2019/12/25(水) 16:16
【2019年も全国各地で熱戦が開催されたロードレース。その大会の模様を回顧します】
ツアー・オブ・ジャパン第5ステージは、長野県飯田市で開催される『南信州ステージ』。「アップダウンしかない」と言われるタフなステージだ。JR飯田駅前からパレードスタートし、12.2kmのサーキットを10周回したあと、天竜川を渡り、フィニッシュに向かう全長123.6kmのレース。1級山岳に指定される最大標高差561mの山岳ポイントへの上りだけでなく、「TOJコーナー」と呼ばれるヘアピンカーブなど、テクニカルなコーナーも連続し、選手たちを苦しめる。ここからの3ステージは、非常にハードなコース設定になっており、全8ステージの中の“ヤマ場”となるのだ。
[caption id="attachment_31118" align="alignnone" width="640"] スタートを待つ各賞ジャージの選手たち。タフなコースを前に緊張の色も[/caption]
リーダージャージは前日の美濃ステージと変動なく、グリーンジャージはベンジャミン・ヒル(リュブリャナ・グスト・サンティック)、山岳賞ジャージはフィリッポ・ザッカンティ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)、ポイント賞ジャージは窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)、新人賞ジャージはアダム・トーパリック(チーム・ザワーランド・NRW・P/B・SKS・ジャーマニー)が着用する。
[caption id="attachment_31119" align="alignnone" width="640"] 飯田市、牧野市長は今年も愛車でパレードに参加[/caption]
[caption id="attachment_31120" align="alignnone" width="640"] 子供達の声援を浴びながらパレード走行[/caption]
晴天の下、飯田駅前からスタートしたパレードは周回コースに差し掛かる。ハードなレースを警戒したのか、第1周では何の動きも生じない。2周目、赤い山岳ジャージを着たザッカンティ、メトケル・イヨブ(トレンガヌ・INC・TSG・サイクリングチーム)、岡篤志(宇都宮ブリッツェン)の3名が飛び出した。ここに、いなべステージで逃げたエミール・ディマ(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー)が合流しようと動きを見せる。
グリーンジャージを着るヒルが所属するリュブリャナ・グスト・サンティック。ここがリーダーチームとしてコントロールするメイン集団は、この4名を容認。タイムギャップは3分ほどにキープされ、山岳賞が設定された3周目に突入。
[caption id="attachment_31121" align="alignnone" width="640"] 集団はリュブリャナ・グスト・サンティックがコントロール[/caption]
山岳ジャージを着るザッカンティがそつなく先頭通過し、1級山岳1位通過の7ポイントを獲得。早くも山岳賞ジャージキープを手中に収めた。ここで飛びだしていたディマが3名に追いつき、集団は4名に。
5周目に差し掛かるとチーム・ザワーランド・NRW・P/B・SKSジャーマニーが、グストに代わり先頭に立ち、ペースアップを開始。タイムギャップを縮めていく。2回目の山岳賞もザッカンティが先頭通過し、さらに7ポイントを獲得、最後まで赤いジャージを守りきる可能性が濃厚になってきた。
7周目、ついにタイムギャップが1分になる。ここでディフェンディングチャンピオンのガルシアと、昨年このステージを制したトマ・ルバを擁するキナンサイクリングチームが牽引を担い始め、強力にペースアップ。山岳ポイント後の下り区間で、一気に先頭4名を視界に捉えるところまで追い詰めた。
[caption id="attachment_31122" align="alignnone" width="640"] ペースアップする集団。このサーキットは休める場所がなく、周回をこなす選手たちを追い詰めていく[/caption]
捕まりたくない逃げ集団からは、岡篤志が単独でアタック。メイン集団から、オールイス・アウラール(マトリックス・パワータグ)がアタックをかけたのを契機に、アタック合戦が始まった。岡に、アドリアン・ギロネット(インタープロサイクリングアカデミー)、ドリュー・モレ(トレンガヌ・INC・TSG・サイクリングチーム)が合流、3名の集団となり、メイン集団から40秒のタイムギャップを得て、逃げ切りを図る。
[caption id="attachment_31123" align="alignnone" width="640"] 岡のアタックから、ギロネット、モレとの3名の勝利を狙う集団が形成[/caption]
これで決まりかと思いきや、岡が9周目にドロップし、最終周回にギロネットが脱落、最後までモレは粘ったが、とうとうTOJコーナーでメイン集団に捉えられ、レースは30名程度の集団によるスプリント勝負へ持ち込まれる展開となった。
ラスト1km、長い直線のストレートにトレインを組んだチーム・ブリッジレーンが突入、しかし先行はできず、複数のチームのトレインもなだれ込んだ。
[caption id="attachment_31124" align="alignnone" width="640"] 勝利をもぎ取ったのはズルロ![/caption]
前日優勝を飾ったスプリンターレイモンド・クレダーをかわし、この日トップでフィニッシュラインを越えたのはフェデリコ・ズルロ(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー)。強力なスプリントで差し切った。ニコラス・ホワイト(チーム・ブリッジレーン)が3位となった。
[caption id="attachment_31125" align="alignnone" width="640"] 見事ステージ優勝を決めたズルロ[/caption]
[caption id="attachment_31126" align="alignnone" width="640"] ヒルがグリーンジャージをキープ[/caption]
グリーンジャージのヒルはこの混戦の中も、自ら4位でステージを終え、ジャージをキープ。個人総合では2位以下が入れ替わり、2位に浮上したアダム・トーパリック(チーム・ザワーランド・NRW・P/B・SKS・ジャーマニー)との差は2秒となった。
[caption id="attachment_31127" align="alignnone" width="640"] 着実に逃げ集団に入り、山岳ポイントを積み重ねたザッカンティ[/caption]
[caption id="attachment_31128" align="alignnone" width="640"] ポイント賞はレイモンド・クレダーの手に移った[/caption]
山岳賞は2位以下に大きな差をつけているザッカンティが守ったが、新人賞は総合2位に上がったアダム・トーパリックに移り、ポイント賞はこの日をステージ2位で終えたクレダーに移行。
[caption id="attachment_31129" align="alignnone" width="640"] 新人賞は個人総合2位に順位を上げたトーパリックの手に[/caption]
[caption id="attachment_31130" align="alignnone" width="640"] シャンパンファイトでこの日の健闘を称え合う[/caption]
優勝したズルロは、暑さと、コースの上り、コーナーの多さがハードで、ナーバスになったとコメント。それでも「レース中、常に良い位置取りができていて、最後の1周は30~40人程度の少ない集団になっていたこともあり、自分にとってはとても戦いやすかった」と振り返った。
ジャージのキープをチームの目標として走ったというヒルは、ステージ優勝も狙っていたそうで「やはり勝ちたかったという気持ちはある。とにかくジャージのキープという 目的を果たせたので、チームとしては勝利ともいえると思っている」と語った。
[caption id="attachment_31131" align="alignnone" width="640"] 南信州ステージ名物「焼肉観戦」。コース内ではいたるところで焼肉が行われている[/caption]
この日の観客は約3万8,000人。今年も“焼肉のまち”飯田ならではの焼肉観戦は健在で、公式焼肉スポットの他、コース沿線の家々のガレージで焼肉が行われ、飯田市民だけでなく、遠方からの観戦者も大いにレース観戦と焼肉とを楽しんだ。初来日の選手たちは、のどやかな景観と漂う肉の焼ける匂いに、さぞかし驚いたに違いない。
次は富士山ステージ。ここで出るタイムがこのレースの個人総合を決めると言ってもよいほど重要なステージであり、ここで個人総合の順位も大きく入れ替わる。日本人勢では入部正太朗(シマノレーシング)が4位、上りにも強い増田成幸(宇都宮ブリッツエン)が8位をキープ。どのような展開が待っているのだろう。
【第5ステージ】
1位 フェデリコ・ズルロ(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー)3時間10分24秒
2位 レイモンド・クレダー(チーム右京)+0秒
3位 ニコラス・ホワイト(チーム・ブリッジレーン)
◆個人総合成績(第5ステージ終了時)
1位 ベンジャミン・ヒル(リュブリャナ・グスト・サンティック)12時間27分54秒
2位 アダム・トーパリック(チーム・ザワーランド・NRW・P/B・SKS・ジャーマニー)+2秒
3位 レイモンド・クレダー(チーム右京)
◆ポイント賞(第5ステージ終了時)
1位 レイモンド・クレダー(チーム右京)67p
2位 フェデリコ・ズルロ(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー)57p
3位 窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)55p
◆山岳賞(第5ステージ:南信州 終了時)
1位 フィリッポ・ザッカンティ(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)30p
2位 エミール・ディマ(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー)12p
3位 ホアン・ボウ・カンパニー(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)10p
◆チーム総合(第5ステージ終了時)
1位 チーム・ブリッジレーン 37時間24分46秒
2位 チーム右京 +10秒
3位 マトリックスパワータグ +11秒(P-Navi編集部)