくれる、新生活様式の救世主になるかも!

早速、手持ちのスペアマスクに吹き掛け、エタノール成分を飛ばしてから着用してみた。ハッカオイルのみをスプレーすると、強烈なメントール感は楽しめるものの、少々強過ぎて、痛みを感じることもあるそうだ。しかし、この製品はハッカの清涼感にラベンダーの優しい香りが加わり、心地良い。マスク特有の口元に空気が籠る感じがかなり軽減され、長時間、着けなくてはならない時や休憩時間などのリフレッシュにも活用できそうだ。マスク着用が当たり前になったことで手放せないアイテムになりそう。良い製品に出合えた。

ハッカで気持ちもさらにスッキリしたところで足取りも軽く再スタート。ここからは東へ進み、常呂川沿いの堤防上を走って行こう。堤防上からは緑に包まれた常呂川の広大な河川敷の風景が広がっていた。走るにつれ、中心街が遠のいていき、静かになっていく。最高の開放感の中、爽快なライドを楽しめる。これだけの景観を独り占めできるとは。草原の広がりや遠くの山々、豊かな緑を楽しみながら端野の街を目指す。

常呂川の河川敷を走る、北海道の清涼な空気の中で空が広い
広がりのある景観の中を走れば、サイコーの開放感を味わえる

6kmあまりのライドを楽しみ、堤防を降りて端野市街地へ。ここで立ち寄るのは『菓子工房 Shiga(しが)』だ。こちらも洋焼き菓子、生ケーキに加え、あんを使った和スイーツも得意とするスイーツ店。さらにソフトクリーム、その場でクリームを詰めてくれるサクサクのコロネやシューも人気が高い。

駐輪場も用意された『Shiga』(画像はイベント開催時のもの)

カフェが併設されており、購入した菓子をケーキセットにしたり、デザートプレートなどのメニューもオーダーできたり、ユッタリしながら絶品スイーツを楽しむこともできる。

その場でクリームを詰めて、外はサクサクのまま味わえるコロネやパイシュー
人気が高く、早い時間に売り切れてしまうことも多い(写真のフレーバーは2019年秋のもの

時間の関係でケーキは断念し、店舗で焼き上げるフワフワのワッフル生地に限界に近いレベルまでフィリングをたっぷり挟んだワッフルを購入。これだけ分厚く、重いワッフルは日本広しと言えども、他にはないのではないだろうか。お値段は240円程度(フィリングにより異なる)と、コスパも最高。

『Shiga』のワッフルは重さに驚く程、タップリのフィリングが挟まれているが、甘さは控
え目で、不思議なことにサラッと、食べられてしまう

中に挟まれたあんは水羊羹を思わせるようなサッパリとして、瑞々しいこしあん。くどさがなく、甘過ぎないので、ペロッと、食べられてしまう。パサつきがないので、ライドの途中でも食べやすい。このボリューム感は間違いなく病みつきになるだろう。
尚、この日は他にチョコやカスタード、この季節の限定フレーバーであるオレンジ入りカスタードが並んでいたが、どのフィリングもこの量を挟み込む前提で作られているので、しつこさがなく、絶妙な美味しさだ!
スッカリ満ち足りた気持ちで『Shiga』を出発。あとはゴールとなるJR北見駅を目指すのみだ。国道39号で5.8km。国道に比べれば交通量の少ない道がほぼ並行して伸びており、碁盤目に近い形で区画が仕切られているため、どの道を選んでも迷いにくい。好みの道を選びながら北見駅を目指しても良いだろう。また、堤防上を走るのも選択肢の一つだ。

端野には走って気持ちの良いエリアが広がっている

快調にバイクを走らせて、遂にゴール!
美味しいご褒美だらけのライドになったけれども、様々な風景も楽しめて、濃厚な時間になった。北見のグルメの質と底力には驚かされるばかり。
この日はグルメライドに徹したが、レンタサイクルを1日契約として、ここから女満別空港まで走って、空港で返却することも可能。北見を含むオホーツクエリアは広大で、たくさんの魅力が広がっている。レンタサイクルを使うことで様々な楽しみ方ができそうだ。また近いうちにこの土地を楽しんで、レポートする機会があることを願っている。

_画像:編集部・__サイクルアドベンチャーオホーツク推進協議会 提供_(P-Navi編集部)

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