2020/02/20(木) 23:24
近年、『雪上ライド』が流行り始めている。もともとMTBの愛好家らが、積雪時に雪の中を好んで走っていたのだが、路面状況に左右されにくい極太タイヤを履いたファットバイクが登場したことにより、オフロードのビギナーでも気軽にチャレンジできるようになった。スキー場のゲレンデ等の施設で試行的に開催され、その特殊な走行感覚と雪景色の中を駆け抜ける特別感が注目されている。近年は、開催地の自然環境の中でのイベントとして行われたり、コースが設営されるケースまで出てきたりしている。
北海道、オホーツク地方では『流氷ライド』と名付けられたイベントが、2月に開催される。この地の名物である『流氷』を眺めながら、さらに条件が許せば、流氷の上で、ファットバイクライドを楽しんでしまおうという、この土地ならではの贅沢なイベントだ。
イベント初日。参加者は、網走湖に集合した。春から秋は美しい湖面が魅力の観光地だが、冬季は湖面が完全に凍結し、ワカサギ釣りの人気スポットとなっている。この釣りテントの横に、季節限定のファットバイクコースが設営されるのだ。
[caption id="attachment_31581" align="alignnone" width="640"] ファットバイクを受け取り、準備完了!参加者は全員雪上ライド初体験。少し緊張も漂う[/caption]
[caption id="attachment_31582" align="alignnone" width="640"] ワカサギ釣りのテントをバックに、スタート![/caption]
レンタルファットバイクを受け取り、フィッティングと簡単な操作を学ぶ。ファットバイクは、ハンドルも一文字のフラットバーで、極太タイヤが多少の障害物も飲み込んでくれるため、オフロードに慣れていない人でも、悪路を楽しめる優れもの。バランスを取りにくい砂や雪の上でも乗れると人気なのだ。
「転んでも雪の上だから、痛くないので安心してください」と言われるが、最初は慣れない路面にビクビクの一同。インストラクターに続いて、おっかなびっくりコースへ漕ぎ出した。
[caption id="attachment_31583" align="alignnone" width="640"] 思うように曲がれない![/caption]
コース上は、ある程度、雪も固められており、路面の衝撃を吸収する分厚いタイヤのふんわり感と、圧雪のほどよい柔らかさを感じながら踏み込めば、ギュギュと独特な感覚で進んでいく。新鮮な走行感!とはいえ、コントロールも通常のライドとは違っていて、コーナリングなど、思うように進まないことも。勢いあまってダイブしたり、コースを外れてしまったり。あっちこっちで笑いや歓声が上がる。一同、童心に帰ったような笑顔で、コース走行を楽しんだ。
[caption id="attachment_31584" align="alignnone" width="640"] 慣れてくると、気持ちよいスピードで走れる参加者も[/caption]
インストラクターの勧めもあり、コース外の雪原にも挑戦することになった。まだ誰も踏みしめていないフワフワの雪の上に漕ぎ出すと、まったくコントロールが効かない!圧縮された雪の上とは難易度が、まったく違う。無理に力を入れてペダルを踏み込むと、グリップせず、空滑りして結局、転倒してしまう。夢中になって、どうにか進もうとモガく大人たち。頑張っても、全然進まなかったり、タイヤごと埋まったり、雪にハンドルを取られてコントロールを失ったり、盛大にコケたり。ただ、どれだけダイブしても、ふわふわの雪の上!まったく痛くないのだ。爆笑の中で、四苦八苦し、感覚を体得し、フワフワの雪上を仙人のようにスーッと進むことができる参加者も出てきた。もはや一行は、雪上ライドの虜(とりこ)となっていた。
[caption id="attachment_31585" align="alignnone" width="640"] あっちこっちで転倒し、笑い声が上がる[/caption]
この日の気温は、零下10度を下回ったのだが、一同は汗ばむほどの熱気を放ち、誰一人、用意された温かい飲み物を飲もうともしなかった。
イベント2日目。初日とは全く異なる環境での『雪上ライド』が企画された。網走駅からJR北海道の観光列車『流氷物語号』に乗り、北浜駅を目指す。オホーツク海沿岸を走り、車窓からは、流氷とオホーツク海の眺めを楽しむことができる季節限定の人気列車だ。参加者は車窓に釘付け!絶景が広がるたびに歓声が上がった。
[caption id="attachment_31586" align="alignnone" width="640"] 網走駅から流氷物語号へ乗車[/caption]
[caption id="attachment_31587" align="alignnone" width="640"] 海と流氷。美しい冬景色に釘付けの乗客たち[/caption]
北浜駅で下車し、駅近くのフィールドへ移動。自家用車で集合した参加者と合流し、ファットバイクを受け取り、準備をしてビーチへ!夏には砂浜が広がっていた場所は、氷と雪に覆われた銀世界に変わっていた。条件が許せば、接岸した流氷にもトライできるそうだが、この日は流氷が沖へ移動してしまっており、打ち上げられた氷の上を走ることになった。
[caption id="attachment_31588" align="alignnone" width="640"] 北浜駅に到着[/caption]
[caption id="attachment_31589" align="alignnone" width="640"] バイクを受け取り、説明を聞く[/caption]
網走湖の上とは、まったく違う走行感!氷がゴロゴロと転がっていたり、雪が積もっていたりと、自然のままのフィールドなのだが、この変化がまた楽しい。バランスを失いコケてしまう参加者もいたが、幸い転倒のダメージも少なく、周囲は、ひたすら笑い声がこだましていた。
[caption id="attachment_31591" align="alignnone" width="640"] 行くぞ!楽しむぞ![/caption]
[caption id="attachment_31592" align="alignnone" width="640"] ビーチへ、ダウンヒル![/caption]
[caption id="attachment_31593" align="alignnone" width="640"] この季節しか見られない絶景の中、氷の上にバイクを走らせる[/caption]
空気は澄み渡り、向こうには雪をかぶった知床連山や斜里岳の姿が見える!海には波一つなく、透明度の高い水を湛えた湖のよう。聞けば、流氷が沖で波をブロックするため、風がなければ波が立たず、低温でプランクトンが死滅するため、水がこのように澄むのだとか。打ち寄せる波の音もなく、海とは思えない静けさに包まれる。澄んだ空と海を眺めながら、ファットバイクのペダルを踏み込む一同。新しい経験ばかりで、感動が止まらない。
[caption id="attachment_31594" align="alignnone" width="640"] 波のない静かな海が広がる[/caption]
[caption id="attachment_31595" align="alignnone" width="640"] 自然のままの砂浜を走る。走りやすいラインを選びながらバイクを走らせる[/caption]
またもや夢中になりすぎた一行は、暑い暑いとウェアを脱いでいく。この日も零下10度程度のオホーツク気温ではあったが、想像していたよりも、はるかに暖かく感じる。ダウンジャケットを脱ぎ、ごく普通の冬物ウェア姿になる参加者が続出した。
周辺には、キツネのかわいらしい足跡など、野生動物の痕跡はあれ、人が刻んだ跡はなし。混みあった都会では、ありえない経験だ。皆で雪の上に横たわり、空を眺める。火照った体が雪で気持ち良く冷やされ、澄み切った空に、心も澄んでいくようだ。
[caption id="attachment_31596" align="alignnone" width="640"] バランスを失い、雪にダイブ![/caption]
[caption id="attachment_31597" align="alignnone" width="640"] フワフワの雪の上に、横たわる。柔らかい雪の感触と、冷たさを楽しむ[/caption]
寒さに耐えられるか、疲労は大丈夫かと、主催者の懸念もあり、ライド時間は短めに設定されていたのだが、終了時間が来ても、もっと乗りたい!とノリノリの参加者たち。雪上ライドを経験した全員が、この走行感を絶賛したのだった。
今年も、2月15、16日(※16日は中止となりました)にオホーツクエリアで流氷ライドが企画されている。台数限定ではあるが、ファットバイクもレンタル可能であり、ビギナーでも参加可能だ。
[caption id="attachment_31598" align="alignnone" width="640"] ノーザンアークリゾートにはゴルフ場のカートコースを利用した特設コースが[/caption]
このエリアのノーザンアークリゾートでは、ゴルフ場のカートコースを雪上ライドコースとして解放しており、ファットバイクのレンタルもあり。会期中であれば、誰でもファットバイク体験が可能だ。2月23日にはこのコースで雪上ファットバイクのレースも開催される。厳寒のオホーツクの自然を堪能しつつ、雪上ライドを楽しんでみたいと感じたなら、足を運んでみてはいかがだろうか。
<イベント、コース詳細情報リンク>
オホーツク流氷ライド2020
画像提供:サイクルアドベンチャーオホーツク推進協議会(P-Navi編集部)