自転車選び【第3回】

2020/07/14(火) 18:19

自転車選び【第3回】

自転車を生活で上手に使うための『自転車選び』について、ここまで2回に渡って、特集してきた。今回は購入する自転車の種類を決めた後、安全、快適に乗るための確認事項や注意点、必要な準備などを取り上げたい。

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自分のニーズに合った性能の自転車を選ぼう

自転車の種類を決めたら、まずは自分が想定している使用シーンに合った自転車なのかを再確認をしよう。

変速とブレーキ

アップダウンのある場所を走るならば変速が多い方が小さな力で楽に乗ることができる。スポーツバイクにはフロントギア(前のギア)が2枚以上、付いている自転車も多く、軽いギアも選べるため、走行エリアの選択肢も広がる。

 

 

[caption id="attachment_34567" align="alignnone" width="640"] 前にも複数枚のギアがあれば、軽いギアが選べて、アップダウンコースも対応可能になる[/caption]

[caption id="attachment_34568" align="alignnone" width="640"] 前後のギアは左右のグリップ下にある変速レバーでチェンジ[/caption]

[caption id="attachment_34569" align="alignnone" width="640"] ギアのないものは見た目もシンプル[/caption]

変速のないものは見た目も操作もシンプルでリーズナブル。ギアがない分、軽量にもなる。平坦を低速で走るだけであれば、むしろ使い勝手が良いという人も。ただ、脚力に自信のない場合やソコソコの距離を走りたい場合、アップダウンがある場合はギア付きのものを選んだ方が結局のところ、活用の幅は広がるだろう。

ブレーキの性質や性能も車種ごと、車体ごとに選択肢があり、応じて価格帯も異なる。ママチャリであれば利きやすさ(特に雨天時)、音鳴り性能などで表示されることが多い。種類としてはクロスバイクに多いVブレーキ、ロードバイクに多いキャリパーブレーキ、最近MTBだけでなく、ロード、シクロクロスバイクへの使用が増えてきたディスクブレーキ(油圧、機械式)などが挙げられる。それぞれ特徴、メリットとデメリットがあり、販売店で確認して欲しい。

[caption id="attachment_34570" align="alignnone" width="640"] ロードバイク等に多いキャリパーブレーキ[/caption]

[caption id="attachment_34571" align="alignnone" width="640"] クロスバイク等に多いVブレーキ[/caption]

車輪(ホイール)サイズ

車輪サイズも実は様々だ。ママチャリの場合、24〜27インチ、クロスバイクのスポーツ寄りのものやロードバイクは、700Cという27インチ程度のホイールを履き、街乗り用途のクロスバイクはママチャリに近い車輪を履いている。ミニベロは8インチの超ミニタイプから20インチまで。MTBは26〜29インチが主流だ。

自転車のスピードは前後のギアの歯数の組み合わせと踏み込むペダルの回転数で決まる。このため、ミニベロでもギアの組み合わせにより時速50kmで走行できるものまである。

一概には言えないが、大きめの車輪の方が走行性能を上げており、小さめの車輪の方が低速の走行を想定している場合が多い。ママチャリの場合は適正身長内であれば走行感の好みで選ぶ。

ロードバイクの場合はやや小型の車輪もない訳ではないが、後に車輪を交換する可能性もあり、統一の車輪の方が乗り始めた後の都合が良いこともあって、車輪サイズよりもフレームサイズで選ぶ感覚になっている。MTBやミニベロは車輪サイズがそのまま車種の個性になるため、好みで選択することになる。

小柄な方の場合は大き過ぎない方が取り回しも楽であり、安定して乗りやすい。好みと共に、無理なく扱えるかどうか。販売スタッフと相談しながら総合的に判断することになるだろう。

タイヤ

自転車が唯一、路面に接するのはタイヤであり、タイヤは意外と重要なファクターである。タイヤの太さに関しては細いものは設置面積が少なくなるため、軽く乗れ、高速走行が可能となり、太くなると安定感が増す。タイヤは消耗品であり、経年劣化で交換するものだが、車輪のリム次第でタイヤの幅などが決まってくるため、完成車購入時に検討しておきたい。

[caption id="attachment_34572" align="alignnone" width="640"] 左からシティサイクル、ロードバイク、子乗せや荷物を運ぶ想定の自転車のタイヤ。幅や、トレッド(溝)の量などは、自転車の用途によって変えられている。右のバイクは、荷重が大きくても安定するよう、タイヤの幅が太いだけでなく、小径に設定。(写真のロードバイクのホイールは少々太めで荒れた路面にも対応するタイヤを装着したもの)[/caption]

一般的にビギナー向けのものや実用車は安定感重視で太目のタイヤを履かせていることが多く、想定する走行距離が長く、速度が上がる程、細くなり、表面の溝も少ないものになる。但し、スポーツバイクの場合はコースなどに合わせ、車輪やタイヤを替えることも多く、後からの変更もあるものとして考えたい。

パーツ、装備は?

実用の場合、後から意外と重要になってくるのが、カゴの形状や大きさだ。カゴに自分がよく使うバッグなどが入るかどうか確認しておこう。別売りされているものが合えば、カゴの交換も可能であり、必要な場合は店舗と相談してみて欲しい。荷物を多く持つ方は後ろのキャリアの活用も視野に入れておくべきだ。スタンドの有無についても確認しておきたい。

[caption id="attachment_34574" align="alignnone" width="480"] ワイドタイプ、深型タイプと さまざまなカゴ。中に入れるバッグや荷物のサイズを考慮して選びたい[/caption]

ママチャリに関しては従来のチェーンで駆動するタイプ。そして、カーボンベルトを使用したメンテナンスフリーのベルトドライブタイプが存在している。

[caption id="attachment_34575" align="alignnone" width="640"] 金属製のチェーンの代わりにカーボンベルトで駆動するベルトドライブ車。錆びないため注油の必要がなく、チェーン落ちもない。ほぼメンテナンスフリーで走行感も軽い。画像提供 ブリヂストンサイクル[/caption]

チェーンの場合は定期的な注油が必要となるため、ここも見極めて選びたい。

ライトも装着されているモデルはライトの種類や数(前のみか、前後か)、オートライトの有無など、確認しておきたいところだ。

[caption id="attachment_34576" align="alignnone" width="640"] リアに太陽光充電した赤色灯が付き、センサーで自動点灯する安心モデルも。不意に暗くなるトンネルの中でも、とても安心。 画像提供 ブリヂストンサイクル カジュナより(自転車選び1参考)[/caption]

無理なく乗れて、操作できるか

スポーツバイクにはサイズがあり、自分に合った大きさのものを選ばないと快適に乗れないだけではない。前方が確認しにくくなり危険で、無理がかかると、身体を傷める原因になりかねない。購入前に店舗で自分に合うかどうか確認し、必要な場合はパーツを替え、微調整する『フィッティング』を行いたい。

[caption id="attachment_34577" align="alignnone" width="480"] 実際に乗れるかどうか、またがってサイズの確認をしよう 画像提供 サイクルスポット[/caption]

ママチャリやミニベロはワンサイズの展開であることが多い。けれども、適応身長などの目安はあるため、合ったサイズのものを選ぶと同時に、必ず自転車にまたがり、乗車姿勢を取って違和感が出ないか、ブレーキなどの操作は無理なくできるかを確認して欲しい。可能であれば購入前に店舗前などで試乗できれば、より一層、安心だ。近年はフレームがごく低床になったモデルも出てきている。

[caption id="attachment_34578" align="alignnone" width="640"] またがりやすさを追求した低床車。【参考】ノッテコ サイクルスポットオリジナル 大きめのカゴ付き 変速なし 21,980円(税抜) 画像提供  サイクルスポット[/caption]

特にブレーキ性能は重要であり、自分の手の大きさと握力でブレーキレバーが無理なく操作できるかどうか、自転車を持ち帰る前に必ず確認しておいて欲しい。

必要なメンテナンスは?

メンテナンスについて『サイクルショップ 武蔵小杉店』高田店長に尋ねると、「ともかく、空気を入れること、ですね」。空気が減ってくると、ペダルが重くなるだけでなく、パンクしやすくなってしまうのだが、もう一つ理由があるという。

「空気を入れる時には車体を見るので、異変などにも気づけて、安全に繋がります」
なるほど!
空気入れに際しての注意点はバルブには何種類か形状があることだろう。一般のママチャリなどには英式、クロスバイクやロードバイクに使われているものは仏式、マウンテンバイクは米式のバルブが使われていることが多い。

[caption id="attachment_34579" align="alignnone" width="640"] ロードバイクに多い仏型のバルブ(写真はネジなどを外した状態のもの)[/caption]

[caption id="attachment_34580" align="alignnone" width="640"] ママチャリ等におなじみの英式[/caption]

アタッチメントを付け替えることで1本の空気入れで全て対応できることも多いのだが、購入した自転車のバルブも確認しておこう。

[caption id="attachment_34581" align="alignnone" width="359"] 最も一般的なフロアポンプ型の自転車の空気入れ。アタッチメントの交換で3種のバルブに対応していることも多い。ポンプの性能差が意外と大きい。空気を入れやすい良質のものを選びたい[/caption]

他にはないか尋ねると「最低限、月に一度は注油してほしいですね」と。錆びたチェーンはペダルが重くなるだけでなく、チェーン切れのリスクもあり、実は危険に直結するのだ。

[caption id="attachment_34582" align="alignnone" width="640"] チェーンの錆は走行の快適さも安全も損なってしまう。月1度は注油を![/caption]

そうなるとママチャリに乗るだけだとしても、最低限フロアポンプ(空気入れ)やチェーンオイルは準備する必要がありそうだ。

ただ、最近は自由に空気を入れさせてくれる販売店も増えており、そういう店舗を利用できるなら、定期的に寄る形でも良いだろう。暑い季節はフロアポンプで空気を入れるだけで汗だくになってしまうし、ワンタッチで空気が入るコンプレッサーなどを使えるならば労力も省けて嬉しいところ。

[caption id="attachment_34583" align="alignnone" width="317"] 自由にコンプレッサーを使い空気を入れられる。取材日も何人もの方が立ち寄っていた。サイクルスポット 武蔵小杉店にて[/caption]

この店舗に一定料金を支払えば3年の盗難補償が付き、同時に永年無料で注油やギア、ブレーキ、チェーンの調整を系列のチェーン店全店で受けられるオプションサービスの掲示があった。

[caption id="attachment_34584" align="alignnone" width="640"] 盗難補償ととともに、ブレーキ、チェーン、ギアの調整が永年無料となるサービスを告知するポスター。メカに詳しくない身にはとても心強いサービスだ。サイクルスポット 武蔵小杉店にて[/caption]

実際のところ、ママチャリユーザーで月1度の注油をしている人は稀だろう。しかし、人間はサービスへの対価を払っているとなれば積極的に利用しようとするし、利用すれば結果的に自分の安全や快適さを守ることに繋がる。店舗に寄る習慣ができれば、不具合が出たり、パーツが劣化したりした際にも相談しやすくなり、安全を確保し、自転車も長持ちさせることにもなる。こういったサービスが全国に広がることを期待したい。

安全と快適のために揃えるべきアイテムは?

ママチャリに関しては必要なアイテムはほぼ装着されている。万が一のパンク時も、ママチャリなどはその場で修理することはほぼないと思われるため、買い揃えるべきアイテムはなさそうだ。

[caption id="attachment_34585" align="alignnone" width="480"] ライト、カギ、スタンド、パンク修理グッズなどの関連アイテムが並ぶ。好みのものを選び取る過程もまた楽しい[/caption]

[caption id="attachment_34586" align="alignnone" width="640"] 替えチューブ。自転車の車輪サイズに合ったものを携帯しよう。径、太さ、バルブの形式に応じ、多様なチューブが店頭に並ぶ[/caption]

スポーツバイクなど、装備が別売の場合は購入時に揃えよう。ベルやライトは道路交通法上、公道走行するなら必須となるので注意。カギ、スタンド、後付けの泥よけなどは必要に応じて揃えたい。

[caption id="attachment_34587" align="alignnone" width="479"] 後付けできる一本足スタンド[/caption]

パンクは基本的にはその場で処置をすることが多く、パンク時用の替チューブや修理セット、携帯ポンプなどが必要となる。ミニベロなど特殊な車輪サイズの場合は出先で購入できる可能性が低いため、チューブを必ず携帯しておきたい。

[caption id="attachment_34588" align="alignnone" width="394"] パンク修理セット。スポーツバイクの場合は、チューブ交換に必要なアイテムの携帯を![/caption]

[caption id="attachment_34589" align="alignnone" width="640"] ヘルメットも多様。13歳未満の児童の場合は、子乗せ自転車同乗時も含め、道路交通法に規定がある。必ず装着を[/caption]

自転車が走行できるのは基本的に車道となる(歩道上は徐行のみ)。ユッタリ近距離を乗る場合以外はヘルメットの装着をオススメしたい。また、万が一のための自転車保険(火災保険や車両保険にオプションで付けられる「個人賠償責任保険」でもOK)にも入っておきたい。

いずれの自転車にしても、これからの季節を気持ち良く乗るためには汗をすぐに乾かしてくれる速乾インナーや紫外線対策グッズがあればベター。通勤などで夜間も乗るようならば黄色や蛍光色など明るい色味のジャケットやリュック、反射板などを用意すると視認性を高めることができ、帰り道も安心だ。

全3回に渡って、実用での活用を中心とした自転車選びのコツや注意点などについてお伝えしてきた。
ご興味が持てたのであれば自転車生活のスタートを検討してみていただきたい。

 

取材協力:サイクルスポット 武蔵小杉店

川崎市中原区小杉町3-29-14

電話:044-299-8468

画像:編集部

画像協力:ブリヂストンサイクル株式会社 株式会社サイクルスポット(P-Navi編集部)

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