初開催のサイクリングイベント「ツール・ド・大那」

2025/01/02(木) 10:00

11月3日に初開催されたサイクリングイベント「ツール・ド・大那」を走ってきた。「大那」とは、栃木県大田原市の「大」、那珂川・那須・那須塩原の「那」を組み合わせ、この地域全体を示すものだという。那須や大田原市は自転車ロード競技の全日本選手権の開催実績もあり、いずれも多くの自転車愛好家が走っている地域。初開催ではあるけれど、那須の「那須高原ロングライド」や大田原の「丘ポタ」などの満足度の高さで知られている人気イベントのスタッフが企画運営し開催すると聞いて、期待値は高かった。

大田原市、那珂川・那須・那須塩原地域の「大那」を楽しむ「ツール・ド・大那」

メインのDAINA75コースは、距離が74.3km、獲得標高が813m。丘陵と田園、那珂川を楽しむ走りごたえのあるプロフィールになっているようだ。他にも54、50、40kmの設定があり、筆者は一番ハードルの低い40kmコースを走ることにした。前身となる「丘ポタ」は心づくしのグルメで知られており、大那がどんな形で企画されているのか、とても楽しみだった。
40kmのコースは、獲得標高が420mあまり。数カ所キツめの登りがあるが、そこをクリアすれば、小学生でも完走できるコースだという。

スタート地点となった大田原市内の「ふれあいの丘キャンプ場」に集まった参加者は、長距離コースから順に出発して行く。40kmコースは最後のスタートだった。ファミリー参加の皆さんと、コースへと繰り出していくことになった。今回は、子ども向けe-bikeで走る子どもたちも含まれており、グループ内でもペースに大きな差が出そうだ。スタート直後に少々厳しい上りが待っていたが、長くはないので、落ち着いて上れば大丈夫。e-bikeのお子さんはもちろん、ノーマルバイクのお子さんたちも難なくクリアしていた。この坂を越えると、わずか1.3km地点「威徳院七福神」に最初のエイドが設定されていた。あまりに早くて拍子抜けしたが、当然大歓迎! テーブルの上には大きな梨が用意されており、見るからにみずみずしく、期待が高まる。子どもたちは、自転車を急いで停めると、梨に向かって走って行き、梨にかぶりついていた。「おいしい!!」「甘い!」子どもだけでなく、大人からも思わず声があがる。

大きな梨をほおばるお子さん。この日はママのトレーラーに乗って参加していた

筆者も頬張ると、大ぶりの梨は、おどろくほどジューシーで甘かった。この近くには梨園が点在しており、この地域の梨園で生産されている梨とのこと。梨は夏のイメージであったが、11月までこんなに甘く、果汁に満ちた大きな梨が採れるのかと驚いた。豊かな土地なのだろう。

クルミや甘納豆にミルクの糖衣をかけたお菓子もいただき、ライドに再出発した。 気持ちのいい田園風景の中を走る。遠方にはエメラルドグリーンの山々が見え、見晴らしがよく、景色の広がりと、空の広さに、心が晴れ晴れする。
ルートは交通量の少ないルートを中心に組まれているようで、時には畑の間の道も抜け、変化があっておもしろい。
曲がり角には、立哨の方が立っていて、にこやかに誘導してくれる。昨年まで地域に拠点を置いて活動していたチームの黄色いジャージをまとい、プロフェッショナルに誘導するスタッフたちに地域のプライドが垣間見えて、とてもかっこよかった。
市街地を抜け、田園風景の中を抜け、道の駅「与一の里」でストップ。ここでは、温かいスープと、冷やし焼きイモが提供された。イモは冷たくてもしっかり甘い。 スープに入れてもおいしいですよと言われ、トライしている方々もいた。そんなやりとりができるのも楽しい。

巻川サイクリングロードを走り、田園の中を走る。一行は美しい景観を楽しみながら、順調にコースをこなして行った。

橋を渡る参加者たち

眺めの良い橋を渡ると、壁のようにそそりたつ坂道が現れた。おそらく、ここが今日イチの上りだろう。e-bikeに乗る子供たちは羽が生えたように駆け上がって行き、あっという間に見えなくなった。ノーマルバイク勢は、緑の中をえっちらおっちら上がっていく。少しカーブを描きながら一気に上がり、そのままきつめの上りが続いた。
どうにか上っていくと、美しい芝生が広がっており、城のような建物がそびえ立つ施設に到着した。「大田原市ふれあいの丘シャトー・エスポワール」という市の施設。この前のスペースにエイドが設営されており、なんとパフェがふるまわれていた。サイクリングイベントのエイドでパフェとは、めずらしい! 見た目もメルヘンなパフェを手にして、大人も子どもも皆、またまたテンションアップ。

エイドステーションでパフェがふるまわれた!

最下層にプリン、スポンジケーキ、クリーム、クッキー、ウエハースが組み合わされており、いろいろな味が楽しめる。芝生の上で大切そうにパフェを抱え、ほおばる子どもたちの姿にほっこりした。
この幸福感満点のパフェに、さらにワントーン気持ちを高揚させて、再スタートした。
少し長い下りに差し掛かる。ここからはアップダウンのあるダイナミックな道が展開するが、勾配はそれほどキツくないので、テンポよく走って行けば、気持ちよく走れるだろう。

田園の中を抜ける

アップダウンを抜けると、統一したブラウンの看板が掲げられた日本家屋が並ぶ風情ある街並みに突入した。色づき始めた木々が並ぶ大天狗と大黒様が祀られる「光丸山」神社を眺め、再び川を渡って、最後のエイドへ入った。

秋の風情ある神社に立ち寄る

最後のエイドは「なかがわ水遊園」。ここでは、長テーブルの上に、たくさんのふるまいが並んでおり、少々疲れていた皆の目が輝いた。
列に並び、ブッフェのように、ポンデケージョ(チーズのもちもちパン)、おみくじ煎餅、カムカムのグミ、アイシングクッキー、イノシシの肉のジャーキー、まんじゅうをいただいていく。んあと豪華なラインナップ。ひとひとつ、味がよかったのだが、中でも、中がモチモチのポンデケージョが驚くほどおいしくて「もうひとつ食べたい」と言う子どもたちが続出した。

たくさんのフードを受け取り、皆大満足。中でもポンデケージョが最高だった

あまりにも味がよく、不思議に思って聞いてみたところ「展示する魚が本来生息する南米地域をイメージしたレストランがあり、そこで作って提供している本場仕込みのポンデケージョ」とのこと。納得だ。今回のエイドは、どれもクオリティーが高すぎて、圧倒された。
ここで少し休憩して、最終パートへ。距離の長いコースの参加者は、ここから那珂川町をめぐったり、ヒルクライムに臨んだりと地域を広範囲で回遊するそうだ。
我々は、ゴールを目指すのみ。少し名残惜しくも、最後はほとんど登坂もなく、気持ちよく走って、フィニッシュ!
ゴールでは、うなぎが乗ったおにぎり「うなぎり」と「豚汁」がふるまわれた。

ゴールで振る舞われた「うなぎり」
おいしすぎる豚汁を味わうお子さん。40kmを完走した

「うなぎり」は、コメもタレも、うなぎもおいしくて、皆ペロリと食べていた。そして、驚くべきは「豚汁」。味わって、どよめきが漏れる。これまで、味わったことのない深い味。作られた男性に、いったいどこからこの味が来るのかと尋ねると、首を傾げ「大量に入れたこの地域の野菜から来るものではないか」との答えだった。朝から参加者のもてなしのために、たくさんの野菜を入れ、仕込んでくださったことにも感動したが、こんなにおいしい豚汁を飲んだことがない。大満足のゴールエイドだった。

最後の出し物である「抽選会」は、参加者全員に賞品が当たるという豪華すぎる設定。参加者はそれぞれの戦利品を手に、皆、満足な笑顔でイベントを終えたのだった。
「ツール・ド・大那」は、地元の資金・サポートのみで工夫を凝らして成立させたイベントであり、正直、こんなにクオリティーの高いイベントになっているとは思っていなかった。地域の熱意には感銘を受ける。
筆者はショートコースを走ったのみであるが、ロングコースになれば、もっと走りごたえもあり、生クリーム大福やあん入りシュー、シフォンケーキなど、さらに多様なエイドを楽しめたようだ。

エイドでふるまわれたあん入りシュー。見た目もかわいく大好評だったそうだ

運営も気持ちよく、コースも爽快で、心のこもったエイドは、参加者をハッピーにしてくれる。これから2回、3回と続いていけば、きっと人気イベントになっていくことだろう。
来年以降も、また走りたい!

画像:ツール・ド・大那実行委員会(©M-WAVE写真事務所)、編集部

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