2024/03/08(金) 18:23
国内ロードレースのシリーズ戦「JBCFサイクルロードシリーズ」の2024シーズンが2月24日、開幕した。
最上位リーグJプロツアーは、今季から2つの新生チームと、JCLリーグから移籍したチームが合流し、参加チームを22(2月現在)に一気に増やし、国内唯一のプロリーグとなり、レースを開催する。
開幕戦となったのは、国内唯一の国立体育大学がある鹿児島県鹿屋市と肝付町にまたがるコースで開催された、第2回JBCF鹿屋・肝付ロードレースだ。昨シーズンも、このレースが開幕戦として開催されている。
レースは、大隅広域公園をスタート・フィニッシュ地点とし、鹿屋市と肝付町にまたがる、1周6.5kmのコースを使用する。初年度であった昨年とは逆方向にコースを使用し、前半は緩やかな下り基調、後半は丘陵地帯のアップダウンが連続するレイアウトとなり、このコースを20周する130kmの設定で競われる。厳しい上りや細かなアップダウンなどは含まれ
ないが、周回を重ねるごとに、選手たちの体力は奪われていくだろう。シーズン初戦であることに加えて、リーグ初参戦のチームも多く、それぞれのチームが、どう動くか、探り合いになることが予想された。
前半はゆるやかな下り基調となり、仕掛けどころは後半に集中している(画像はレース公式資料より)
春を思わせる気温が続いていた鹿屋市だが、この日、会場は最高気温でも14度前後となり、一転して冬の開幕戦となった。昨年は、終盤に大集団となり、スプリント合戦を岡本隼(愛三工業レーシングチーム)が制している。周回方向が変わり、参戦チームが増え、スプリンターの数も増えた今年、どのような展開が待っているだろうか。
最前列にはホストチームのシエルブルー鹿屋が並ぶ
全国から集結した選手が、真新しいジャージでスタートラインに集まった。地元チームであるシエルブルー鹿屋のメンバーが最前列に並ぶ。その後ろには、前年度チームランキング、個人ランキング共に首位となったシマノレーシングが並ぶ。いよいよ開幕戦が、スタートする。
レースが始まった。パレード走行をする選手
リアルスタートが切られると、各チームから、アタックの応酬が始まった。前方にグループが形成されても、ほどなく吸収され、その後も逃げを打つべく飛び出しがかかるが、決定的な動きには結びつかない。レースは活性化された状態のまま推移した。
激しいアタック合戦が続く
逃げのスペシャリスト阿部嵩之(ヴェロリアン松山)らも仕掛けるが、決定的な動きにはならなかった
この状態は、中盤まで続き、多くの選手に疲労が見えてきた頃、先行した10名が集団を形成することになった。
この中には、昨シーズンの覇者である中井唯晶(シマノレーシング)、一昨年の優勝者である小林海、シクロクロスで無双ぶりを発揮した織田聖、今季から日本で走るアグロティス・アレクサンドロス(マトリックスパワータグ)や、スプリントのある河野翔輝(チームブリヂストンサイクリング)らが含まれていた。ベテランと若手が含まれており、警戒すべき顔ぶれでもあった。
10名の先頭集団が形成された
後方のメイン集団は、新生チームであるチームサイクラーズスネルらが中心となってコントロールし、差を1分30秒程度に維持し、周回を重ねていく。
メイン集団はサイクラーズスネルが先頭に立ち、コントロール
先頭集団から、2名が遅れて8名となり、終盤へ。
8名となった集団が先行
ラスト4周、ゴールを見据えた動きが生まれた。キナンレーシングチームやシマノレーシングらが先頭に立ち、メイン集団がペースアップを始める。差は34秒まで迫った。先頭集団から、吸収を嫌った小林が飛び出す。これが契機となり、先頭集団はバラバラに崩壊、メイン集団に吸収されていく。
単独で走行を続ける小林に、メイン集団から草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)が追いつき、2名が先行。
そして、ラスト2周を迎えた。
先行した草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)、小林海(マトリックスパワータグ)に集団が迫る
だが、同じ意思を持ち、強烈に追い上げる集団から、タイム差を開くことはできず、最終周回を前に吸収。ここでひとつの大きな集団となり、最終周回に入る。勝負は、今年も集団スプリントに持ち込まれる可能性が高まった。
ゴールに向けた位置取り合戦が始まる
それぞれが抱えるスプリンターを勝たせるため、各チームの激しい位置取り争いが始まった。上りに差し掛かったところで、山本哲央(チームブリヂストンサイクリング)がアタック。キレのある走りでゴールを目指すが、全力で追いかける集団には敵わず、吸収される。
ゴール勝負に向け、スピードが最高潮に達した集団は長く伸びる。スプリンターを引き上げるシマノレーシングや愛三工業レーシングチームが少し前方に抜け出し、フィニッシュを目指す。
アシストから放たれたスプリンターたちがスプリントに臨む
ラスト200m。ディフェンディングチャンピオンの岡本が飛び出し、各チームのスプリンターたちもスプリントに入る。だが、岡本はそのままぐんぐん加速すると、他の選手を寄せ付けぬまま、連覇を示す2本指を立て、悠々とフィニッシュラインを越えた。
誰も寄せ付けないすばらしいスプリントで勝利、大会連覇を決めた岡本隼(愛三工業レーシングチーム)
2位には、今季からヴィクトワール広島に移籍した小野寺玲が、3位には注目の若手、宇田川塁(群馬グリフィンレーシングチーム)が入った。
表彰台に立つ、1位の岡本、2位の小野寺玲(ヴィクトワール広島)、3位の宇田川塁(群馬グリフィンレーシングチーム)
岡本は「チームとしても積極的な走りをし、チームメイトが頑張ってくれた結果、自分は脚を(脚力を)貯め、最後のスプリントまで残すことができた。去年と同じように、ここに立つことができ、とても嬉しい」と喜びを語った。「明日もがんばります」と、はにかんだ笑顔でインタビューを締めくくった。
首位の証であるプロリーダージャージは岡本、U23首位のネクストリーダージャージは宇田川が手に入れた
2日目は同じ鹿児島県内でクリテリウム(小周回)レースが開催。開幕戦のレースでは、描いた通りの勝利を飾った愛三工業レーシングチームだが、今年も鹿児島2連勝を決めるのだろうか。あるいは、まったく違う展開が待っているのだろうか。注目度はさらに高まっていった。
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【結果】
Jプロツアー2024開幕戦
鹿屋・肝付ロードレース130km
1位/岡本隼(愛三工業レーシングチーム)2時間59分30秒
2位/小野寺玲(ヴィクトワール広島)+1秒
3位/宇田川塁(群馬グリフィンレーシングチーム)+1秒
4位/石原悠希(シマノレーシング)+1秒
5位/フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)+2秒
Jプロツアーリーダー
岡本隼(愛三工業レーシングチーム)
U23リーダー
宇田川塁(群馬グリフィンレーシングチーム)
中間スプリント賞
4周回完了時/孫崎大樹(キナンレーシングチーム)
14周回完了時/畑中勇介(キナンレーシングチーム)
敢闘賞
小林海(マトリックスパワータグ)
写真:JBCF(一般社団法人全日本実業団自転車競技連盟)(P-Navi編集部)