2019/12/27(金) 23:14
【2019年も全国各地で熱戦が開催されたロードレース。その大会の模様を回顧します】
ついにやってきた!ツアー・オブ・ジャパン第6ステージの『富士山』。マスドスタートのロードレースでありながら、登坂次第で個々のタイムに大きな差が付きやすく、このステージを制するものが、個人総合優勝を決めることの多い重要なステージだ。今年は東京五輪のロードコースフィニッシュとなる富士スピードウェイの外周路を2周してから、ふじあざみラインを抜け、富士山五合目を目指す36.0kmのコースで展開される。ふじあざみラインは平均勾配10%、最大勾配22%という富士山に登る中でも、もっとも勾配のきつい登坂コースだ。
スタートラインの最前列には、グリーンジャージのベンジャミン・ヒル(リュブリャナ・グスト・サンティック)、山岳賞ジャージを守り抜いているフィリッポ・ザッカンティ(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)、ポイント賞ジャージを獲得したレイモンド・クレダー(チーム右京)、新人賞ジャージのアダム・トーパリック(チーム・ザワーランド・NRW・P/B・SKS・ジャーマニー)の4賞と、富士山ステージをホームタウンとするチームブリヂストンサイクリングが並んだ。
[caption id="attachment_31151" align="alignnone" width="640"] 富士山を背負いラインナップする4賞ジャージ[/caption]
まずは静岡県の須走商店街をスタート。富士スピードウェイの西ゲート前までパレード走行をし、そこからアクチュアルスタートとなる。このステージの重要性と怖さを知る個人総合を狙うチームのエースたちは、特殊な緊張感に包まれていた。
この日は青空が広がり、美しい富士山が、その姿をはっきりと見せていた。5合目は凍えるような気温となる年もあるのだが、今年の天気予報は夏の気温になることを告げており、今年は例年と少し異なる状況になるかもしれないと予測された。この気温が、果たして吉と出るのか、凶と出るのか……!?
レースがスタートすると、昨年、このステージを制し、大会の個人総合優勝に輝いたマルコス・ガルシアを擁するキナンサイクリングチームが集団の先頭に立ち、ペースが上りすぎないよう慎重に集団をコントロールし始めた。
[caption id="attachment_31152" align="alignnone" width="640"] 富士スピードウェイ西ゲートからアクチュアルスタート。ここからクイーンステージが始まる[/caption]
外周路を抜けるころ、安原大貴(マトリックス・パワータグ)がアタックを仕掛けると集団の隊列は縦に長く伸び、一気に活性化。ふじあざみラインへのつなぎ区間でアルチョム・オヴェチキン(トレンガヌ・INC・TSG・サイクリング・チーム) が単独で飛び出す。14秒のタイムギャップを得るが、ふじあざみラインに突入するとメイン集団が吸収した。
続いて、同チームのメトケル・イヨブ(トレンガヌ・INC・TSG・サイクリングチーム)がアタック。ここにディラン・サンダーランド(チーム・ブリッジレーン)が同調、メイン集団に20秒のタイムギャップをつける。ここにサンダーランドのチームメイト、クリス・ハーパー(チーム・ブリッジレーン)が追走して合流、3名の逃げ集団が形成された。
[caption id="attachment_31153" align="alignnone" width="359"] 美しい富士山に向けて走る選手たち[/caption]
残り6km地点で、ハーパーが単独アタック。ここまでアシストしてきたチームメイトのサンダーランドは脱落し、イヨブに22秒の差を付け、独走態勢に入った。3名を追うメイン集団までは52秒。
脱落者が次々出ていたメイン集団からは、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、ベンジャミ・プラデス・レヴェルテル(チーム右京)、ホセ・ビセンテ・アルコレア(マトリックス・パワータグ)の3名が飛び出し、先頭を追い始めた。
[caption id="attachment_31154" align="alignnone" width="640"] 先頭2名を追う増田、プラデス、ホセ[/caption]
[caption id="attachment_31155" align="alignnone" width="640"] 先頭2名を追う増田、プラデス、ホセ[/caption]
追走3名はイヨブを視界に捉えるところまで追い詰めるが、ハーパーには届かない。誰一人寄せ付けぬまま、クリス・ハーパーは独走でフィニッシュラインに飛び込んだ。ここに続いたのは、追走3名を振り切ったメトケル・イヨブ。28秒差のフィニッシュだった。追走3名からはわずかに抜け出したプラデスが3位。続いて日本人最高位となる増田が51秒差でフィニッシュした。
[caption id="attachment_31156" align="alignnone" width="640"] 日本人最高位4位と大健闘した増田[/caption]
[caption id="attachment_31157" align="alignnone" width="640"] ハーパーはガッツポーズでフィニッシュに飛び込んだ[/caption]
結果、個人総合首位は入れ替わり、クリス・ハーパーがグリーンジャージを獲得、プラデスが45秒差の2位に浮上、増田も51秒ビハインドの4位まで順位を上げた。
[caption id="attachment_31158" align="alignnone" width="640"] このステージを制したクリス・ハーパーがグリーンジャージを獲得。富士山も健闘を称え、祝福するかのようだ[/caption]
ポイント賞はクレダーがキープ、山岳賞はこの日8位となり、さらにポイントを加算したザッカンティが死守、大会を通しての山岳賞を確定させた。新人賞はクリス・ハーパーの手中に移った。
[caption id="attachment_31159" align="alignnone" width="640"] ポイント賞を守ったクレダー[/caption]
[caption id="attachment_31160" align="alignnone" width="640"] 総合の山岳賞を決めたザッカンティ[/caption]
[caption id="attachment_31161" align="alignnone" width="640"] 新人賞もハーパーの手に渡った[/caption]
【第6ステージ結果】
1位 クリス・ハーパー(チーム・ブリッジレーン)1時間22分24秒
2位 メトケル・イヨブ(トレンガヌ・INC・TSG・サイクリングチーム)+28秒
3位 ベンジャミ・プラデス・レヴェルデル(チーム右京)+43秒
◆個人総合成績(第6ステージ 終了時)
1位 クリス・ハーパー(チーム・ブリッジレーン)13時間50分42秒
2位 ベンジャミ・プラデス・レヴェルテル(チーム右京)+45秒
3位 メトケル・イヨブ(トレンガヌ・INC・TSG・サイクリングチーム)+46秒
◆ポイント賞(第6ステージ 終了時)
1位 レイモンド・クレダー(チーム右京)67p
2位 フェデリコ・ズルロ(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー)57p
3位 窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)55p
◆山岳賞(第6ステージ 終了時)
1位 フィリッポ・ザッカンティ(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)33p
2位 メトケル・イヨブ(トレンガヌ・INC・TSGサイクリングチーム)19p
3位 クリス・ハーパー(チーム・ブリッジレーン)15p
◆チーム総合(第6ステージ:富士山 終了時)
1位 マトリックスパワータグ 41時間37分28秒
2位 トレンガヌ・INC・TSG・サイクリングチーム +10秒
3位 チーム・ブリッジレーン +1分41秒(P-Navi編集部)