2018/06/12(火) 19:24
5月20日から27日まで、今年も自転車ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン(TOJ)」が開催された。今回で21回目の開催となるが、前身となる大会「国際サイクルロードレース」から数えれば36年もの歴史を刻んできた伝統ある大会だ。今回はその模様を3回に分けてレポートする。
ロードレースには、1日で全てが終わる「ワンデイレース」と、数日間にわたり開催される「ステージレース」があり、TOJは大阪(堺)、京都(京田辺)、三重(いなべ)、岐阜(美濃)、長野(南信州[飯田])、静岡(富士山、伊豆)、東京と8つの開催地でレースが開催されるステージレースだ。ステージレースは、ステージと呼ばれるレース毎のステージ優勝と同時に、最高の栄誉となる総合優勝、各レース中に設定された山岳、スプリントポイントを多く獲得した選手に贈られる山岳賞、ポイント賞、若手選手の中で総合成績がもっともよいもの(リーダー)に贈られる新人賞が設定され、各ステージに、その時点でその賞のトップ成績であることを示すリーダージャージを着用して出走する。このジャージを最終日まで守ることも大切な要素となる。
TOJはUCI(世界自転車競技連合)認定の国際ステージレースであり、カテゴリー1の上位レース。今年は、16チーム、94名の出走となった。UCI登録チームの中で、ツールドフランスなど最高峰のレースを中心に転戦する最高位のワールドチームカテゴリーから1、プロコンチネンタルチームから2、コンチネンタルチームから12、ナショナルチームから1チームが参戦するハイレベルな大会となった。
ワールドチーム
・バーレーン・メリダ(バーレーン)
プロフェッショナルコンチネンタルチーム
・イスラエルサイクリングアカデミー(イスラエル)
・NIPPO・ヴィーニファンティーニ・エウロパオヴィーニ(イタリア)
コンチネンタルチーム
・チーム右京(日本)
・キナンサイクリングチーム(日本)
・HKSIプロ・サイクリング・チーム(香港)
・ベネロング・スイスウェルネス・サイクリング・チーム(オーストラリア)
・宇都宮ブリッツェン(日本)
・LXサイクリングチーム(韓国)
・マトリックスパワータグ(日本)
・愛三工業レーシングチーム(日本)
・JLTコンドール(イギリス)
・シマノレーシングチーム(日本)
・チームブリヂストンサイクリング(日本)
・チーム・イルミネート(アメリカ)
ナショナルチーム
・日本ナショナルチーム
今年のTOJは20日日曜日から始まった。開幕に先立ち、堺市内では恒例の午前中に出場選手による「堺国際クリテリウム」が開催された。
※「TOJ出場選手による小周回レース」
優勝はブリヂストンサイクリングの原田選手。日本人選手の活躍に、大きな興奮に包まれながらの開幕となった。
午後からTOJとしてのレースが始まった。第一ステージは2.6kmの平坦の短距離のタイムトライアル。
※「選手はスタート台からひとりひとりスタートしていく」
「選手はスタート台からひとりひとりスタートしていく」>例年タイムトライアルは海外チームのスペシャリストが制することが多い。この大会は後半に厳しい山岳ステージが設定され、上りに長けた選手が総合優勝をもぎ取るのだが、それでもここで生じるタイム差は後々まで響くことになり、総合成績を狙う選手は慎重にリザルトを狙っていく必要がある。また今年の選手たちの仕上がりや脚を見るという要素もあり、一人一人順番にスタート台からスタートしていく形式のレースは、今年も独特な緊張感に包まれた。この中で3分12秒00というトップタイムを叩き出した英国のJLTコンドールのイアン・ビビーが優勝。
※「トップタイムを叩き出したイアン・ビビー」
リーダージャージ、ポイント賞ジャージを獲得した。次点には昨年の大会の第2第3ステージを制したマルコ・カノラ(NIPPOヴィーニファンティーニ)。3位に入ったオリバー・ウッド(JLTコンドール)。ヤングライダーのトップとして、新人賞ジャージを獲得した。今年も力のある選手が揃ったようだ。
第2ステージは京都、学術都市でもある京田辺市の特設サーキットで競われる105km。自然豊かなエリアと、近代的に整備された市街地をめぐるコースだ。このステージから上りが始まり、獲得標高は1,836m。このステージから山岳賞の設定が始まり、本格的なロードレースがスタートする。上りだけでなく、テクニカルな下りコーナーも連発し、レースの展開によっては、大きなタイム差が付くことになり、各チームは入念なミーティングを経て臨んでくる。
※「スタート前にはチアリーディングや地元の子供達のパフォーマンスが展開された」
美しく晴れ、欧州勢の中には蒸し暑さが辛いと訴える選手も出るほどの暑さとなった。レーススタート後まもなく4名が飛び出し、逃げ集団が形成され、メイン集団とは4分以上の差が開く。この4名の中で、スプリントポイント、山岳賞ポイントの獲得を重ねていった。
※「チームのサポートカーにはスペアバイクが積まれている」
最終周回、残り3kmで集団が逃げ集団を吸収、チーム間の牽制ムードも漂う大集団は、コーナーが続くエリアに差し掛かる。隙をついた雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)が単独で飛び出し、そのまま単独で最終コーナーへ。大いに沸く会場。発射された各チームのエースがスプリントで迫る中、逃げ切った雨澤はガッツポーズでフィニッシュラインに飛び込んだ。
※ 「余裕を残し、両手をあげてフィニッシュした雨澤選手」
レベルが上がったTOJでの日本人選手の優勝は稀で、国内チームからの勝者としては4年ぶり。今年23歳になった雨澤にとっては初のUCIレースの優勝。集団の隙をついて飛び出したレース勘も、トップスピードで逃げ切った脚もすばらしく、チームのサポーター以外からも惜しみない拍手が贈られた。
個人総合リーダーはグレガ・ボーレ(バーレーン・メリダ)、ポイント賞は雨澤毅明、山岳賞はまだ大学生の草場啓吾(日本ナショナルチーム)が獲得。新人賞はオリバー・ウッド(JLTコンドール)が守った。若手日本人選手の活躍が目立ち、東京五輪の開催も迫る日本にとっても明るい話題となった。
この日の観客動員数は53,000人(主催者発表)。
※「平日にも関わらず多くの観客が集まった」
ゴールラインは多くの観客が押し寄せ、平日とは思えない盛り上がりを見せた。
(中編に続く・・・)
https://perfectanavi.com/cycling/13556/(P-Navi編集部)