2019/12/20(金) 23:24
【今年行われたサイクルイベントをご紹介します!】
自転車の耐久レース『富士スプリングエンデューロ』が4月27日に、開催された。会場は日本初のF1開催コースであり、富士山が望める富士スピードウェイ。今年で2回目となる、まだフレッシュな大会だが、走りやすさや、来年に迫った東京五輪のロードレースのゴールや、タイムトライアルレースの会場になるということもあり、注目度が上がっている大会だ。
種目は2つ。チームでエントリーし、メンバーが交互にサーキットを走り、その距離を競う4時間と6時間のエンデューロと、単独で一定の距離(180km、150km、100km)を走る時間を競うアタック。エンデューロには、ファミリーのカテゴリーも設定され、小学生からエントリーでき、車種制限もナシ。ビギナー層を含め、参加しやすい大会であることも好評の一因となっている。
主催者は、計測タグの株式会社マトリックス。マトリックスが有するロードレースチーム『マトリックスパワータグ』の選手や監督がやってくることも大会の魅力。開催はゴールデンウィーク初日という絶好のタイミング。天気予報によれば、当日の午前中は、にわか雨が降るが、午後からは晴天になるとのこと。期待感が高く、駐車場オープンと同時に、参加者が続々と集結してきていた。出展ブースも続々オープンし、ブースめぐりを始める参加者の姿も目立つ。
[caption id="attachment_30992" align="alignnone" width="640"] アイウェアのフィッティングを行うブースも[/caption]
[caption id="attachment_30993" align="alignnone" width="640"] 適切なスタートオイルを塗り、マッサージしてくれる人気ブース[/caption]
[caption id="attachment_30994" align="alignnone" width="640"] パワーメーターを試用する参加者[/caption]
ビギナー層の参加が多いこともあり、選手たちが希望者を対象にロードレース講習会を開く。講習のトークのあとは、ともにコースを試走するという実践型の講習会には、今年も多くの参加者たちが参加していた。
[caption id="attachment_30995" align="alignnone" width="640"] 選手たちやゲストが講師を務める講習会[/caption]
[caption id="attachment_30996" align="alignnone" width="640"] 講習会では、選手たちが参加者とともにコースを試走、実践的に安全な走り方を教える[/caption]
この日、運営側の顔を曇らせる懸案事項が一点あった。昼頃に雷の危険の可能性を告げる雷注意報が出てしまったのだ。運営サイドは、参加者の安全を最大優先事項として『万が一、雷鳴を感知した際には、レース中でも競技を中止、その時点でのリザルトで表彰を行う』旨を決定、通達した。表彰台を狙う参加者たちは『万が一の突然のレース終了』に備え、走り方を考える必要が生まれてしまう。ただ、この要素が加わったことが、後々はプラスに転じることになる。
[caption id="attachment_30997" align="alignnone" width="640"] メカニックブースでは、参加者のバイクトラブルに対応[/caption]
[caption id="attachment_30998" align="alignnone" width="640"] スタートを待つ参加者とゲストライダーたち[/caption]
ポジティブな参加者が多く、スタート前の注意喚起では、安原大会実行委員長の「雷が鳴ったらすぐに中止して、一番に入ったヤツが優勝になるからな、心得て走れよー!」との掛け声に「おー!」と皆が笑顔で応じ、天候への不安は残るものの、明るいスタートとなった。6時間のカテゴリーと、アタック180、150が9時30分にスタートしたのち、3分おいて4時間とアタック100がスタート。しかし、全員を見送る頃、雨が降り出してしまった。
[caption id="attachment_30999" align="alignnone" width="640"] ユーモアたっぷりに注意事項を告げる安原実行委員長の言葉に笑いが漏れる。やわらかい雰囲気でレースがスタート[/caption]
[caption id="attachment_31000" align="alignnone" width="640"] 一斉にスタート。ゲストライダーを先頭にサーキットへ飛び出していく[/caption]
それぞれの先頭集団にはゲストライダーとして走る選手たちが入り、コース内を混沌とさせないよう、先頭のペースを引き上げる。『突然、レースが終わる可能性がある』ために、6時間や長距離のカテゴリーでも、『終盤での駆け引きよりも、序盤から前にいておかなくてはならない』『有力なメンバーをあとに残さず、早めに走らせる』という作戦もあり、序盤から本気態勢のライダーが多くなった。
[caption id="attachment_31001" align="alignnone" width="640"] ゲストライダーを交えた先頭集団。高速で周回をこなしていった[/caption]
[caption id="attachment_31002" align="alignnone" width="640"] 雨のスタートとなったが、集団は果敢にコーナーを回っていく[/caption]
天気予報が刻々と悪化し、当初は雷の心配だけだったのが、気温も下がり、冷たい雨がたたきつけるように降る事態に。この週は夏日もあったため、春夏の半袖とショーツで訪れた参加者も少なくなく、低温の雨に耐えられない可能性が出てきてしまったのだ。チームエンデューロでは、走っていないメンバーはその場で待機することになるため(この時間が楽しいのだが)、悪天候時は待機者への配慮が必要となる。
[caption id="attachment_31003" align="alignnone" width="640"] ライダーチェンジが行われるピット。にこやかな参加者が多いが、冷えを訴える参加者の姿も[/caption]
雨は降り止まず、気温が上がらない。これにより、低体温症で走行できなくなる参加者が出てきてしまう。運営側は急遽、ピットビルに暖房の効いた部屋を確保し、来場者に開放した。寒さを感じる方の移動や、体調不良を感じた方に、一旦休むことを勧めるアナウンスが流れた。
11時を回った頃、大会サイドがレースを2時間で打ち切る決断が降りた。「まだ走りたい」という参加者も多かったようだが、レースから脱落していく参加者も増えてきて、この先の参加者、来場者の安全を考えた上での苦渋の決断だった。
11時30分、33分に全カテゴリーのレースが終了となるアナウンスが流れ、表彰台を狙う参加者たちの中に緊張が走る。スタート前から、どこかのタイミングで、突如レースが終了される可能性が周知されており、全員がレース短縮のケースについて考えていたため、混乱は起こらず、粛々とレースはゴールに向かっていった。
厳しい気象状況もあり、集団は小さくなり、多くのカテゴリーで優勝者は決まっていたが、特に入賞者たちが同一集団にいるケースも多く、抜け出すのか、ゴールスプリントに持ち込むのか、表彰台に食い込むための策を練ることになった。残り十数分と告げられた参加者たちは、最後をどう走るのか、頭をフル回転させ、控えのメンバーとコミュニケーションを取り合うことになった。
[caption id="attachment_31004" align="alignnone" width="640"] フィニッシュする参加者たち。キッズライダーの姿も![/caption]
11時30分を回り、チェッカーフラッグが振り始められた。「お疲れさまでした!」の声を受けながら、やりきった表情でゴールしていく参加者たち。緊張感に包まれた、各カテゴリーの表彰台をめぐる戦いも、続々と決着が付いていくことになった。
レース終了を受け、表彰対象を確定し、表彰式の準備を進め、そのまま抽選会を開催することとなった。4時間前倒しされた賞典スケジュールへの対応に、スタッフたちが走り回る。開放されたピット内に来場者を誘導、準備ができたカテゴリーから随時、表彰式が開催された。
悪天候の中とはいえ、ほこらしげに表彰台に上がる参加者たち。走る順番が回って来ないまま決着したメンバーへのヤジが飛び、笑いが起きたりと、明るい表彰式となった。
[caption id="attachment_31005" align="alignnone" width="640"] 賞金ゲット!笑顔の入賞者たち[/caption]
[caption id="attachment_31006" align="alignnone" width="640"] 微笑ましいファミリーの部の表彰。みんながんばった![/caption]
抽選会には、完成車も3台登場。ピットはまだエネルギーを残した参加者たちの熱気に包まれた。
[caption id="attachment_31007" align="alignnone" width="640"] 当選番号が告げられるたびに歓声とため息が漏れる。笑顔の抽選会[/caption]
[caption id="attachment_31008" align="alignnone" width="640"] 完成車が当たりました!中には驚きでぼう然とする参加者も[/caption]
レース短縮は残念なことではあったが、屋外で開催されるレースイベントとして、天候の影響を受けるのは仕方がないこと。運営側の対応が迅速で、説明も明快であり、レースは短くなってしまったが、イベントへの満足度は低くなかったようだ。幸いにも、この時点で来年の『リベンジエントリー』を誓う声も多く聞かれ、笑顔の解散となった。
来年の開催後には、東京五輪の自転車競技が開催され、世界のビッグスターたちがこの地を走ることになる。来年のこの大会も、さらに盛り上がることだろう。(P-Navi編集部)