シクロクロス千葉(レースレポート)

2020/02/06(木) 12:26

シクロクロス千葉(レースレポート)

『シクロクロス千葉』の第1戦が1月5日、千葉ポートパークで開催され、晴天の下、406名がレース参戦を楽しんだ。

冬の自転車競技『シクロクロス』は、その土地の自然を活かしたオフロードの周回コースで開催可能とあり、交通規制の必要もなく、河川敷や公園など、クローズドの空間の中で設定できるため、開催が実現しやすい。参加、観戦の楽しさもが広がり、北海道から、東北、関東の各地、東海、関西、さらには、山口や九州まで、まさに日本各地で開催されている。先日はその中でもUCI(世界自転車競技連合)登録のレースについてご紹介したが、今回は、千葉で開催される『シクロクロス千葉』シリーズ第1戦についてお伝えしよう。

会場となる千葉ポートパークは、千葉ポートタワーに隣接する湾岸環境整備施設。野外ステージも設置された円形芝生プラザ、テニスコートなどの設備や、バーベキュー場なども人気で、千葉市民の憩いの場所となっている。今回のコースはビーチプラザの一角と、ウォータープラザ手前までの森と芝生エリアを活用したもの。丘を含むため、アップダウンもあり、ビーチエリアの砂浜を使った砂エリアも設定されることになる(キッズはショートカットコースを使用)。一つの公園内に造り上げられたものでありながら、変化に富んだコースができあがった。

[caption id="attachment_31293" align="alignnone" width="621"] コンパクトながら公園の環境を活かし、ビーチや芝、丘等を含む面白いコースとなった[/caption]

この日の開催カテゴリーは、トップクラスとなるカテゴリー(C)1~4、女子(CL)1と2+3(混合)、40歳以上のマスターズ(CM)、キッズ(CK)1~3で、一般カテゴリーと同走ではあるが、U15、17、Jr(ジュニア)も設定された。

使用バイクがドロップハンドルのシクロクロスバイクに限定されるのはC1〜3、CL1とCMのみ。それ以外のカテゴリーではMTBなど、このコースを走破できる性能のある他車種の自転車でもエントリーできる。一般的にMTBはシクロクロスバイクより重量があり、担いでクリアするエリアではハンデになるが、フラットハンドルによる安定感もあり、ビギナーには扱いやすく、参加のハードルを下げられる。

今回の大会は手作り感も強いアットホームな開催。レース監修や運営に加え、MC、立哨スタッフ等にも、自ら走り、シクロクロスの楽しさを伝えたいという思いの愛好家が多く、参加者、観戦客の安全をきっちりと守りながらも、皆を縛りすぎることのない心地よいコントロールの中で大会が開催された。

[caption id="attachment_31294" align="alignnone" width="640"] 選手たちが集まってくる。あちこちで新年の挨拶が交わされ、のんびりとした雰囲気[/caption]

[caption id="attachment_31295" align="alignnone" width="640"] ブース出店もあり、来場者たちはブースめぐりも楽しんだ[/caption]

正月明け、まだ間もない時期でもありながら、各地から続々と参加者が集まり、試走とレースが開催されていく。冬休み期間とあり、家族連れの姿も多く、子供たちが公園でのびのび遊んでいた。正月太り解消に、と、自走で訪れる観戦客も多く、会場全体がのんびりとした空気に包まれている。

コースは、芝生が広がるエリアをスタートし、丘へ。下ってシケインエリアを通過し、森を通ってビーチエリアへ。海の間際、砂浜の上を走り、砂セクションを終えたら、木々の間を抜けて、森エリアへ。再びスタート地点に戻るというもの。

[caption id="attachment_31296" align="alignnone" width="640"] ビーチからまた芝エリアへと向かう[/caption]

[caption id="attachment_31297" align="alignnone" width="640"] 木立の間を抜け走るエリアも。環境により、極めて追い抜きにくい区間も多いのだ[/caption]

[caption id="attachment_31298" align="alignnone" width="640"] 丘の上からはスタートゴールを含めコース内を見渡せる。公園のシンボルであるポートタワービルも[/caption]

[caption id="attachment_31299" align="alignnone" width="640"] シケインをバニーホップ(ジャンプ)で越えるツワモノも![/caption]

この上ない晴天に恵まれたが、海沿いとあって風が強く、それがまたバイクコントロールの難度を上げた。

朝8時半のC3(U17も同走)からレースがスタート。C4、CMとレースは進んでいく。

この日のトップカテゴリーC1には、ロードの人気チームから複数の選手がエントリーし、注目を集めた。

宇都宮ブリッツェンのスプリンター、鈴木龍と小野寺玲、2017年の全日本チャンピオンであるチーム右京の畑中勇介、日本代表としても世界のレースを経験するエカーズの渡辺歩、蠣崎優仁など。昨年は加藤健悟(臼杵レーシング)が、畑中、小野寺を制して優勝したが、今年も表彰台のてっぺんを死守できるのか。

トップレースを走るローディーが、どこまでシクロクロッサーに対抗できるのか注目された。

[caption id="attachment_31300" align="alignnone" width="640"] 最高カテゴリーとなるC1のレースがスタート。加藤が良いスタートを切る[/caption]

[caption id="attachment_31301" align="alignnone" width="640"] ヨットとともに走るビーチエリア。水で平らに固まった波ギリギリが走りやすいらしい[/caption]

スタートと同時に勢いよく飛び出したディフェンディングチャンピオン、加藤が先頭に立つ。数名の集団が形成され、加藤を追う。

[caption id="attachment_31302" align="alignnone" width="640"] 先頭を行く加藤らを追う上位選手たち[/caption]

強風のビーチセクションやアップダウンを越える中で、転倒やトラブルも相次ぎ、疲労からペースを落とすものも多く、選手たちが次々とふるい落とされていく。実力者が着実に前方に上がり、先頭の顔ぶれは入れ替わって行った。そんな中でも、加藤は落ち着いて先頭を守り、淡々と独走で周回を重ねる。

[caption id="attachment_31303" align="alignnone" width="640"] チェーン落ちや転倒などトラブルが多発するのもシクロクロス。落ち着いて対応に当たる[/caption]

[caption id="attachment_31304" align="alignnone" width="640"] 力強い走りで先頭を独走する加藤(臼杵レーシング)[/caption]

[caption id="attachment_31305" align="alignnone" width="640"] じわじわと3位まで順位を上げてきた鈴木(宇都宮ブリッツェン)[/caption]

レースが折り返しを迎えるころになると、ロードのプロ選手たちが前方に上がり、目立つようになってきた。加藤のすぐ後ろに重田兼吾(Team CUORE)、そしてロード選手の鈴木、畑中がそのあとに続き、追い上げる。

[caption id="attachment_31306" align="alignnone" width="640"] 鈴木、畑中(チーム右京)のロードコンビが先頭に迫る[/caption]

[caption id="attachment_31307" align="alignnone" width="640"] 終盤になり、緊張感が高まる。狙い込んでいくからこそ、上位選手の中でも転倒が起こる[/caption]

加藤に重田をパスした鈴木、畑中が迫り、三つ巴の状態で最終周回へ。この頃には渡辺や、トラブルに泣いた小野寺も着々と順位をあげてきていた。

[caption id="attachment_31308" align="alignnone" width="640"] 先頭でフィニッシュラインに登場したのは鈴木龍![/caption]

観客が熱い視線を投げるフィニッシュラインに登場したのは鈴木龍。両手を挙げ、悠々とガッツポーズで優勝を決めた。15秒差で加藤が飛び込み、2位を死守。3位には重田が入った。先頭に迫っていた畑中は最終周回に大落車。バイクトラブルもあり、代車に交換、大きなタイムロスを強いられ、6位でフィニッシュ。最後の最後までわからないシクロクロスの怖さと面白さを体現したようだった。

[caption id="attachment_31309" align="alignnone" width="640"] アットホームな表彰式[/caption]

ゴール後は芝エリアに置かれた表彰台で速やかに表彰式が開催され、通常はプロのロードレースに出場する鈴木は、少しはにかんだ笑顔で登場、観客たちの拍手を受けながら、大会のスポンサーから副賞が贈られた。

公園の環境を活かし、設営された絶妙なコースで開催されたシクロクロス千葉第1戦。観戦する側にとっても、変化に富んだ環境で、海や森に触れ、滞在を楽しみながら、ちょっとした旅行気分も味わえるため、観客たちも、大いにこの1日を楽しんでいるようだった。

コンパクトで開催しやすく、観戦も、参加も楽しめるシクロクロス大会は、それぞれの地域の特色を活かしながら、これからも開催が増えて行くに違いない。

シクロクロスシーズンの終盤が近づいてきたが、まだ2月までは各地で開催が予定されている。興味のある方は、参加、観戦を検討してみてはいかがだろうか。

シクロクロス千葉ウェブサイトは、こちら

2019-20シクロクロスレース開催カレンダーは、こちら

(一般社団法人 日本シクロクロス競技主催者協会)

 

写真:編集部(P-Navi編集部)

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