ツアー・オブ・ジャパン2022、開幕!

2022/05/25(水) 16:08

ツアー・オブ・ジャパン2022、開幕!

日本を縦断するステージレース「三菱地所 presents ツアー・オブ・ジャパン(以降、TOJ)2022」が5月19日に開幕した。UCI(世界自転車競技連合)認定の国際レースであり、通常は、大阪、京都、三重、岐阜、信州飯田、富士山、相模原、東京の8ステージで構成される歴史ある大会で、今年24回目の開催となる。


地域の方々に迎えられ、開幕したツアー・オブ・ジャパン信州飯田ステージ

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、昨年は国内チームのみが参戦。さらに、ステージを3つに減らし、無観客で開催された。今年は、エントリーは国内チーム中心だが、ステージは後半部分の4ステージに増え、観客を迎え入れ、開催する形になった。
出場チームは16チーム。5名の日本人が所属し、日本企業をスポンサーとするEFエデュケーション・NIPPO デヴェロップメントチーム(スイスを拠点とするアメリカ国籍チーム)以外は、すべて日本に籍を置くチームだ。国内チームは、UCI登録チーム9つと、クラブチーム3つ、大学チーム2つと、日本ナショナルチームがエントリー。
今大会で第1ステージとなる信州飯田のコースは、平坦がなく、常に厳しいアップダウンを繰り返すハードさで知られている。例年は、大阪の個人タイムトライアルから始まり、3ステージを経てたどり着く難関コースが、冒頭に設定されたことで、どんな変化が生じるのか、各チームはどう走るのか、注目された。

朝10時前、選手たちがスタートラインに集まった。この飯田ステージは2019年以来、3年ぶりの開催となる。例年は飯田駅前からのパレード走行があったのだが、今年は、パレードを割愛し、周回コースから300mほど脇道を入った場所にスタートゴールが設定され、周回を回るシンプルな構成となった。


シンプルに周回する形になった信州飯田ステージ


山岳賞に向かう厳しい上り以外もアップダウンが続く

スタート後は、若干の緩やかな下り基調エリアがあるものの、一気に山岳賞ポイントが設定された最高標高地点まで上る。このあとは「TOJコーナー」と名付けられた鋭角コーナーまで下り、天竜川沿いを南下し、また山岳賞への上りへと向かう。今年はスタート/ゴールから周回に入り、1周12.2kmのコースを10周回する119.6km(走行総距離はニュートラル区間3kmを加えた距離となる)の設定で競われる。アップダウンやコーナーなど、気が抜ける部分がなく、TOJの中でも、もっとも厳しいコースと、選手に恐れられてきたコースだ。今年は全員がフレッシュな状態で臨むことになる。
TOJでは各ステージにホームチームを設定しており、信州飯田はチーム右京相模原のホームとなる。このホームチームはしっかり飯田に根付いており、多くの市民がスタート脇で、チーム右京のフラッグを振って応援していた。


選手たちに参加チームの国籍の旗を振り、応援する地元の園児たち

スタートラインに79名の選手が並び、午前10時にスタート。ニュートラル区間を終え、リアルスタートが切られると、序盤からアタックがかわされる。早々に山本元喜(キナンレーシングチーム)やレイモンド・クレダー(チーム右京)らの有力選手が含まれる5名の逃げが形成されたが、マトリックスパワータグがコントロールするメイン集団はこれを許さず、ペースアップし、この5名を飲み込んでしまった。厳しいコースにも関わらず、レースはハイペースの展開に持ち込まれ、第1ステージの序盤から多くの選手が苦しむ形に。


スタートを待つ選手。今年は周回から細い道を入った部分にスタートゴールが設定される形になった

4周回目、世界最高峰のレース、ジロ・デ・イタリアにも出場経験のある石橋学(チーム右京)、シクロクロスでも日本のトップを行く織田聖(EFエデュケーション・NIPPO デヴェロップメントチーム)、近年好調を見せる⻄尾勇⼈(那須ブラーゼン)、2018年度の全日本チャンピオン山本元喜(キナンレーシングチーム)による4名の逃げ集団が形成された。メイン集団は、この逃げを許し、最大1分のタイム差を開いた。レースはいったん落ち着きを見せる。


険しい上りの上にある山岳賞に向かう集団。路面には選手への応援メッセージがチョークで描きこまれている


鋭角コーナーの名物「TOJコーナー」

6周回目、4名は吸収されたが、本場欧州のレースに挑んでいる日本注目の若手、石上優大(EFエデュケーション・NIPPO デヴェロップメントチーム)と、重要なところでいつも動いてくる実力者・小石祐馬(チーム右京)の2名がアタック、先行した。先頭を走るホームチーム、チーム右京の小石の快走と、若手の健闘に会場は沸いた。

消耗された選手たちは徐々に集団からこぼれ落ち、メイン集団は前を追う選手と、食らいつけない選手との間で分断され、小さくなっていった。8周目になると、メイン集団は有力選手のみに削ぎ落とされ、スピードも上り、一列棒状の状況に。先行していた2名も吸収された。
先頭集団は7名に絞り込まれ、事実上、この中から優勝者が出るという展開に。互いの出方を見ながら、緊張感ただよう走行が続く。この中には、チーム右京から、ベンジャミン・ダイボールと、ネイサン・アール、キナンレーシングチームからは、トマ・ルバと山本大喜、宇都宮ブリッツェンからは、昨年のTOJで個人総合優勝を遂げた増田成幸と宮崎泰史と2名ずつが入り、メイン集団をコントロールしてきたマトリックスパワータグからは小林海が送り込まれていた。

ここでダイボールがアタックし、レースは大きく動いた。ダイボールは、2019年まで、UCI登録の中で最高カテゴリーに当たるワールドチームに所属しており、チーム右京のメンバーとして参戦するのは、このレースが初となる。ダイボールはそのまま単独で先行し、他の選手と32秒のタイムギャップをキープしたまま、最終周回に突入。鮮烈に存在感を印象付けた。


独走するベンジャミン・ダイボール(チーム右京)

集団はダイボールを追うペースアップで一気にバラバラになり、それぞれの力で前を追う形になる。2番手にはチームメイトのアールが付け、この2名を増田、ルバが追うが、差を詰めることができない。
ラスト5kmに差し掛かり、チーム右京の2名の先行フィニッシュは、ほぼ確実な形となった。


両手を上げてフィニッシュするネイサン・アール(チーム右京)

1人で追い上げたアールが、独走を続ける先頭のダイボールに迫り、ラスト150mで追いついた。アールはペースを落とすことなく、ダイボールをかわして、そのまま両手を上げてフィニッシュラインを通過し、第1ステージの勝者となった。ダイボールはすぐ後にフィニッシュし、チーム右京の1-2フィニッシュを確定させた。次着は、増田とルバのスプリント勝負となり、僅差で競り勝った増田が3位に入った。


信州飯田ステージを優勝したネイサン・アールは、個人総合首位になり、リーダージャージを獲得

ステージ優勝を決めたネイサン・アールが個人総合首位のグリーンジャージを獲得。このステージにはポイント賞の設定がなく、フィニッシュポイントのみとなるため、ポイント賞のブルージャージもネイサン・アールの手に渡ることになった。
山岳賞は、3名が同ポイントで首位に並んだが、3名の着順では8位でフィニッシュした山崎が最高位となるため、山崎の手に山岳賞ジャージが渡った。宮崎はU23選手の中でも最高位となり、新人賞のホワイトジャージも手に入れている。


平日にも関わらず、表彰式には多くの観客が集まった


それぞれ2枚ずつジャージを獲得したネイサン・アールと宮崎泰史(宇都宮ブリッツェン)

ネイサン・アールは、表彰台で「日本でこのようなレースが出来てとても嬉しい」と喜びを語った。チーム右京としては、個人総合の1位と2位に選手を置いた形となり、非常に幸先のよいスタートとなった。TOJの個人総合優勝は、例年富士山ステージで決まっており、総合優勝を狙うチームにとっては、第2ステージはこの上なく重要なステージとなる。アールは「ベンジャミン・ダイボールと私は総合争いで良いポジションにおり、2人とも強いクライマーなので明日はどちらが勝ってもおかしくないと思う」と、富士山ステージへの自信をのぞかせた。
今年のTOJは、総合優勝が決まると言っても過言ではない富士山ステージを2日目に迎える。

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【結果】ツアー・オブ・ジャパン2022 第1ステージ=信州飯田
1位/ネイサン・アール(AUS)チーム右京相模原 3時間04分39秒
2位/ベンジャミン・ダイボール(AUS)チーム右京相模原 +3秒
3位/増田成幸(JPN)宇都宮ブリッツェン +31秒
4位/トマ・ルバ(FRA)キナンレーシングチーム
5位/山本大喜(JPN)キナンレーシングチーム +1分18秒

【個人総合首位】
ネイサン・アール (AUS)チーム右京相模原

【ポイント賞首位】
ネイサン・アール (AUS)チーム右京相模原

【山岳賞首位】
宮崎泰史 (JPN)宇都宮ブリッツェン

【新人賞首位】
宮崎泰史 (JPN)宇都宮ブリッツェン

【チーム総合】
1位/チーム右京

画像提供:ツアー・オブ・ジャパン組織委員会(P-Navi編集部)

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