2018/02/08(木) 07:56
筆者が競輪取材に携わるようになってから、もうすぐ1年が経つ。
"習うより慣れろ"とはよく言ったもので、おかげさまでだいぶ競輪取材で臆するところはなくなってきた。他愛のない世間話し、時に情報交換をする取材者も数名はいるし、お互いに認識して挨拶を交わす選手も増えてきたことは取材の積み重ねという経験の財産であろう。
競輪選手は一見、ヤンチャな風貌(特に髪型が攻撃的な印象)の選手も多いのだが、基本的に挨拶が素晴らしい人種であるということも学んだ。競輪学校での教育を受けた賜物なのか?清々しいスポーツマン気質なのか?まぁ、競輪の特徴の一つであるライン戦の影響も少なからずあると思う。年功序列に留まらない礼儀を欠いた人間はスポイルされてしまうかも知れない。上手に説明することは難しいけれども、とにかく個人差(人見知りな選手もいるが)はあっても競輪選手の大半はメチャクチャ朗らかで、礼儀正しいのである。
シンプルなベリーショートの髪型だが、本当に"マッキンキン"の金髪。派手なピアスも輝き、歯にもダイヤモンドが埋め込まれている。常人より明らかに眼光も鋭いし、龍のイラストが描かれたサイクルジャージもバッチリ着こなしている。よく見れば、乗っているピストも妖しい雰囲気満点のパープルだ。
「んんん〜っ、これは本物やんっ!!」
筆者も元々はヤンチャ寄り(中ラン・ボンタン・爪先の尖ったヨーロピアンシューズ)だったとは言え、四十も半ばの年齢にもなると接点はない人種だと勝手に決めつけていた。ところがである、彼、近藤龍徳はどこの競輪場でも「こんちわっす!」と、大きな声で明るく挨拶してくれる爽やかな好青年であったのだ。
気持ちのいい挨拶ってのは、ホンマに大事。筆者もこれで少しずつ近藤に心を開くようになる(笑)。
初めて近藤と話したのは8月の弥彦G3取材の時だ。チャームポイント!?でもある金髪がシルバーアッシュに変わっていたので
「ブリーチして、シルバー入れたんですか?」と、いきなり筆者から質問すると「1回、黒にしたんですけど、勝てなくなっちゃったんでね(苦笑)。それでシルバーにしたんですよ。似合ってますか?」という返事。実際のところ"一を聞いて十が返ってきた"とまではいかないが、筆者としては"ほぼ十を返してくれた"感覚に近い。また、同時に近藤の切り返しに、頭の回転の速さとコミュ力(コミュニケーション能力)の高さを実感したものだ。
さらになぜだか競輪場でキャッチボールやバットスイングの真似事をしている近藤を見かける機会も多い。神宮出場(大学野球)もある筆者の目から観ても、お世辞抜きでキレイなフォーム、とてもカッコイイ。
「中学まで野球やってたんすよ、名古屋選抜に入ったこともありますよ」と、近藤。うん、筋がいいのも納得である。
こんな経緯もあって、一方的かも知れないが、近藤を検車場で見かけると安心していた。いや、近藤もいつも通りの明朗な挨拶をしてくれていたし、こちらのカメラもガン見してくれたりしていたので、一方的でないと信じたいところ。って、近藤のカメラ察知能力の高さは競輪選手の中でも群を抜いているっ!!目線を外していても、後からこちらに歩み寄ってきては「いいの撮れましたか?インスタ載りますか?」と、尋ねてくる。その時の表情がヤンチャさの中にも可愛気がある。このコミュ力の高さには脱帽で、ついついSNSやPerfecta Naviのフォトギャラリーにも多く掲載してしまう。これは俗に言う贔屓(ひいき)ってヤツになるのだろうか?
近藤は検車場でも数多くの選手、ベテラン・中堅・若手を問わずに親交を持っているのが分かる。それは決して馴れ合いという雰囲気ではない。きっと近藤の人間的魅力は誰からも愛され、輪を広げているのだ。
ヤンチャな外見とのギャップもあるのかも知れないけれども、本当に心が温かい近藤のエピソードを簡単にもう一つ。
詳細は割愛させていただくが、筆者は11月の防府G3取材時、あるハプニングで、それはもう大変な状況に陥った。近藤はレース直後(ブロックセブン)にも関わらず、そんな筆者の世話を親切にも焼いてくれたのである。正直、気分はドン底であったのだけれども、近藤の屈託のない笑顔のおかげで気持ちはすぐに立て直せた。
防府G3取材を終えて、東京に戻ってから近藤にSNSで御礼のメッセージを送ると、間もなく近藤からご丁寧にも返信があった。私信なので内容は残念ながら明かせないが、その返信はユーモアに富んでいて、とても優しいものだった。筆者は感動して涙がこぼれそうになったものである。
近藤本人も"追加の鬼か?鬼の追加か?"という具合に、SNSにも記していたが、年明けから記念競輪の斡旋が続いている。コンディショニングも難しく、本人が思うような結果につながっていないかも知れない。それでも、近藤は絶対にこの壁を打ち破る。これは取材者ではなく、近藤のコミュニケーション・モンスターっぷりに惚れ込み、イチコロにされたファンの目線もあるけれども(笑)。
競輪ファンならばご存知の通り、近藤は競輪一家のサラブレッド。そして、現にヤンググランプリ(2014年・岸和田)とサマーナイトフェスティバル(2015年・函館)と、G2での優勝を成し遂げている。当然、近藤自身はG1制覇、及びGP出場を果たしての赤レーサーパンツ(S級S班)が今後の大きな夢に違いない。その時の近藤の勇姿は絶対に目の前で観たいし、シッカリ撮りたい。それが筆者の夢だ、取材者としても、ファンとしても。
Text & Photo/Perfecta Navi・Joe Shimajiri(Joe Shimajiri)