2019/12/13(金) 22:55
【今年行われたサイクルイベントをご紹介します!】
4月21日、JR東日本が運行する世界初の自転車専用列車B.B.BASEの外房コースに乗り、上総一ノ宮駅から勝浦駅までを走るサイクリングが企画され、参加者は秘境と、スイーツ巡りを楽しんだ。
まず、B.B.BASEとは、自転車をそのまま積み込み、旅ができる特別な列車のこと。このために開発された、縦置き型のサイクルラックが座席背面に設置されており、バイクとともに席につけるようになっている。これなら、バイクを分解して輪行袋に入れる必要もないし、盗難の心配もない。
行き先は、外房の他、内房コース、佐原コース、銚子コース、さらに土浦コースが設定されており、今年からイベント特別列車の運行も始まっている。乗客は下りのB.B.BASEからライドに繰り出し、また上りのB.B.BASEへと戻ってくる。
[caption id="attachment_31528" align="alignnone" width="640"] 両国の3番ホームに停まるB.B.BASE。外側にも自転車のペイントが施されている[/caption]
朝7時、両国駅。少しずつ、参加者が集まってくる。この日、乗車するB.B.BASEの外房コースは、両国駅を7時39分に出発し、本千葉を経由し、上総一ノ宮、勝浦、安房鴨川へと向かう。料金は往復で7,500円だが、乗車距離に応じ、金額が安くなる。この日は上総一ノ宮駅で下車し、勝浦から両国に戻るため、料金は往復で6,500円になった。現地で使える1,000円分のお買い物クーポンも付いており、意外とリーズナブルな設定だ。
[caption id="attachment_31529" align="alignnone" width="480"] ネットで予約したチケットを券売機で受け取る。嬉しいクーポン付きだ[/caption]
両国駅の中でも、B.B.BASEが出発するのは、これまで使われていなかった1階の3番ホーム。ホームには自転車とともに乗り込むため、乗車の動線は外回り。いったん通常の改札を出て、建物沿いにぐるりと回り、外から3番ホームに乗り込むようだ。これまで見たことのないエリアへ足を踏み入れ、バイクを押してホームに上がる。新鮮な体験の連続だ。
[caption id="attachment_31530" align="alignnone" width="480"] 路面には乗車のための道標がペイントされている[/caption]
[caption id="attachment_31531" align="alignnone" width="640"] いざ、幻の3番ホームへ[/caption]
この日のB.B.BASEには、他のツアーに加え、個人の乗客も多く、ホームではたくさんのサイクリストが車両との記念撮影を楽しんでいた。出発が迫り、車内に乗り込んでいく。バイクを座席に固定する時が来た。ラックを引き出し、前輪をかけ、ラックに押し込み、ベルトでトップチューブを固定する。思ったより簡単で、慣れれば、数十秒でできてしまう。同じラックで、クロスバイクも、規定サイズに合えばミニベロまで固定可能なので、車内には様々な自転車が並んでいた。
[caption id="attachment_31532" align="alignnone" width="640"] 自転車をラックに固定。意外と簡単![/caption]
乗車中に、4号車のフリースペースで、乗車員による外房コースの楽しみ方を教えてくれるトークタイムが開催された。乗客はそれぞれ下車駅も、サイクリングコースも異なるが、奇妙な連帯感で盛り上がる。
[caption id="attachment_31533" align="alignnone" width="640"] グルメ情報など、旅先お役立ち情報のトークに聴き入る乗客達[/caption]
トークタイムが終わり、ほどなく上総一ノ宮駅に到着した。ここで現地をガイドしてくれる千葉県サイクリング協会の新井さん、吉清さんと合流。現地情報として、この近辺には質の良い和菓子店が多いとのこと!まずは1つ目のスポットに向かうが、折り返して帰る道中、参加者からは「和菓子屋に寄りたいな」という声があがる。
[caption id="attachment_31534" align="alignnone" width="640"] いざ、出発![/caption]
最初のスポットは、東京五輪のサーフィン会場に決まった釣ヶ崎海岸だ。上総一ノ宮駅から川沿いを走り、九十九里一宮大原自転車道や、サーファー向けのショップが並ぶ波乗り道路とも呼ばれる九十九里ビーチラインを抜け、海岸へと向かった。
[caption id="attachment_31535" align="alignnone" width="480"] 自転車道などを抜け、海岸へ向かう[/caption]
釣ヶ崎海岸の周りはサーファーや、サーファーたちの車でいっぱい!五輪に向け、サーフィンがますます盛んになっているのだろうか。釣ヶ崎海岸は、毎年秋に行われる十三社祭りで、近隣の神輿が集う場となるそうで、大きな鳥居が建てられていた。晴天の下、サーフィンを楽しむ人々をのんびり眺め、出発。田園風景を楽しみながら、再び駅を目指す。
[caption id="attachment_31536" align="alignnone" width="640"] 釣ヶ崎海岸には大きな鳥居が立ち、サーファーたちを見守っていた[/caption]
[caption id="attachment_31537" align="alignnone" width="640"] 田植え真っ最中の水が張られた水田が、キラキラ輝き美しい[/caption]
上総一ノ宮駅に再度到着。早朝出発で、なんとなく空腹を抱えていた一行は、ここでスイーツストップを強くリクエスト!店舗を絞り込むことができず、和菓子屋「角八」と「かねきち」2軒をハシゴすることになった。クオリティーが高く、結局はアレもコレもと買い込んだ和菓子を、腰掛けて味わい、予想外のタイムロスを負う一行。「この次のチーズケーキは大丈夫ですか?」と新井さん。次の立ち寄りは、チーズケーキが売りの寺カフェだった!一同に動揺が走る。
[caption id="attachment_31538" align="alignnone" width="640"] 江戸時代に開業したという由緒ある和菓子屋「かねきち」へ[/caption]
[caption id="attachment_31539" align="alignnone" width="640"] 続いて「角八」へ。2軒目にも関わらず、あれこれ買い込む一同[/caption]
[caption id="attachment_31540" align="alignnone" width="640"] 看板商品の大きな大きないちご大福[/caption]
今度は、市街地や住宅地を中心にバイクを飛ばしていく。寺カフェ「そわか」までは、たった4㎞だ。
[caption id="attachment_31541" align="alignnone" width="640"] 寺に到着。この奥に、カフェが?[/caption]
[caption id="attachment_31542" align="alignnone" width="640"] 寺カフェ初体験。どきどきしながら入り口を潜る[/caption]
気持ちよく汗をかきながら、小さな寺に到着。奥にカフェがあるらしい。住居を改装したのだろうか。明るい部屋に通された一行は、好きな梵字を一文字描いてくれる「梵字ラテ」とお手製のチーズケーキのセットをチョイスした。思い思いの願いを込めて、梵字を選びオーダー。新緑に囲まれた心和む空間で、ラテを待つ。出てくるまでの時間に本堂を拝見し、住職のお弟子さんから、ありがたいお話を伺うこともできる。
[caption id="attachment_31543" align="alignnone" width="640"] 梵字が描かれたカフェラテとチーズケーキ。ご利益がありそう![/caption]
一杯ずつ丁寧に梵字が描かれたラテは、ほんのりシナモンの香り。梵字はシナモンで描いているようだ。サービスされたおみくじクッキーをいただき、結果について盛り上がっていると、チーズケーキが運ばれてきた。コクがありながらも、サッパリ。甘さも絶妙だ。お値段はセットで600円。おいしいカフェと素敵な時間に感謝!
ここからランチまで30km!当初の目的地だった「秘境」スポットも巡らなくてはならない。一気にペースアップし、貧脚組はヒイヒイ言いながら、あとを追うことになった。
山道に差し掛かる。少々頑張って登っていくと、海が見えてきた!大舟谷海岸と矢指戸海岸の間で、美しい海岸を見下ろしながら記念撮影。せわしなく駆けてきたあとで、目の前に広がる穏やかで美しい海の景色を、一同はしばし時間も忘れて楽しむのだった。
[caption id="attachment_31544" align="alignnone" width="480"] 美しい浜をバックに記念撮影[/caption]
次は、海にせり出した絶景神社に向かう。中盤からアップダウンが増えてきて、無理せずゆったり行きたいところだが、なにせ時間がない。手彫りのトンネルも多く、冒険感が増してきた。この先にあるのは、どんな神社なのだろう?
少し入り組んだアップダウンを越え、たどり着いたのは、海を見晴らす位置に建てられた鮮やかな赤色の御堂だった。この岩船地蔵尊は、言い伝えによれば、その昔、大和国飛鳥の里に本尊が安置されていたが、1275年にご縁あってこの土地に御堂が建立されたという。それから700年あまり、海上安全・五穀豊穣・諸願成就の守り本尊として、信仰を集めているのだそうだ。ご利益は抜きにしたとしても、清らかな空気の中、青い海に御堂の赤が映え、神々しい美しさだ。一同は手を合わせ、記念撮影をし、海風と景色を楽しんで、遅いランチ会場に向かうのだった。残りは10km程度だろうか?
[caption id="attachment_31545" align="alignnone" width="640"] 岩船地蔵尊にお参り。海を望む御堂の空気は清らかに感じられた[/caption]
海岸線を越え、林の中を抜け、アップダウンを越えて、市街地へ入り、ようやく今日のランチ会場「御宿海楽」へ到着。趣のある建物に足を踏み入れると、品のよい気持ちのいい空間が広がっていた。クリート付きの靴で申し訳ない思いで、昼食用に用意された部屋へと向かう。まもなく提供された特別ランチは、まさに絶品だった。
[caption id="attachment_31546" align="alignnone" width="640"] 御宿海楽に到着。風情のある建物が待ち受けていた[/caption]
[caption id="attachment_31547" align="alignnone" width="640"] 楽の中に入り部屋に案内される一行[/caption]
メインのおかずは、煮魚か、焼き魚、てんぷらから選択可能。さらに身のしまった新鮮な刺身に、フンワリした長ひじき、そしてダシの利いた味噌汁。一品一品が、とにかく極上だ!おかわり自由のツヤツヤごはんに、遠慮なく、おかわりするメンバーが続出(笑)!さらに、デザートには、イチゴソースをあしらったババロアが運ばれてきて、あまりの美味しさに夢見心地。これには、頑張って走る気力を失うほど!
[caption id="attachment_31548" align="alignnone" width="640"] ふっくら焼かれた魚をはじめ、絶品づくしの昼食[/caption]
帰路のB.B.BASEは、17時41分に勝浦を出発する。この時点で、残り2時間を切っていた。行き先の決定に多数決を取ると、予定していた秘境に行かず、買い物をしながら勝浦駅を目指す案に全員が賛成。ふっくらしたお腹を撫でながら、〆のデザート&お土産ハントに向かったのだった。
本ルート内で最大の上りに差し掛かったところで、参加者のバイクのチェーンが切れるトラブルが発生!ガイドの新井さんのご家族に車を出していただき、運んでもらえることとなり、予定を変更して、クーポンが使える勝浦のホテル三日月で再集合することになった。自転車組は、峠越えコースで、勝浦を目指す。
[caption id="attachment_31549" align="alignnone" width="640"] アップダウンを越え、トンネルを抜け、まるで冒険のような道[/caption]
[caption id="attachment_31550" align="alignnone" width="640"] 漁村へ。短いルートながら、多彩な景観の中を抜けていく[/caption]
吉清さんの「おいしい和菓子屋ありますよ」の声に、一同が反応。全員一致で「せっかくだから」寄ることになった。まずは漁村の中の海沿いの小さな和菓子屋「玉子屋」でストップ。90円からというリーズナブルな値段に、また大量の和菓子を買ってしまう一同!!!
[caption id="attachment_31551" align="alignnone" width="640"] 素朴な玉子屋の店内。あまりにリーズナブルな価格に、また買い込む一同[/caption]
[caption id="attachment_31552" align="alignnone" width="640"] 地域の日常の中でストップし、地元民に愛される和菓子を買う。自転車旅ならでは[/caption]
再スタートし、雰囲気のある漁村を越え、街に出る。ふたたびオススメの「喜楽屋」でストップ。これまた「最後の」和菓子を買い込み、ようやくホテル三日月へ。明らかに、食べ過ぎ、買いすぎである(笑)。
[caption id="attachment_31553" align="alignnone" width="640"] またもや和菓子ストップ。「喜楽屋」でお土産を買い込む[/caption]
ホテル三日月は、大手の観光ホテルでありながら、地下にバイクラックが用意され、ここで荷物預かりもしてくれるという。時間があれば、入浴も可能だが、残された時間は15分。全員が再集合し、1,000円分のクーポンを使って、大急ぎで土産を買い込んだ。出発時間が迫る。
[caption id="attachment_31554" align="alignnone" width="640"] 「ホテル三日月」にはバイクラックが![/caption]
駅近くでノンアルコールビールを買い込み、B.B.BASE専用口からホームに駆け込み、空席を見つけて乗り込んだ。出発まであと2分。何とか間に合った!バイクをセットすると、出発のベルが鳴った。窓越しに、サポートしてくれた皆さんへ手を振って、この日のライドは終了。ともかく、楽しかった!
[caption id="attachment_31555" align="alignnone" width="640"] 勝浦駅に到着。ここでも外側から直接ホームへ入る[/caption]
買い込んだお菓子を並べ、ノンアルコールビールで乾杯!この、美味いこと!買い込んだお菓子をつまみながら、この日の思い出を語りあうのだった。
[caption id="attachment_31556" align="alignnone" width="439"] バイクをラックに置き、着席。思い出話で盛り上がる[/caption]
B.B.BASEのライドは、特別列車に乗ること自体が、アクティビティーとして楽しく、この路線が結ぶ土地の環境も恵まれており、両国を発ってから、帰り着くまで、子供の頃に経験した遠足の様な、ワクワク感が続く。コースを変え、何度でも乗って、走りたくなる“やみつき的”魅力があった。
両国駅にはレンタサイクルも充実しており、バイクがない、あるいは運ぶことに不安のある方でもB.B.BASEを体験できる。バイクを持っていても、バイクを運んでのライドに踏み切れなかった方にも、遠方のライドデビューができるチャンスだ。複数のツアーも企画されており、下車後のライドに自信がない方はツアー参加もオススメ。
『列車で行く自転車旅』。ぜひ、体験してみてはいかがだろうか。
【Special thanks 羽山智康】(P-Navi編集部)