2019/12/29(日) 10:17
【2019年も全国各地で熱戦が開催されたロードレース。その大会の模様を回顧します】
ツアー・オブ・ジャパンの第7ステージは、最も過酷な伊豆ステージ。日本サイクルスポーツセンター内の5kmサーキットを中心に、外周の管理用道路を組み合わせた1周12.2kmのコースが使用される。コース10周、122kmで獲得標高は3,750m。アップダウンの連続で、さらに細かいコーナーが連続するタフなコースだ。
富士山ステージを終え、個人総合成績では、トップのクリス・ハーパー(チーム・ブリッジレーン)から1分以内に4名が控えている。タイム差のつくフィニッシュの可能性も高く、この日の展開次第では逆転も大いにあり得る。日本人勢では増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が51秒差の4位につけており、注目が集まるところだ。
[caption id="attachment_31198" align="alignnone" width="640"] スタートに並ぶ4賞ジャージ。新人賞は繰り上げでドリュー・モレが着用[/caption]
[caption id="attachment_31199" align="alignnone" width="640"] スタート前に、太鼓のパフォーマンスが会場を盛り上げた[/caption]
スタートラインにつく総合リーダーは、クリス・ハーパー。ハーパーは同時に新人賞首位もキープしている。ポイント賞のブルージャージは、レイモンド・クレダー(チーム右京)、山岳賞は赤ジャージを守り続けているフィリッポ・ザッカンティ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)。ザッカンティはすでに2位と14ポイントの差をつけており、このステージで獲得できる山岳ポイントは最大で10であることから、完走すれば山岳賞が獲得できる状況にあった。
[caption id="attachment_31200" align="alignnone" width="640"] 土曜日ということもあり、サーキットには多くの観客が集まった[/caption]
スタート直後からアタックが繰り返され、総合2位のベンジャミ・プラデス・レヴェルテル(チーム右京)を抱えるチーム右京や、昨年のチャンピオン、マルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)を擁するキナンサイクリングチームを中心に活発な動きが起こる。
プラデス、ガルシアを含む8名の逃げが決まるが、ハーパー自らが集団を牽引、この逃げをつぶすと、3周回目には総合の順位に影響のないメンバーを中心とした逃げ集団ができあがった。この時点で、メイン集団からは多くのメンバーが振り落とされており、すでに30名程度に絞り込まれていた。
[caption id="attachment_31201" align="alignnone" width="640"] 逃げ集団を日本競輪学校(現:日本競輪選手養成所)の生徒たちが応援[/caption]
この逃げの中には、南信州ステージを制したフェデリコ・ズルロ(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマ)や、いなべステージを制したベンジャミン・ヒル(リュブリャナ・グスト・サンティック)らの実力者も含まれていた。ここから、ズルロが単独でアタック。9名と1分40秒のタイムギャップを稼ぎ出す。
[caption id="attachment_31202" align="alignnone" width="640"] 単独で飛び出したフェデリコ・ズルロ[/caption]
単独で先頭をいくズルロと集団の差はさらに広がり、5周回完了時には、9名と2分44秒、メイン集団とは4分45秒まで開く。
[caption id="attachment_31203" align="alignnone" width="640"] 東京五輪トラック競技の会場となるベロドロームを背に[/caption]
6周回目、メイン集団が追走のペースアップに入り始めたタイミングで、総合3位につけるメトケル・イヨブ(トレンガヌ・INC・TSG・サイクリングチーム)が落車、すぐ後ろを走っていた増田成幸が巻き込まれてしまった。宇都宮ブリッツェンのアシストは全員で増田をメイン集団まで引き上げたが、イヨブはレースをリタイヤする事態に。
8周回目、逃げ集団がズルロを吸収。1名が脱落して、8名の集団となる。メイン集団とのタイムギャップは1分20秒残されており、このタイム差から開いて勝負が決まった場合、総合逆転もありうる状況に。
首位を守りたいハーパーは、集団から飛び出す。この動きに同調したメンバーと追走集団を形成して、逃げ集団との差を詰めていく。ここには差を開きたくないプラデスや石橋学(チーム・ブリヂストンサイクリング)、フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)など総合上位の選手が含まれていたが、落車のダメージを負った増田は入ることができなかった。
追走は、最終周回に入るまでに逃げ集団を捕えるが、ここからパブロ・トーレス・ムイノ(インタープロサイクリングアカデミー)が単独アタック。総合でトップから4分半の差が付いているムイノの動きは容認され、独走のまま、1周回以上を逃げ、単独でフィニッシュラインを越えた。
[caption id="attachment_31204" align="alignnone" width="640"] チームメイトと勝利の喜びを分かち合うムイノ[/caption]
ハーパーはトップから16秒差でフィニッシュし、個人総合リーダーを死守した。個人総合2位のプラデスは11秒差でレースを終え、ハーパーとの差を5秒縮めたが、順位を覆すことはできなかった。日本人勢では不運な落車に巻き込まれた増田は10位まで順位を落としたが、健闘した石橋、小林海(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマ)は個人総合7位、8位まで順位を上げている。
[caption id="attachment_31205" align="alignnone" width="640"] ズルロがポイント賞を獲得[/caption]
ポイント賞は、スプリントポイントを2回先頭で通過したズルロとクレダーが同点で並んだが、個人総合成績で上位となるズルロが、ポイント賞リーダーとなった。
[caption id="attachment_31206" align="alignnone" width="640"] 初優勝の喜びを語ったムイノ[/caption]
優勝したムイノは「ツアー・オブ・ジャパンに向け、チームはとてもよい準備をしてきた。ホームである日本のレースで勝てたので、今夜はみんなでお祝いだ」と喜びを語った。
[caption id="attachment_31207" align="alignnone" width="640"] クリス・ハーパーがグリーンジャージを死守。強さを見せつけた[/caption]
自ら動き、自らの個人総合首位を守ったハーパーは、伊豆のコースがとてもハードだったと述べ「グリーンジャージを守るために力を尽くしてくれ、今日はチームメイトに感謝してもしきれないくらいだ」と感謝の思いを語った。
残すは東京ステージのみ。距離も長くない周回の平坦ステージで、タイム差が付きにくく、この日のハーパーの走りから見ても、トラブルがなければ首位は揺らがないだろう。多くの観客を集める花形ステージで、ゴールを狙うスプリンターたちの走りに注目が集まる。
【第7ステージ結果】
1位 パブロ・トーレス・ムイノ(インタープロサイクリングアカデミー)3時間10分24秒
2位 ベンジャミン・ヒル (リュブリャナ・グスト・サンディック)+11秒
3位 ホセ・ヴィセンテ・トリビオ・アルコレア(マトリックス・パワータグ)
◆個人総合成績(第7ステージ終了時)
1位 クリス・ハーパー(チーム・ブリッジレーン) 17時間26分56秒
2位 ベンジャミ・プラデス・レヴェルテル(チーム右京)+40秒
3位 ホセ・ビセンテ・トリビオ・アルコレア(マトリックスパワータグ)+51秒
◆ポイント賞(第7ステージ終了時)
1位 フェデリコ・ズルロ(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー)67p
2位 レイモンド・クレダー(チーム右京)67p
3位 ベンジャミン・ヒル(リュブリャナ・グスト・サンティック)59p
◆山岳賞(第7ステージ終了時)
1位 フィリッポ・ザッカンティ(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)33p
2位 クリス・ハーパー(チーム・ブリッジレーン)15p
3位 エミール・ディマ(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー)
◆チーム総合(第7ステージ終了時)
1位 チーム右京 52時間28分50秒
2位 マトリックス・パワータグ +1分41秒
3位 インタープロサイクリングアカデミー 8分14秒(P-Navi編集部)