<地域密着型に進化し多くの観客を魅きつけた>日本を縦断する国際サイクルロードレース「第21回ツアー・オブ・ジャパン」(後編)

2018/06/19(火) 20:06

<地域密着型に進化し多くの観客を魅きつけた>日本を縦断する国際サイクルロードレース「第21回ツアー・オブ・ジャパン」(後編)

富士山の5合目まで駆け上がる第6ステージ

第6ステージはクイーンステージとも呼ばれる富士山ステージ。富士山の中でももっとも勾配が厳しい11.4kmで五合目に達する最大勾配22%のあざみラインを使用したヒルクライムステージで、例年このステージを制したものが、そのまま個人総合優勝を決めている。今年からは富士スピードウェイをスタートし、あざみラインを経て、富士山五合目にゴールする32.9kmのレースとなった。ロードレースの要素が増え、純粋なヒルクライム勝負ではない展開になるのではないかと期待された。

富士スピードウェイをスタートしたのち、3名の逃げができるが、リーダーを擁するキナンサイクリングチームがコントロールする集団があざみラインに入る前に吸収。

※「もっとも勾配が厳しいあざみラインで富士山に挑む」

優勝を狙うチームがしのぎを削る中、クリス・ハーパー(ベネロング・スイスウェルネス)が先行し、ホセ・ビセンテ・トリビオ(スペイン、マトリックスパワータグ)、マルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム)が追走、ラスト8kmでガルシアが単独で先頭に立ち、そのままフィニッシュラインまでハイペースで上り詰め、クイーンステージを制した。

※「クイーンステージで優勝したマルコスガルシア。この日の走りで個人総合優勝もほぼ確実なものにした。」

2位はハーマン・ペーンシュタイナー(バーレーン・メリダ)。28秒差まで追い詰めたが届かなかった。

個人総合のリーダーはマルコス・ガルシアへ。

※「リーダージャージを手に入れたマルコス・ガルシア」

第7ステージは、地獄のステージとも呼ばれ最も過酷なコース

地獄のステージとも呼ばれる静岡の伊豆で開催される第7ステージは120.8kmで3,828mを登る過酷なステージだ。修善寺駅前をパレードスタートしたあと、日本サイクルスポーツセンター内の12.2kmのサーキットを9周する。

リアルスタート後、アタック合戦となり、いまだ僅差でジャージを争い合う山岳賞候補の鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)、ポイント賞トップのグレガ・ボレ(バーレーン・メリダ)を含む6名の逃げ集団が形成された。

※「伊豆ステージの舞台は日本サイクルスポーツセンターの特設サーキット。獲得標高3,800m超えの難コースだ」

昨年20年ぶりに日本人選手が守り抜いた山岳賞だが、鈴木がこの日2回の山岳賞ポイントを獲得、最終ステージまでゴールすることが条件ではあるが、今年の山岳賞を手中に収めた。

※「この日着実にポイントを獲得、山岳賞を手中に収めた鈴木譲」

ポイント賞もグレガ・ボレが積極的に獲得、次点との差を広げる。

※「補給を受ける選手たち。この超タフなコースでも冷静にレースを展開しなけらなばならない」

ラスト3周、逃げ集団はボレ、新人賞ジャージを着るクリス・ハーパー(ベネロング・スイスウェルネス・サイクリング)、フェリックス・アレハンドロ・バロン・カスティージョ(チーム・イルミネート)の3名に絞られる。キナンがコントロールする集団がこれを追うが、差は詰まらず、決定的な動きもないまま、3名でのゴール勝負へ。

※「2勝目をあげたグレガ・ボレ」

スプリントに長けたボーレが二人を抜き去り、いなべに続いて2ステージ目の勝利をあげた。

※「レース後、放心状態でたたずむ。色の変わったジャージが激戦を語る。」

個人総合のリーダーはマルコス・ガルシア、ポイント賞は差をさらに広げたグレガ・ボーレ、このステージが最後の設定となる山岳賞は鈴木譲が奪取した。新人賞はクリス・ハーパーが守った。

いよいよ最終日、多くの観客が詰めかけて華やかな雰囲気

日比谷公園をスタートし、大井埠頭の周回コースをで競われる最終ステージ東京。前日までにすでに各賞ジャージは確定しており、緊張感というよりは、オールフラットの112.7kmのレースは、高速で展開され、ゴール勝負では各チームのエーススプリンターたちが豪快なスプリントを見せる華やかなステージになり、日曜の開催で、アクセスがよいことから、例年多くの観客が沿道に詰めかけ、観戦を楽しむ。

スタート前の日比谷公園はファンサービスの場にもなっており、各チームは通常のステージより早く会場入りし、ファンとの記念撮影やサイン等に応じる。

※「出走サインも貴重な撮影のチャンス。多くのカメラが待ち受ける」>家族連れの姿も多く、レース前とは思えない和やかな雰囲気に

※「ファンの求めに応じてサインをする選手たち。ファンにとっては一年に一度の貴重な機会だ」

※「ハチマキをしてやる気十分なイルミネートチーム。アメリカンなノリがこの日の勝利を引き寄せたか」

スタートの時が近づくと、選手たちの空気も変わっていく。日比谷公園前からいよいよパレードがスタート。

※「最終ステージにリーダージャージを着用する4名。あとは完走さえすれば各賞が確定する」

※「集団は日比谷公園から大井埠頭へ」

3名が抜け出し、逃げ集団を編成。10万人を超える大観衆の前を逃げ集団と大きなメイン集団が走り抜ける。

※「大井埠頭コースに集まった観客の声援を受けて走る選手たち」

ラスト3周を前にレースは動き出す。ペースアップした集団は3名を吸収、残り2周を迎える集団の中では、ゴールに向けて激しい位置取り合戦が始まった。大集団のまま迎えたゴール勝負。最後に見せ場を作りたいスプリンターたちの死闘を制したのはマルティン・ラース(チームイルミネイト)。

※「迫力のスプリント合戦を制したのはマルティン・ラース。雄叫びをあげてフィニッシュラインを越えた」

大歓声の中、ガッツポーズでフィニッシュした。

個人総合リーダーであるマルコス・ガルシアは集団内で笑顔を見せながらゴール。

※「マルコスの個人総合優勝が決まり、集団内で祝福し合うチームメイトたち。キナンは団体総合優勝も獲得した」

鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)も無事にフィニッシュし、2年連続日本人による山岳賞リーダーを獲得した。

※「最後までリーダージャージを守った4名。昨年20年ぶりに日本人が着た山岳賞ジャージを鈴木譲が守った。」

チームの総合優勝はガルシアが所属するキナンサイクリングチームが獲得した。

※「プレゼンターに登場した小池百合子東京都知事」

表彰式には小池百合子東京都知事もプレゼンターとして登場した。

東京ステージの観戦者数は113,000人(主催者発表)。天候にも恵まれ、スポーツ観戦への関心の高まりもあり、多くの来場者を迎えることになったのだろう。選手たちが全力で臨む各ステージの展開も、日々リーダージャージが入れ替わる展開も目が離せないものであったが、地域色を打ち出したそれぞれのステージで、自分たちのスタイルで観戦を楽しむ方々が増えたのは近年の大きな特徴だと感じる。冠スポンサーのNTNが企画した各ステージの遊びコーナーには多くの子供達が足を運び、体験を楽しんだ。本気の国際レースではあるが、家族で楽しめる心遣いがされたことも、各会場のにぎわいを作る要素となった。選手の息遣いが聞こえるほど間近で迫力あるレースを会場で観て、声援を送り、その場でしか感じられない感動を得る自転車レースの観戦は、日本でも、今後もっとメジャーな楽しみになっていくかもしれない。

 

また来年、TOJは自転車月間である5月の下旬に開催が予定されている。来年も見応えのあるレースを期待すると同時に、ぜひ次回はお近くのレース会場に足を運び、観戦を楽しんでみてはいかがだろうか。(P-Navi編集部)

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