自転車選び【第2回】

2020/06/23(火) 17:25

自転車選び【第2回】

自転車の選び方を紹介するシリーズの第2回。
前回お伝えしたようにママチャリと、呼ばれる自転車もニーズに合わせて、多様化している。今回はさらに具体的に、自転車の種類について説明しよう。

『似ているようで多様な自転車』

売り場にギッシリと、自転車が並ぶ『サイクルスポット 武蔵小杉店』。
一見する限り、日常使いに重宝しそうな自転車が多いのだが、よく見ると1台、1台に特徴があり、少しずつ異なっている。ある程度、用途を絞り込んだとしても、これだけのバリエーションがあるとなると、一体どうやって、自分に合った自転車を選んだら良いのだろうか?

「まずは用途ですね。どんなシーンで使うのか、どのくらいの距離を乗るのか」。
自転車選びで最も大切なことを尋ねると、高田正治店長からはこのような答えが返ってきた。どのように乗りたいのかが見えてくれば、自然と、選ぶべき自転車は絞り込まれるのだという。

自転車を選ぶ際、考慮する乗り手の要素は距離、走る場所の路面と地形(アップダウンの量)、好みの速度帯、荷物運搬の有無、乗る際の服装、行き先、価格帯などがある。これに対応する車体の要素としてはフレームの設計、変速の数、タイヤの太さ、ブレーキの性能、カゴやキャリア、スタンドなどの有無などだろう。

自転車の車種

それでは、どんな車種があるのか見てみよう。
実用のツボを押さえていて、ともかく便利なのが『ママチャリ』だ。
まずは日本で最もメジャーなママチャリ。ストレート(フラット)ハンドルのシティサイクルとU字ハンドルの軽快車の2種類があることは前回、お伝えした通り。
一般的なママチャリはタイヤも太目で、フレームも安定感が高く、バランスを取りやすい。重量はそれなりにあるが、屋外での保管を想定した頑丈な作りになっている。前輪ブレーキは車輪のリムを挟むキャリパーブレーキ。後輪は値段によるが、音鳴りしにくいローラーブレーキ搭載のものが人気。カゴや泥よけ、スタンド(多くの場合、安定感の高い両足スタンド)が付き、日常生活の中で実用的に使われることを想定している。ライトは電池や充電も不要な走行に伴う発電タイプが主流。ベル、カギなどが備え付けられている点も非常に便利で安心して乗れる。シンプルな変速なしのものから、7段変速程度のギアが付いたものが多い。価格帯は1万円台から6万円台程度。品質を見極めて、良いものを選びたい。

まずは日本で最もスタンダードな軽快車。ママチャリの代名詞とも言えるだろう。上半身をゆったり構えても乗れるU字ハンドルが付き、トップチューブはまたがりやすいスローピング(傾けられたもの)タイプ。後部の車輪横にはスカートを巻き込まないスカートガードが付いたものが多い。キャリア付きで、荷物が多い方は後部にもカゴを取り付けることができる。比較的、近距離での買い物などの荷物を運ぶ乗り方に最適な自転車だ。

[caption id="attachment_34163" align="alignnone" width="596"] U字ハンドルにスカートガード。【参考】カスタネット266HD サイクルスポットオリジナル 26インチ 適応身長145cm〜 外装6段 オートライト付き 23,980円(税抜)[/caption]

一方、シティサイクルはストレートハンドルが付き、ごく軽い前傾姿勢で乗るスポーティーなママチャリだ。5~6km程度なら快適に乗れ、10km圏内でも問題なく使える。通勤などの荷物があり、ソコソコの距離を日常的に移動する方にオススメ。走行性能も考慮され、複数の変速が付いている。軽量で多段ギアのもので脚力のある方は踏み込めばスポーツバイクに近い速度で乗れ、かなり優秀な交通手段になるだろう。

 

 

 

 

[caption id="attachment_34164" align="alignnone" width="640"] 走行性能に優れたシティサイクル。ワイドタイプのカゴが付き、シンプルに作られ、無駄なく走れる。【参考】JOGGING BIKE  サイクルスポットオリジナル 27インチ 適応身長150cm〜 外装6段変速 後輪はローラーブレーキ オートライト付き 29,980円(税抜)[/caption]

[caption id="attachment_34165" align="alignnone" width="640"] 手元グリップを回すだけで簡単に変速可能[/caption]

[caption id="attachment_34166" align="alignnone" width="640"] 暗くなると自動点灯するオートライト機能付き。明るいライトが心強い[/caption]

[caption id="attachment_34167" align="alignnone" width="640"] 座り心地の良い柔らかいサドル[/caption]

多段ギアはギアが外装(外にむき出しになったギア)のものが多いが、チェーンが落ちないよう工夫されており、チェーン落ちのトラブルなどはあまり起きなくなっているとのこと。

[caption id="attachment_34168" align="alignnone" width="640"] 外装6段変速。チェーンが落ちにくいよう、プレートが付けられている。チェーンのオイル汚れで服を汚さないチェーンガードも装備[/caption]

ママチャリのサイズは車輪の大きさで表示するが、最も大きな27インチの自転車で、身長150cm以下から乗れるように設計されているものもあり、自転車に設定された適応身長の範囲内であれば走行感覚の好みで選んでOKだ。
一般的に大きな車輪の方が(実際のところは前後のギアの比でも変わってくるが)、「グングン進む」感覚が強くなる。

そして、フレームの素材、変速数、オートライトの有無や駆動部分に使われるのがチェーンか?それとも注油不要なベルトなのか?などの要素に加えて、安全性能などにより、値段が変わってくる。

『走ることを楽しむための自転車、スポーツバイク』

走るために作られているスポーツバイク。一般的に軽量で変速数が多く、前傾のスポーティーな姿勢で全身を使って乗るものが多い。スポーツとして身体をシッカリ使う乗り方になるため、フレームにサイズが存在し、自分の身体に合わせてから乗ることになる。一般的には空気抵抗や重量を増やし、集団走行時に周囲へ危険を及ぼす可能性のあるカゴやスタンドなどは付いていない。

[caption id="attachment_34169" align="alignnone" width="640"] 心身へのプラスの効果が認められており、フィトネスに使用されることも多い[/caption]

繊細な作りになるため、室内保管が原則となる。折り畳みモデルを除き、前後の車輪が簡単に外れ、車への積み込みや、専用の袋に入れた運搬に対応。ルックスも重視して作られている。

[caption id="attachment_34170" align="alignnone" width="640"] フロント3枚、リアに9枚のギアが付く27段変速。アップダウンコースにも強い[/caption]

[caption id="attachment_34171" align="alignnone" width="640"] 車輪のシャフト(軸)はクイックレリースで止められ、前後輪は簡単に脱着できる(以上2枚は後述のクロスバイクRAIL700のもの)[/caption]

【取り回しやすく、ルックスも良いミニベロ』

8〜20インチ程度の車輪の小さな自転車のことで、フランス語で自転車を意味する『ベロ』と『ミニ』を組み合わせたもの。車輪サイズのみの分類であるため、実際はミニベロのくくりの中に、クロスバイク、ロードバイク、電動アシストなど、全種類が存在する。持ち運びしやすい折り畳みタイプも人気。ルックスが愛らしく、年齢性別を問わず、こだわりを持って乗る愛好家も多い。

[caption id="attachment_34172" align="alignnone" width="640"] 気軽に乗れ、取り回しも楽なミニベロ。街中の散策に使用されることが多い[/caption]

ゆったりとした速度で、近距離から30kmくらいまでのサイクリングに使われることが多い。だが、走行性能を考えて作られた種類のものは高速走行も可能であり、レースやロングライドの参加も十分可能。キャンプツーリングなどに使用する愛好家もおり、活用の可能性の幅は広い。価格帯は性能により大きく異なり、1万円台〜10万円以内が主流だが、ロードバイクと同じコンポーネントを使うものなどもあり、実際のところ上限は限りない。

[caption id="attachment_34173" align="alignnone" width="640"] 装備はママチャリ寄りでありながら、走行性能や、ルックスにもこだわったミニベロ。7速設定時、一こぎで進む距離は後述のクロスバイクとほぼ変わらない。【参考】マークローザM7 ブリヂストンサイクル 外装7段変速 オートライト付き 45,800円(税抜) 画像提供:ブリヂストンサイクル[/caption]

車体は小ぶりで、扱いやすく、小柄な方でも乗りやすい。日本の狭い道路や住宅でも取り回しに優れた点も魅力。サイズがワンサイズであることから子供から夫婦まで、家族などでも共有できる。

前出の高田店長によれば「ウチのお客さんで言うと、近場の散策に使うために選ぶ方が多いです」。実用で使うよりもレジャーの道具として、手頃な価格で買える変速なしのシンプルなものを選ぶ方が多いとか。『楽しむための道具』という要素が強いため、ルックスにこだわって選ぶ方も少なくないそうだ。

[caption id="attachment_34174" align="alignnone" width="640"] 車輪の小さなミニベロ。見た目の親しみやすさだけでなく、扱いやすく、気楽に乗れることから愛好家が多い。【参考】SPOT サイクルスポットオリジナル ママチャリに近い装備で、気軽に乗れる 変速なし 17,980円(税抜)[/caption]

[caption id="attachment_34175" align="alignnone" width="640"] 服装を限定せず乗れるチェーンガード[/caption]

[caption id="attachment_34176" align="alignnone" width="479"] 泥よけ、カギ、リアのリフレクター付きで実用的[/caption]

『スポーツバイクに実用の要素を取り入れたクロスバイク』

スポーツバイクのエントリーモデルの代表格。一般的に手頃な価格で購入でき、乗りやすい。一文字のストレートハンドルが付き、ロードバイクに代表されるスポーツバイクの走行性能とママチャリの実用性を併せ持った自転車。スポーツバイク寄りのものと、ママチャリ寄りのものが存在する。

深い前傾にはならないため、シニア層や腰にトラブルを抱えた人などがロードバイクの代替として走行性能に優れたモデルを選ぶことも。
ギアは3段程度のものから前後に変速を設定し、27段変速など、アップダウンに強いモデルも人気を得ている。

[caption id="attachment_34177" align="alignnone" width="640"] 細部までこだわり、走行・安全重視で作られているクロスバイク。【参考】RAIL700 コーダーブルーム シンプルで飽きのこないデザイン、重量10kgを切る軽量さ、走りの軽さが人気。27段変速 希望小売価格:60,000円(税抜)[/caption]

[caption id="attachment_34178" align="alignnone" width="640"] ライト、ベルが装備されているのも嬉しい[/caption]

[caption id="attachment_34179" align="alignnone" width="640"] 効きの良いVブレーキでシッカリ止まれる[/caption]

[caption id="attachment_34180" align="alignnone" width="423"] 実用を想定し、RAIL700には一本足スタンドも付いている[/caption]

クロスバイクにはニーズに応えたモデルが発売されており、何を重視するかにより重量、変速数、タイヤの太さ、フレーム設計などが異なる。カゴやスタンド付きのもの、タイヤの太いものなど、シティサイクルと線引きが難しいモデルも増えている。軽量で変速が多く、走行性能に重きを置いたものがクロスバイクに分類されるようだ。

[caption id="attachment_34181" align="alignnone" width="640"] シティサイクルの便利さとクロスバイクの走行性能を併せ持ち、デザイン性にも優れたバイク。【参考】マークローザ7S ブリヂストンサイクル 外装7段変速 オートライト 鍵付き ルックスに一目ぼれして買う人も多いとか。 46,800円(26 インチ)47800円(27インチ)[/caption]

[caption id="attachment_34182" align="alignnone" width="640"] オプションでカゴを付けることもできる 画像提供:ブリヂストンサイクル[/caption]

[caption id="attachment_34183" align="alignnone" width="640"] チェーンガードのデザインもオシャレ。後ろのみにギアが付いた外装7段変速[/caption]

[caption id="attachment_34184" align="alignnone" width="640"] 右手のダイヤルを回し、変速可能。手が小さな人間にも扱いやすい[/caption]

「クロスバイクはある程度、長い距離を走って楽しむことも視野に入れて、ルックスも重視する方が選ぶようです。海外の憧れのブランドのバイクをという選択肢もありますね」と、高田店長。

クロスバイクになれば車などに積んで出かけることもでき、楽しみの幅がグッと、広がるだろう。ペダリング時に全身を使う乗り方になるので、シェイプアップなど、身体を変えられる期待も持てる。スポーティーなデザインのものでも脱着可能なカゴやスタンドを後付けすることもでき、実用にも使用できるため、実用と楽しみ用、オン/オフを切り替えながら乗ることもできそうだ。

『競技にも使える本格派だが、ホビーにも人気 ロードバイク/MTB(マウンテンバイク)』

レースシーンでも使用できる本格的なスポーツバイクだが、その性能を活かし、趣味として乗るケースが急増している。

[caption id="attachment_34185" align="alignnone" width="640"] ロードバイクならば絶景の中でのサイクリングにも挑戦できる 画像提供 :グランフォンド軽井沢[/caption]

[caption id="attachment_34186" align="alignnone" width="640"] ロードバイクは元々、競技用自転車。選手と同じマシンに乗れることも魅力の一つだ 画像提供 :ツール・ド・熊野[/caption]

ロードバイクはドロップハンドルが付き、細いタイヤを履き、軽量なレースバイク。多くは前後にギアが付き、空気抵抗を削ぎ、高速走行ができるよう設計されている。競技選手などは平地で時速60〜70kmをも叩き出し、下りでは時速100kmを超えることもあるそうだ。深い前傾で全身を使って乗るため、身体を変える効果は大きい。

[caption id="attachment_34187" align="alignnone" width="640"] ドロップハンドルが付き、細いタイヤを履いたロードバイク。舗装道路上の高速走行が得意。【参考】STRAUSS DISC 105 KhodaaBloom 「速く走る」ことを追求、レースシーンでも活躍するバイク。近年人気のディスクブレーキを採用 199,000円 (税抜)  画像提供:ホダカ[/caption]

(高速走行でなければ)軽い力で爽快に乗れ、ハンドルの持ち方に応じ、乗車姿勢が変わるなど、長時間でも乗れるように設計されている。そのため、サイクリングやロングライドに使用する愛好家が多い。近年は路面を選ばず乗れる「グラベルロード」も登場している。

MTB(マウンテンバイク)はストレートハンドルに太いタイヤを履き、舗装道路外でも乗車できるよう設計されたオフロードバイク。

[caption id="attachment_34188" align="alignnone" width="640"] 自然の中を走るのは最高の経験!MTBだからこそできる楽しみ方だ 画像提供:ホダカ[/caption]

[caption id="attachment_34189" align="alignnone" width="640"] オフロード走行用の性能を備えたMTB。想定される走り方によりスペックは多様。
【参考】TRAIZE PLUS NESTO 軽量で登坂性能も備えた設計。フロントサスペンション付き。¥130,000(税抜) 画像提供:ホダカ[/caption]

想定する乗り方により多様な展開があり、フレーム設計に加え、ホイール径(26、27.5、29インチ)、タイヤの太さ、衝撃を吸収するサスペンションの付き方などを選ぶことになる。

どんな路面でも走れて、安定感があることから街乗りで愛用(タイヤを摩擦の少ないものに履き替えることが多い)するケースもあり、特に欧州ではシニア層のサイクリングなどにも人気。モーターユニットを付け、e-バイクとしての展開も豊富だ。街乗り用の「MTBルック車」はオフロードを走ることには適していないので注意。

価格帯はロードバイク、MTB、共にフレーム(素材、設計)、コンポーネント(ギアなど)やホイール性能などにより大いに異なる。5万円程度から上は上限がなく、100万円程度というところか。エントリーバイクはブレーキなどの安全性能を考え、10万円台のものを選ぶケースが多いようだ。

『どう選ぶか』

多くの種類の展開はあるけれども、目的とする使い方が見え、好みと予算感を考慮すれば、バイクはかなり絞り込まれてくる。最も大きな要素は実用か?レジャー?かという目的の違いになるようだ。多くの方が日常での使用中心であり、少々のサイクリングが加わる程度ということを考えれば、「これだけでほとんどカバーできる(高田店長)」というシティサイクルの売り上げが好調なのも頷ける。

日常では実用使いでも休日はサイクリングをしたり、車などに積んで出かけたりしたいという思いもあるだったら、楽しみの幅を広げてくれるスポーツバイクをオススメしたい。

ただし、ほとんど自転車に乗った経験がない方は少し注意が必要だ。いきなり細いタイヤの軽量スポーツバイクを買うよりは安定して乗れる自転車を選んでおいて、乗り慣れてから次のステップに進んだ方が安心とも言える。自転車は車道を走るものであり、命を乗せるものでもあるから、安全面もシッカリ考慮して選びたい。信頼できる店舗で、自転車を比べ、知識のあるスタッフに客観的な意見を参考に、相談しながら自転車を選ぶという要素も大切なのではないかと、感じた。

どんな風に乗りたいか__。
想像をふくらませながら、自分にピッタリの自転車を選び取って欲しい。次回は車種を決めた後のプロセスについてお伝えしていこう。

取材協力:サイクルスポット 武蔵小杉店
川崎市中原区小杉町3-29-14
電話:044-299-8468

画像:編集部
画像協力:ブリヂストンサイクル株式会社 株式会社ホダカ 株式会社サイクルスポット トレック・ジャパン株式会社 グランフォンド軽井沢実行委員会 TOUR de熊野実行委員会(P-Navi編集部)

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