2020/09/10(木) 16:46
バイク一式を揃え、フィッティングも完了。いざ、乗ろう!と、思っても、最初はまだまだ不安が大きいもの。今回もYOUCAN八王子店の村上純平店長にご協力いただき、スポーツバイクの乗り方やメンテナンスについて具体的なレクチャーを受けた。
実際に乗り方を教えてくれたYOUCAN八王子店の村上純平店長。
ロードレースの全日本チャンピオン(U23)のタイトルを持ち、トップチームに所属した元トップレーサー。
今は経験を活かし、ビギナーから競技者まで幅広く対応している。
スポーツバイクに乗ってみよう
乗り慣れてしまえば戸惑いもなくなるのだが、誰しも乗車経験があると思われるママチャリに比べると、ロードバイクは車体が軽く不安定で、前傾が深く、サドルが高い。最初は怖くて、すくんでしまう人もいるという。「基本のポジションを覚えておくと安心です」と、村上店長。停止する際に、ママチャリの癖でサドルに腰掛けたまま両足を着こうと思うと、サドルが高くて届かず、焦ってバランスを崩すことがある。トップチューブをまたいで立つ姿勢と、右足をペダルに残し、車体を傾け左足を地面に着ける姿勢を覚えておきたい。
トップチューブが高いため、前から脚を回すと、バイクにぶつかってしまう。またがる際には車体を倒し、後方から脚を回すのが鉄則だ。
トップチューブをまたいで立つ姿勢が、乗車前、降車後の基本姿勢となる。
サドルを降りたら、左足を地面につけて、車体を傾けて立つ、そう覚えておくと安心だ。
左側通行の日本では道路の左側を自転車が走り、その右横を車が走り抜ける。もちろん、身体のバランス上は両方の足が着けるよう慣れるべきなのだが、道路上では左足を着き、左側に車体を傾けて立つ姿勢を取るようにすると、車との距離を保つことができるので安全だ。乗車前、降車後の基本姿勢を覚えてから、乗り降りの練習をしよう。
車種は違っても、スポーツバイクの乗り降りの仕方は共通だ。サドルが身体にとって適正の位置にある自転車の乗り方として考えて欲しい。ただし、降り方を頭に入れてから、乗る実践をするのが望ましく、それは降り方が分からず、転倒するケースが多いためだ。
スポーツバイクの乗り方
まずはトップチューブをまたぎ、基本姿勢を取ってから。
片側のペダルを踏み込みやすい、力を加えやすい位置まで上げ、足を置く。
(自分にとって踏み込みやすい側のペダルで構わない)
上げたペダル側の足を踏み込む。
踏み込んだペダルが最下点にいき、身体のバランスが取れたら、もう一方の足をペダルへ置く。
両足が両方のペダルに安定して乗り、バランスが取れたら、サドルに腰掛ける。
ママチャリの感覚ではサドルにドッカリと、座ったまま漕ぎ出すイメージだが、特にペダルの取り付け位置が高い種類のスポーツバイクでは、そこからさらに上にサドルがあり、座った状態では安定して発進できなくなる。バイクの扱いに慣れ、バイクに乗った状態でバランスを取れるようになるためにも、この乗り方は必ずマスターしておきたい。
ちなみによくママチャリで見かける『ケンケン乗り(片足をペダルに掛け、もう片足でケンケンしながら発進する乗り方)』はサドルの高い軽量バイクでは危険であるし、周囲に人がいるサイクリングなどで行うと迷惑をかけるので、スポーツバイクではやらない方が良いだろう。
スポーツバイクの降り方
下車時の一連の動きを、左足を路面に着くパターンでご紹介しよう。後方の安全を確認してからスタート。
ブレーキレバーを引き、安全に止まれる速度まで減速する。
足が着ける速度まで落とせたら、右足を最下点まで踏み切り、サドルからお尻を上げる。
右足に体重を掛け、前方に踏み出す準備をする
左足を路面につき、停止する。
車体を左に傾けて、地面に立つ。
ポイントは減速前に後部を確認すること。後ろから他の自転車や車、時にはランナーなどがきている状態では追突される可能性がある。必ず安全を確保したうえで減速したい。
ブレーキの使い方
購入時に必ずブレーキレバーの確認をしておこう。ブレーキレバーを引いて、体重を前に掛け、自分の握力で安定してブレーキが掛けられるかどうかのチェックはもちろんだが、ブレーキレバーはスピードの加減にも使う。特に下り坂ではブレーキを緩く掛けながら、安全なスピードに調整して走ることになる。街中でも状況に合わせたスピード調整は安全な走行に絶対に必要だ。どの程度のレバーの引き方で、どのくらいブレーキが掛かるのか。公道で走る前、実際にレバーを引き、体得しておくと安全だろう。
ブレーキレバーを確実に操作できるか、必ず確認しよう。
ブレーキレバーの引き具合に応じ、車体がどう減速、停止するのか、感覚を養っておきたい。
特にディスクブレーキ車はブレーキの効きが良い。そのため、握力の強い方はとっさにブレーキレバーを強く引き過ぎると、前輪がロックし、前転してしまう可能性がある。急ブレーキを掛けなくても済むように、前方をシッカリ目視し、状況を把握しておくことが一番大切ではあるのだが、安定した急停止も練習しておきたい。
乗ってみよう!
乗降とブレーキの使い方をマスターしたら、走りに出てみよう。
「最初は川沿いのサイクリングロードや公園の自転車コースなど、人の往来も少なく、クルマの来ない場所がいいですね」と、村上店長。最初はまず『乗ること』に集中できる環境を確保することが必須だという。
フィッティングが済んだバイクであれば乗車姿勢は取れるようになっているはず。最初はおっかなびっくりペダルを回す方がほとんどだが、慣れてきたら、正しい姿勢や重心を置く場所、楽に乗れる力の掛け方など、身体のバランスの感覚を意識してみたい。
正しい姿勢で乗ると、余裕があるように見える。
「サドルにはドッカリ腰掛けず、フンワリと、上半身でカーブを作って、軽く抱えるようにハンドルを持ちます。ハンドルは強く握らないようにします」
村上店長の乗車姿勢は無理がなく、余裕があるように見える。長時間のレースやライドになることもあり、最初は自分にとってベストな乗車姿勢を見つけることが重要なのかも知れない。
YOUCAN八王子店の購入者サービス「ビギナーサイクリング」。
スタッフと共に走るうちに自然と、乗車姿勢を体得し、スポーツバイクで走ることに慣れ、楽しめるようになっていくという。
共に走り、走り方やふるまい方を伝え、不安を解消し、ポジションの調整も行う。
最初は緊張していても、最後には皆、笑顔!
村上店長は「最初は、どなたも、ガチガチになるものですよ」と、笑う。自分がガチガチなことが分かっても、そこからどうやってこなれた姿勢に持っていくのだろうか。村上店長は頷くと「客観的な意見があると習得は早いようです。うちではビギナーサイクリングで、乗車姿勢もチェックして、アドバイスさせて貰うようにしていますが、みなさん、すぐに楽しめるようになります」と、微笑んだ。やはり、最初はスポーツバイクに乗り慣れた誰かと一緒に走る価値はありそうだ。
慣れてきたら「下ハン」を持つなど、ロードバイクを乗りこなしていきたい。
乗車姿勢がこなれてくると、前方が良く見え、周りの状況が把握できるようになってくる。一般道に出るのはここまで慣れてからにしたいところ。次のステップとして、走り方やコースに応じ、適切なギアを選ぶシフトチェンジも必要になってくる。まずは安定して走れるようになることを目指そう。
視線はつい下に落ちてしまいがち。
様々なリスクが増えるため、視線は上げるように意識しよう。
神妙な表情で村上店長は語った。「乗車時、視線が落ちてしまう方が少なくないのですが、とても危険なので、十分に意識していただきたいです」。余裕がなく不安で、目の前の路面を凝視してしまったり、疲れてきて、ボンヤリと、下を見てしまったりすると、前方への注意が疎かになり、事故の原因になりかねないそうだ。意識的に視野を広く持ち、前を見るように心掛けたい。
安全のために
夜間や雨、風など、様々な条件の中で乗ることになり、特に車や歩行者と道路をシェアする中では色々な配慮が必要になってくる。安全のために、意識すべきなのは何だろうか。村上店長は力強く「何よりも交通ルールを守ることです」と、主張した。信号、一時停止、走行場所、夜間の灯火など、ルールを守ることは自分の身を守ること、さらには事故を起こさないことに繋がっている。「車に対しては自分に気づいて貰うことが身を守ることに繋がります。明るい色味のウェアやヘルメットを選んだり、反射板を付けたり、デイライト(日中の点灯も想定したライト)を点けたりと、目立たせる工夫はかなり有効です」。確かに欧米では女性を含め、夕暮れ以降は反射素材のベストを着用して自転車に乗っている姿がごく普通だったように記憶している。奥ゆかしい日本人はついつい暗い色味のものを選びがちだが、自転車に乗る時は明るい色味のものを選んでおきたい。
夕刻や夜間、悪天候時など視認性の悪い時に乗る際は、意識的に明度の高いウェアやアクセサリーを取り入れたい。
視認性の高いネオンカラーがオススメ。
[参考商品・左]ストレッチ ウィンドシェル パールイズミ 体幹部分の風をシャットアウト!ポケッタブルでコンパクトに収納可能。下りや気温の変化に備え、携帯しておきたい便利なベスト。
3色・4サイズ展開(ユニセックス)9,500円(税抜)
[参考商品・右]FLAIR Kabuto 重量170g(S/Mサイズ)という驚異の軽さを実現しながらも、高次元の衝撃吸収性をキープ、全方向からの通気性を高め、低速域でも熱気をスムースに放出する高いクーリング性能も持つ、「Kabuto」ブランドこだわりのヘルメット。個性的なカラーパターンも魅力。
8色展開 21,500円(税抜)
自転車自体に不具合があると、当然、乗り手は大きな危険にさらされてしまうことになる。どんなことに留意しておいたら良いのだろうか。村上店長に聞くと、「異音やガタつき、何か『いつもと違う』という違和感を覚えたら、いつでも持ち込んで下さいと、お願いしています」との答え。YOUCAN八王子では購入後1ヶ月の無料点検サービスがあり、その段階で一通りのチェックはするそうだが、このタイミング以外にも異変が起きる可能性はあり得る。購入店とはいつでも気軽に相談できるフランクな関係を築いておきたいところだ。
チェーンとギア周りは繊細でありながらも、油と泥汚れが混じる頑固な汚れが付着し、汚れるとペダルも重くなる。スプレー式を代表に様々なクリーニング製品が出ているので、使いやすいものを選びたい。洗浄後は必ず注油を。チェーンが乾き、錆びてしまうとチェーン切れの危険が生じてしまう。車体の汚れはピカピカに仕上げる「洗車」もオススメではあるが、慣れるまでは拭き取りでOK。
洗浄後の注油は忘れずに!使いやすいチェーンオイルを選びたい。
乗車前には必ず空気圧のチェックをしよう。
空気圧計付きのフロアポンプはマストアイテムだ。
「パンクの対策になりますし、空気圧の管理は乗る前の習慣として下さい」と、村上店長。タイヤの適正空気圧は側面に記載してあるが、ベストな空気圧は乗り手の体重によっても異なる。また、雨天時や下りは少し空気圧を下げ、タイヤのグリップを上げることもある。何気圧入れたら良いか、購入時に店舗でアドバイスを頂戴しておくのが良いだろう。
スポーツバイクの基本的な乗り方、走り方をマスターし、扱いにも慣れたら、様々なコースへ走りに出掛けてみたい。ただし、スポーツバイク、特にロードバイクは競技に使用される機材であり、思い掛けないスピードが出てしまうこともある。転倒からケガをしたり、歩行者を傷つけてしまったりという可能性もある。どんなに楽しく、エキサイティングでも、自分が制御できる速度の中で乗るように心掛けることが必要だ。
自転車で出掛ければ自転車だからこそ気付くことのできる街の魅力、景色の美しさなど、新しい感動が待っていることだろう。お気に入りのバイクと最高の体験を!
【過去の記事はこちら】
目指せ、スポーツバイクデビュー!〜失敗しないバイクの選び方〜
目指せ、スポーツバイクデビュー!Vol.2~バイクを身体に合わせるフィッティング~
目指せ、スポーツバイクデビュー! Vol.3~失敗しないマストアイテム選び~
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株式会社オージーケーカブト(Kabuto)
株式会社パールイズミ(パールイズミ)
YOUCAN八王子店(P-Navi編集部)