目指せ、スポーツバイクデビュー!Vol.2

2020/08/06(木) 13:19

目指せ、スポーツバイクデビュー!Vol.2

目指せ、スポーツバイクデビュー!Vol.2

~バイクを身体に合わせるフィッティング~

前回の記事ではスポーツバイクデビューを目指し、自分に合ったスポーツバイクの選び方を取り上げた。バイクの車種を決め、目当てのロードバイクを選び取ったとして、その次のステップはバイクを身体に合わせ調整する『フィッティング』だ。今回もYOUCAN八王子店にご協力いただき、具体的に紹介していきたい。

スポーツバイクのサイズ選び

「スポーツバイクにはサイズがあって、自分に合ったフレームを選び、合わせていくことがとても重要です」と、村上純平店長。U23カテゴリーでロードレースの全日本チャンピオンを獲得、プロのロード選手としてトップチームに所属していた経歴も持つ実力派が熱く語ってくれた。

丁寧にアドバイスしてくれた村上純平店長

スポーツバイク、特にロードバイクを競技に使用する時には長時間に渡り、厳しいレースを走ることになるため、バイクのセッティングは非常にシビアな作業になる。身体に合わないバイクでは十分な力を発揮できないだけでなく、身体の故障の原因にもなりかねない。プロの選手は契約などでバイクが変わる度、この調整作業に全力を懸ける。神経質な選手はミリ単位での調整を重ねていくのだとか。

サイズが合ったロードバイクに乗った村上店長

 

ホビーで乗る分には調整はさほど問題ないのだろうか?

「いや、身体ができ上がっていない方ですと、痛みや違和感が出たり、そもそも安全に操作できなくなったりと、重要なことには全く変わりないです」

スポーツバイクは全身を使って乗ることになるため、大きさが合わないと無理が出て、違和感や痛みに繋がることもあり、楽しみも半減してしまうのだそうだ。ということは競技者も街乗り派も最初の調整が非常に重要ということになる。

多くのフレームには複数のサイズ展開があり、その中から自分に合ったサイズを選ぶ。だが、村上店長は「通常は適正身長が表示されていますが、あくまで参考程度のもの。うちでは『見ないで』と、言っているくらいです」と笑う。フレームの各部分の長さや角度などの形状をジオメトリーと呼ぶ。バイクは目的に合わせ設計されており、このジオメトリーはブランドやそれぞれのバイクの対象や用途によって異なる。例えば、競技系ライダーが深い前傾で乗り、レースを走る想定のものと、ビギナーが比較的、楽な姿勢で乗る想定のものとでは、表示される適正身長が同じだったとしても各部分の長さの比率は変わってくるのだ。

快適に乗るための"フィッティング”

「適したサイズのフレームを選び、さらに乗り手に合わせ、調整していく作業を『フィッティング』と、呼びますが、これはスポーツバイクを楽しんでいただくためには絶対に欠かせないステップです」

YOUCAN八王子店では身長や手足の長さ、身体の柔軟性などを見て、運動経験を聞き、合ったサイズを選び取るという。「柔軟性?」と、聞き返した筆者に村上店長は「ここが大きいのです。身体の柔軟性の違いだけでも、ワンサイズ変わることもあるんですよ」。数値にできない要素がそれ程までに大きいとは!仮に身体が硬いと、前傾姿勢が取りにくいため、フレームサイズを小さくするそうだ。また、運動経験がある方は体幹に筋肉があり、前傾姿勢にも何なく対応できることが多いため、これも大きな要素になるのだとか。

柔軟性は重要な要素

身体が硬く、前屈できない場合、手が届く場所が変わってくる

身体が硬いと、前傾が浅くなり、無理に手を伸ばすと、身体への余計な負担が増え、疲れやすくなってしまう。身長や股下だけからサイズを決めるのは危険

想定したサイズのフレームが店頭にある場合は良いのだが、取り寄せや購入後に組み上げるケースの場合は近似のバイクを使って、乗り手にとってベストなポジションになるために必要な調整を調べていく。

主に調整を行うのはハンドルからサドルまでの距離。体幹が鍛えられ、空気抵抗を減らす深い前傾姿勢を取る競技系ライダーは長くなるが、ビギナーや女性、腰の弱い方、ユッタリ乗りたい方はこの距離を短く取る。さらにハンドルの位置も高く設定することが多い。ハンドルが遠いと、腰やお尻の痛みが出たり、ハンドルのコントロールに余裕がなくなり、前方への注意が散漫になったりと、安全面でも危険が出てきてしまう。「ガマン」のない快適な姿勢で乗れるように調整が必要だ。

そもそもロードバイクというのは比較的、大きい「700C」と、呼ばれるホイール(車輪/大きさは27インチ程度のもの)で組み上げ、欧米の大柄の男性たちが中心に乗ってきた競技用自転車だった。日本には身長145cm程度から乗れるフレームもあるものの、設計に無理が出てきて当然だ。

700 Cのホイールを履いたロードバイクは少々大きく、大柄な欧米人向けとも言える。小柄な人が快適に乗るには調整した方がベターだろう。(最前列、3番手の緑のジャージの選手が共に身長175cm)画像:2019ツール・ド・熊野より

特に小柄な方がロードバイクデビューする際には、プロに調整をしていただいた方が安全と、言えるだろう。「合うサイズがなかなかないという小柄な方でもパーツ交換などの調整で、快適に乗れるようになることもあります。相談して欲しいですね」と、村上店長。乗り手に合った調整をすることで、バイクと一体感を持って乗り、より楽しめるようになるという。

ハンドルまでの距離には調整の選択肢がある。まずはステムと、呼ばれるハンドルとフレームを繋ぐパーツの交換だ。

フレームとハンドルはステムというパーツがつなぐ。この距離を調整する

ハンドルの取り付け位置も調整可能。ステムの下に並ぶスペーサーの厚みを減らせば低くできる

ハンドルが遠い場合は短いステムに交換する。これだけで乗り心地が激変することも

ステムはある程度の長さがあった方がハンドル操作が安定しやすく、理想的にはある程度のステム長を確保したいもの。二つのフレームサイズの間で悩むならば小さめの方がベターだろう。ただ、フレームはよく考えて設計されており、それほど神経質にはならなくても良いという。

サドルも調整が可能だ。取り付け位置を前後に動かすことができるし、サドルを支えるシートポストのオフセット量を変えることでもサドル位置を前後に動かすことができる。

サドルの取り付け位置は前後でかなり移動できる。指標となる目盛りも

ユッタリ乗りたい方は後ろ側にある程度の荷重を置ける設定の方が安定して乗ることができる。

盲点なのがハンドルだ。ハンドルにもたくさんの選択肢があり、一口に「ドロップハンドル」と、言っても微妙に形状が異なる。できる限り身体に近いところで操作できるようにしたいならばドロップ部分が浅い「ショートリーチ」と、呼ばれるタイプを選ぶのが良いだろう。

ハンドルのドロップ形状にも大きな差が。なるべく近くでハンドルを握りたいなら、ショートリーチと、呼ばれるドロップの角度の浅いものがオススメ

「幅もとても大切です」。村上店長がいくつかのハンドルを持って、説明する。ハンドルの幅が広すぎると、ハンドルを扱いにくくなり、疲労しやすく、快適性も落ちてしまうのだとか。

ハンドルの幅にも多彩な選択肢が。好みもあるが、肩幅をベースに幅を選ぶ

ハンドル操作は走行の安全性と直結しており、確実に操作できるハンドルを選びたいところ。一般的にはハンドル幅は肩幅を基準とするが、個人の好みで肩幅±1cm程度の間で選ぶようだ。ハンドルにはバーテープを巻いて使うため、使用時はテープ分だけ太くなる。手の小さな女性などは細身のハンドルを選ぶと握りやすいだろう。

サドル高もとても重要な要素の一つだ。交通安全教室で「サドルは両足が地面に付く高さに」と、教わった方もいるかも知れない。身体をシッカリ使い、快適に乗るためのサドル高はこれよりかなり高くなる。一般には「一番下に置いたペダルにかかとを置いた時、ひざが曲がる程度」などと言われている。「目安や計算式なども確かにあるのですが、個人差も大きいので、うちはあくまでも乗り手の方に合った高さをお伝えしています」。ペダルを回して貰い、体の使い方や股関節の可動域などを見て、適正な高さを探りつつ、まずは安全に乗れる高さを提案するそうだ。

サドルは街で見るママチャリより高いが、身体を巧く使うためにはこのサドル高が適正。美脚効果も狙える

シマノ、TIME製の自転車用ペダル。それぞれに合った金具を専用シューズの裏につけ、シューズとペダルを合体させるとペダリング効率が上がり、楽に走れるようになる。複数のブランドの展開があり、好みで選ぶ

乗り慣れてくると、ポジションも変わってくるし、シューズと金具で合体させる専用ペダルなどの装備も変わり、「快適」と、感じるサドル高は変わってくる。最初は基本的な高さに、足つき性など安心や安全面を加味して設定し、徐々に快適性に合わせて変えていくという方が多いようだ。ちなみにプロレーサーのサドル高もそれぞれのフォームや身体の使い方に合わせ、まちまちなのだとか。

痛みを和らげるゲル入りや、圧がかかる部分を開けたものなど、サドルの選択肢も豊富

サドルでお尻が痛いという話しも聞くが、村上店長によれば「まず乗っていただいて、合わないようならば交換を考えることが多い」とのこと。ママチャリのようにサドルに全体重をかけて座ってしまうと、サドルの種類に関わらず痛くなる。ロードバイクの場合は特に身体の使い方がわかってくると、痛みがかなり軽減され、気にならなくなることが多いようだ。ただし、性差などもあり、明らかに合わないサドルが付いていた場合は購入前に交換を相談した方が良いだろう。

バイクを楽しむために大切なこと

この購入後の変化にはどのように対応しているのだろうか?村上店長に尋ねると「乗られる頻度にもよりますが、購入後2〜3ヶ月くらいでお持ちいただき、乗る姿を見て、微調整します」。

この調整は無料サービスとのこと。ありがたい。

調整を終えたら、基本的な操作や取り扱いや走行上の注意点を伝え、最低限の必須アイテムを揃えて貰い、納車となる。

だが、車体が軽く不安定で、前傾姿勢になるロードバイクは特にまたがった際の不安感が強く、道路に出て乗り始めるハードルが高いようだ。自宅周りの道路状況などもあるが、どこを乗るのか、どんなコースで練習すれば良いのか、1人で乗り始めるのはなかなか厳しい感もある。

村上店長によれば「うちでは『ビギナーサイクリング』という初心者企画を用意していて、みなさんに参加を強くオススメしています」。乗り始めの一番不安な時期にスタッフが寄り添い、共に1〜2時間走って、ロードバイクデビューをサポートしているのだそうだ。ちなみにこの参加料は3回まで無料(購入者のみ)。

確かにいくらフィッティングが完璧でも、実際の道路に出て走ることは別の問題だ。車両である以上、勇気だけで乗り越えられるものでもない。共に走り、道路での走り方、ふるまい方を実践で教えていただけるうえに、ステップに応じてサドル高なども微調整して貰えるのはありがたい限りだ。

「もちろん、不安点やバイクの違和感などがあれば、いつでも持ち込んでいただき、対応しています」と、村上店長。購入したバイクを楽しんで貰えるように、できるかぎりのサポートをしているのだとも語る。

ロードバイクに乗り慣れたら、色々な楽しい経験が待っている。「安全・快適に乗り続けて貰うために」販売側の模索も続く

ロードバイクに興味があっても「乗りこなす」自信がなく、挑戦できない方も多いと聞くし、購入しても巧く乗れず、手放す方も実際に少なくはない。ロードバイクを楽しもうと思ったら、まずは信頼できるショップで購入し、自分が快適に乗れ、安全に操作できるようにセッティングして貰うこと。不安なく、1人で乗れるようになるまで、共に走ってくれる誰かを確保することが必要だろう。YOUCANもショップサイクリングを開催しているが、ショップイベントのある店舗ならば仲間作りもしやすく、購入後の楽しみの幅も広げやすい。ネットショップなどで調達すると、この工程を全て自分でやらねばならないため、総合的に考えると、逆に高くついてしまうこともある。購入から乗りはじめるまでの流れはすべてセットで検討した方が良さそうだ。

今回はロードバイクのフィッティングについて説明した。
次回はスポーツバイクを楽しむための必須アイテムについて紹介しようと思う。

取材協力:YOUCAN八王子店

〒192-0046 東京都八王子市明神町4丁目26−8

042-660-5307

http://www.c-youcan.com/contents/shop-list/hachioji/

写真:編集部 ツール・ド・熊野実行委員会提供(P-Navi編集部)

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