2020/03/22(日) 16:48
3月22日に茨城県石岡市で予定されていたサイクリングイベント『獅子頭ライド』。
第1回大会でありながら、大きな人気を集め、急遽定員枠を拡大した注目の大会だったのだが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で中止を余儀なくされてしまった。寂しい気持ちを抱えていたが、この大会のコースをプライベートライドとして走るグループがあることを聞きつけた。コースを走れるチャンスだ!
[caption id="attachment_32649" align="alignnone" width="640"] 石岡駅に降り立つ。つくば霞ヶ浦りんりんロードがナショナルサイクルルートに認定され、記念の横断幕が掲げられ、街をあげての自転車ムード![/caption]
[caption id="attachment_32650" align="alignnone" width="515"] 石岡を象徴する「獅子頭」はマンホールのデザインにも[/caption]
石岡市は、市長が自転車の価値を高く評価し、『りんりんタウン構想』を掲げ、自転車を活用したまちづくりを目指している。市長自らが、自前の自転車に乗り、サイクリングイベントに参加することも多い。日本で初めて、市が市民サイクリングクラブを設立し、話題にもなった。
この日は、サイクリストである石岡市の根本副市長が参加するだけでなく、ライドをコーディネイトしてくれた! 走行コースは、大会のショートコースをベースにしているというが、独自の立ち寄りスポットを加えた構成だという。
集合場所である石岡市役所に向かうと、石岡市だけでなく、笠間市のサイクリストたちも集まっており、総勢10名ほどのライドになるようだ。3月でありながら、晴天に恵まれ、気温20℃を超える陽気となり、朝から皆の表情も明るい。市外の自宅から自走で集合してきたメンバーもいるようだ。最近リニューアルされた市役所を背景に、記念撮影をし、スタート。楽しいライドになりそうだ。
[caption id="attachment_32651" align="alignnone" width="640"] スタート!メンバー全員で「楽しむぞー!」[/caption]
[caption id="attachment_32652" align="alignnone" width="640"] 市街地を抜け、サイクリストに人気の高い八郷地区へ[/caption]
中心街を抜けるまでは、交通量もあり、少し注意が必要。走り慣れたひとたちが多く、コミュニケーションを取りながら進んでいく。
市街地を離れると、田園風景が広がる。一気に交通量が減り、走りやすくなるが、ゆるやかなアップダウンが増えて来る。名物である『日本一の獅子頭』が据えられた『風土記の丘』を通過。園内には500本の桜があり、ソメイヨシノだけでなく、シダレザクラ、ボタンザクラなど、1カ月に渡り、さまざまな桜の美景を楽しめる人気スポットだ。例年3月下旬はさくらまつりが開催され、桜に彩られる園内は、多くの来訪者の目を楽しませる(本年は、まつりもライトアップ等も中止)。
[caption id="attachment_32653" align="alignnone" width="640"] 鮮やかな菜の花が並ぶ春のフラワーパーク入口[/caption]
[caption id="attachment_32654" align="alignnone" width="640"] 売店には季節の花が並ぶ[/caption]
[caption id="attachment_32655" align="alignnone" width="640"] 人気のレストラン。ランチ時には多くの人でにぎわう。リニューアル後はさらに多くのスポットが開店する[/caption]
またゆるやかなアップダウンを越えていく。見上げれば、雲一つない広い空が広がっている。田園風景の中で、群生する菜の花の黄色や、草木の鮮やかな黄緑色が、春の到来を告げている。
いよいよランチ! 店舗は高台の上にあるという。脇道に入り、そこそこの勾配の坂道を、気合を入れて上り、蕎麦店「泰旬庵」に到着。古民家を改修した店舗の中に入ると、風情ある空間が広がっており、大きく確保された窓からは、山々を従えた茨城らしい田園風景が一望できた。しばし景観に見とれる一同。
[caption id="attachment_32656" align="alignnone" width="640"] 高台に上がると、春の景色が広がっていた[/caption]
この日の一番人気は、冷たい『大根汁蕎麦』。茨城らしい食べ方なのだそうだ。器に、なみなみと入っただいこんの絞り汁に、麺つゆを入れ、コシのある蕎麦を軽く浸していただくのだが、だいこんの絞り汁が、みずみずしく、少し辛みがありながらも、甘さがあり、蕎麦によく絡み、絶妙な食感と味! 新鮮なだいこんだからこそできるのだろうが、やみつきになる味だった。
[caption id="attachment_32657" align="alignnone" width="640"] 趣のある木を使ったお品書き[/caption]
[caption id="attachment_32658" align="alignnone" width="640"] 大根汁そば!新鮮なだいこんの絞り汁があってこその品だ[/caption]
泰旬庵を後にし、『足』に効験があると言われる『足尾神社』の里宮へ。本宮は足尾山の頂上にあるのだが、かなりのヒルクライムになるため、そこまで行かれない人々のために里宮がしつらえられているのだという。足にまつわる悩みを持つ人々や、脚を使うアスリートたちが祈願に訪れ、本宮には、多くの靴が奉納されている。コンパクトな里宮ではあるが、木々に囲まれた境内には山頂にある本宮と同じ空気が漂う、不思議な空間だった。
[caption id="attachment_32659" align="alignnone" width="640"] 足の神社「足尾神社 里宮」。どこか清廉な空気が漂う[/caption]
[caption id="attachment_32660" align="alignnone" width="640"] 脚力アップ祈願![/caption]
次は『馬小屋風来里』に行くという。木々や田畑の間を縫って伸びる道を抜けて行く。石岡はパラグライダーなど、空を楽しむアクティビティーが盛んで、カラフルなパラグライダーの姿をよく目にする。またかなりの勾配の脇道をのぼり、着陸場や練習場の脇を抜け、濃い緑の木々の間を上って行くと、山道の中腹のなだらかな斜面にログハウスが見えて来た。手前に目をやると、馬だ! やさしい目をした馬たちが、のどかな景観を背に、穏やかにたたずんでいる。風来里では、乗馬体験だけでなく、施設を出て森林や河原を散策するホーストレッキングも可能。
[caption id="attachment_32661" align="alignnone" width="640"] 春の田園風景の中、馬小屋風来里へ向かう[/caption]
[caption id="attachment_32662" align="alignnone" width="640"] 馬が草を食む、のどかな景観[/caption]
[caption id="attachment_32663" align="alignnone" width="640"] 桑原さんが馬に乗り、ログハウスまで来てくれた[/caption]
馬を操る桑原さんは、北海道から移住して来たばかり。聞けば、この八郷地区の環境が良く、進化型電動アシスト自転車“e-バイク”を購入し、付近を駆けめぐっているという。「自転車で走るのも楽しいけれど、馬ののんびりとしたスピードでゆくのも魅力的なんですよ」と桑原さん。馬のぬくもりを感じながら、パカポコとこの美しい景色の中をめぐるのは、たしかに極上の時間であるに違いない。
[caption id="attachment_32664" align="alignnone" width="640"] 馬たちに挨拶。風来里ではこの馬たちに乗り、近隣をトレッキングできる[/caption]
[caption id="attachment_32665" align="alignnone" width="640"] 細い道を抜けていく。冒険のようだ[/caption]
山を下り、牧草地帯を抜けていくと、石岡市と筑波大が共同事業で再生に取り組む古民家が見えてきた。茅葺き屋根の途中まで作業が終わったところなのだとか。茅葺きをまざまざ見る機会は少ない。露出した断面が興味深かった。
[caption id="attachment_32666" align="alignnone" width="640"] 再生中の古民家に立ち寄り、茅葺き屋根を観察。興味深い[/caption]
[caption id="attachment_32667" align="alignnone" width="640"] 市中にはおいしいと評判の湧き水も。大量に汲みにくる人も[/caption]
ここからはグルメパート! 石岡市が誇る『いしおかサンド』を食べに行こうという話になった。この『いしおかサンド』とは、「石岡市産品を使用」「サンドしている」「各店のオリジナリティが加えられている」の3つの条件を満たしたフィリングを挟んだ形で仕上げられるスイーツのこと。ベーカリー、洋菓子、和菓子店がそれぞれの特性を出しながら、強みを生かし、独自の『いしおかサンド』を販売している。一年の中で、季節によってフィリングやスイーツの種類を変える店舗や、限定した季節のみ販売する店舗もあり、訪れるたびに、どの店舗に行こうかとワクワクする。
[caption id="attachment_32668" align="alignnone" width="640"] 銅山堂で大人気の食パン。手土産にもなる感動モノの味なのだとか[/caption]
[caption id="attachment_32669" align="alignnone" width="640"] 味なるムース、ダックワーズが合わさり、まさに絶品!銅山堂の石岡サンド[/caption]
今回の行き先は『銅山堂』。コンパクトな店舗ながら、パン、和菓子、洋菓子を展開する人気店だ。味に定評のある店だが、特に食パンは遠方からも買いにくるファンがいるほどで、午前中に売り切れることも多いという。この日の『いしおかサンド』は、栗フレーバー! 米粉のダックワーズの間に、たっぷりとマロンムースがサンドされている。販売時は凍っており、すぐにアイスクリームのように食べる派、少し解凍する派、完全に解凍させ、ふわふわのムースとして食べる派に分かれるらしい。味わいを楽しむべく、少し溶かしてからいただいただが、ムースはしっかりと栗の風味がし、濃厚ながらもしつこくなく、外側のダックワーズの食感もありながら、ふたつの味もうまくなじんでいて、まさに絶品! 至福の時間だった。一同はそれぞれが食べたいものを選び、無料サービスのコーヒーをいただきつつ、わいわいと味わっていた。
[caption id="attachment_32670" align="alignnone" width="320"] 「銅山堂」にて。石岡サンドをいただこう[/caption]
[caption id="attachment_32671" align="alignnone" width="479"] 無料でいただけるコーヒーが嬉しい[/caption]
再出発。次は最後の立ち寄りスポット。皆が出発時から「カレーパン、カレーパン」と念仏のように唱えていた絶品パンが並ぶベーカリーだ!
到着したベーカリー『ぶれっど』は、地元の人気店で、開店同時に駐車場が埋まるという。看板商品は、外はカリカリで、中には大きめの具の入ったカレーが詰まっているカレーパンと、注文を受けてからフィリングを詰めてくれるクリームパンだ。期待を込めて店内に入ると、ない! 到着時は14時過ぎだったのだが、もうすでにほとんどのパンが売り切れていしまっていた。クリームパンは完売し、カレーパンは若干を残すのみ。打ちひしがれながらも、地元のメンバーがあたたかく遠慮し、各自がおやつに食べたいパンを選んだのだった。
[caption id="attachment_32672" align="alignnone" width="640"] 人気ベーカリー「ぶれっど」に到着![/caption]
[caption id="attachment_32679" align="alignnone" width="640"] 店内には人気のパンが並ぶ。この日はほとんどのパンが売り切れていた[/caption]
さて、待望のカレーパンは、生地にもカレー粉が練りこまれ、具がごろごろ入った味わい深いカレーフィリングには、刻んだ福神漬けが入っている。歯を立てると、外側は音を立てるほどカリカリ、噛み締めると生地はふんわり、さらにポリポリと福神漬けの噛みごたえも現れる。味も、食感も絶妙で、楽しい!皆でシェアしつつ、めいめいが選んだパンを味わった。敷地内にはカフェやケーキ店もあり、スイーツの追加買い出しに向かう甘党メンバーも。隣にはコンビニもあり、このスポットを利用するサイクリストが多いというのも納得だ。
[caption id="attachment_32674" align="alignnone" width="640"] 至福のカレーパン!具が大きい!福神漬けが入ることでこんなに美味しくなるとは[/caption]
[caption id="attachment_32675" align="alignnone" width="640"] 隣接するケーキ屋&カフェで追加スイーツを仕入れる甘党メンバーも[/caption]
あとは、ゴールを目指すのみ。春の兆しを探しながら、市役所を目指す。市街地に入ると車の量は増えるが、『りんりんタウン』らしく、クルマが自転車に配慮してくれているのを感じる。
行く先々でロードバイクとすれ違う。石岡は、もともとこんなにサイクリストが多かったのだろうか。根本副市長に聞くと「ここ数年でサイクリストは驚くほど増えました」と頷く。スタンドのないスポーツバイクをかけるためのサイクルラックを置く店舗も増えているようだ。
[caption id="attachment_32676" align="alignnone" width="640"] 街中に春を探しながらゴールへ向かう[/caption]
[caption id="attachment_32677" align="alignnone" width="640"] 街中に春を探しながらゴールへ向かう[/caption]
無事に、市役所に帰着。「楽しかった!」という声があちこちから上がる。名残惜しく、記念撮影をし、また、秋の味覚の時期にでも企画しようということになって、解散した。ここからまた自走で戻るものあり、車や電車に積んで帰るものあり、様々だ。
今回は、峠を盛り込まないコースとしたが、市内には上りごたえのある峠もあり、ヒルクライムも可能。フルーツなどの収穫量も多く、魅力的なグルメスポットも多い。石岡市民サイクリングクラブの活動も、今後存在感のあるものになり、自転車を楽しむ市民も増えてくるだろう。『りんりんタウン石岡』が、多くのサイクリストを集め、本格的な自転車のまちになる日は遠くないかもしれない。(P-Navi編集部)