2019/12/18(水) 11:04
【2019年も全国各地で熱戦が開催されたロードレース。その大会の模様を回顧します】
ツアー・オブ・ジャパン(TOJ)の第3ステージが5月21日(火)、三重県いなべ市で開催された。いなべのコースは1周=14.8km。阿下喜駅前からのスタート後はパレード走行があり、本コースに入って8周回を走るため総距離=127.0kmとなる。スタートから山岳ポイントに向けて上り、いったん中盤まで下る。その後は再び上りに入り、いなべ市梅林公園のフィニッシュに向かっていく。フィニッシュ手前1.0kmにある勝負の明暗を分ける上り坂は“いなベルグ”と名づけられており、このステージの代名詞ともなっている。
[caption id="attachment_31080" align="alignnone" width="640"] べステージ名物“いなベルグ[/caption]
グリーンジャージを着るのは京都ステージの覇者エイデン・トゥーベイ(チーム・ブリッジレーン)。赤い山岳賞ジャージはフィリッポ・ザッカンティ(NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネ)。ブルーのポイント賞ジャージは繰り上げで入部正太朗(シマノレーシング)。白い新人賞ジャージは岡篤志(宇都宮ブリッツェン)が繰り上げで着用してスタートラインに立った。
[caption id="attachment_31081" align="alignnone" width="640"] 緊張をにじませながらスタートラインに立つリーダーたち[/caption]
この日は全国的な大雨で、いなべでも早朝に雨がパラついており開催が心配されたが、その雨はスタート前に上がって、奇跡的に好天の中でレースがスタートした。
[caption id="attachment_31082" align="alignnone" width="640"] 地元の声援を受けながらパレードがスタート[/caption]
パレード区間が終了した後、すぐに佐野淳哉(マトリックス パワータグ)ら3名の落車が発生。とっさにガードレールに手を伸ばして体をかばった佐野はここでリタイアを余儀なくされてしまう。
スタート後、速やかに2名の逃げが決まった昨年とは対照的に、アタックがかかるも逃げが決まらない。集団は2周目に突入し、最初の山岳ポイントを迎えた。
ここで飛び出したのは、山岳賞ジャージを切るザッカンティとアドリアン・ギロネット(インタープロサイクリングアカデミー)。赤いジャージをまとうザッカンティが執念を見せて1位通過で5ポイントを獲得して、このステージでのジャージキープを確定させた。
ほどなくして、小林海(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー)や中根英登(NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネ)らを含む逃げが形成される。有力メンバーが入っており、決まれば逃げ切りもあるかと思われたが、集団に吸収され、またレースは振り出しに戻された。
[caption id="attachment_31083" align="alignnone" width="640"] 有力メンバーの逃げが決まったことで会場は沸いた![/caption]
[caption id="attachment_31084" align="alignnone" width="640"] 先頭を独走するディマに拍手と声援を送る人生のベテランの方々[/caption]
3周目にエミール・ディマ(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー)がアタックして単独走行を始めた。ディマに向けて、ぺア・クリスティアン・ミュンスターマン (チーム・ザワーランド・NRW・P/B・SKS・ジャーマニー)が追走を開始。ここに同調するものはなく、集団は落ち着いたままで、ディマ、ミュンスターマンと集団間のタイム差は開いていった。
[caption id="attachment_31085" align="alignnone" width="640"] 全力でディマを追うミュンスターマン。園児たちの歓声を受けて走る[/caption]
レースが動き始めたのは折り返しの5周目を過ぎた頃。ディフェンディングチャンピオンを擁し、このステージをホームタウンとするキナンサイクリングチームが先頭に立ち、ペースアップを始めた。ディマにミュンスターマンが合流し、二人旅となるが、一時は5分近くまで開いた差は6周目完了時までに2分台を切るところまで詰められた。
[caption id="attachment_31086" align="alignnone" width="640"] いなべ名物の“かかしコーナー”
今年も年齢・性別・人種・多様な“かかし”が並んだ!?[/caption]
7周目、いよいよ集団が2名との差を詰めて捕えようと迫る。ミュンスターマンが脱落し、ディマが単独で必死に逃げ切りをかけてペースアップを試みるも、最終周回に入ると吸収され、レースは大集団に戻った。
ここから抜け出したのはベンジャミン・ヒル(リュブリャナ・グスト・サンティック)とアダム・トーパリック(チーム・ザワーランド・NRW・P/B・SKS・ジャーマニー)。まだフレッシュな脚を残す集団が逃すまいという予想と裏腹に、2人は逃げ続けていく。20秒以上のタイム差を開けて、勝負所の“いなベルグ”に突入。迫る大集団を寄せつけぬまま、全力でフィニッシュに向かう2人。経験値で勝る一昨年のツール・ド・とちぎで個人総合優勝を飾ったヒルか? シクロクロス世界選手権U23で銀メダルを獲ったパワー溢れる若手のトーパリックか?
[caption id="attachment_31087" align="alignnone" width="640"] 登坂力・スプリント力・レース勘を見せつけたヒルの圧巻の勝利[/caption]
圧巻の登坂力と勝負勘でこのデットデッドヒートを制し、トップでフィニッシュに飛び込んだのはヒルだった。2位にタイム差なしのトーパリック。僅かに届かず、逃げ切りを許した集団のトップを獲ったのは、オールイス・アウラール(マトリックス・パワータグ)だった。
ヒルはスタート後に起きた落車に巻き込まれ、チームメイトのバイクと交換をしたものの、それが合わず、さらにスペアバイクに乗り換え、タイムロスを強いられていたという。だが、そこから少しずつ調子を取り戻し、自分のレースを走れるようにまでなったそうだ。ヒルはレース後に「チームメイトが一丸となり、自分をアシストし、良いポジションまで上げてくれた。だから、最後にアタックをすることができた。今日の勝利は本当にチームワークだった」と感謝、喜びを語った。
[caption id="attachment_31088" align="alignnone" width="640"] ヒルは個人総合首位にジャンプアップ、グリーンジャージを獲得した[/caption]
[caption id="attachment_31089" align="alignnone" width="640"] ザッカンティは堅調にジャージをキープ[/caption]
ポイント賞は4位でフィニッシュした窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)。チームとしては窪木のスプリントで勝負する作戦だったそうだが、集団をコントロールするチームが現れず、逃げ切りを許してしまったと悔しさをにじませる。窪田は「ポイント賞を獲得できてホッとしているが、勝ちたかった。日本人が結果を残さなければならないと思うし、このジャージを(最終ステージの)東京までキープしていきたい」と語った。
[caption id="attachment_31090" align="alignnone" width="640"] ポイント賞を獲得した窪木一茂[/caption]
[caption id="attachment_31091" align="alignnone" width="640"] 新人賞はトゥーベイ
グリーンジャージは逃したが、ホワイトジャージは守った[/caption]
【第3ステージ結果】
1位/ベンジャミン・ヒル(リュブリャナ・グスト・サンティック)3時間18分34秒
2位/アダム・トーパリック(チーム・ザワーランド・NRW・P/B・SKS・ジャーマニー)+0秒
3位/オールイス・アルベルト・アウラール(マトリックスパワータグ)+13秒
【個人総合成績】*第3ステージ終了時
1位/ベンジャミン・ヒル(リュブリャナ・グスト・サンティック)6時間3分10秒
2位/エイデン・トゥーベイ(チーム・ブリッジレーン)+1秒
3位/アダム・トーパリック(チーム・ザワーランド・NRW・P/B・SKS・ジャーマニー)+2秒
【ポイント賞】*第3ステージ終了時
1位/窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング) 35p
2位/エイデン・トゥーベイ(チーム・ブリッジレーン)33p
3位/アダム・トーパリック(チーム・ザワーランド・NRW・P/B・SKS・ジャーマニー)31p
【山岳賞】*第3ステージ終了時
1位/フィリッポ・ザッカンティ(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)16p
2位/アドリアン・ギロネット(インタープロサイクリングアカデミー)7p
3位/エミール・ディマ(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー)5p
【新人賞】*第3ステージ終了時
1位/エイデン・トゥーベイ(チーム・ブリッジレーン) 6時間3分11秒
2位/アダム・トーパリック(チーム・ザワーランド・NRW・P/B・SKSジャーマニー) +1秒
3位/オールイス・アウラール(マトリックスパワータグ) +14秒
【チーム総合】*第3ステージ終了時
1位/チーム・ブリッジレーン 18時間10分34秒
2位/リュブリャナ・グスト・サンティック +3秒
3位/チーム右京 +10秒(P-Navi編集部)