アプリ限定 2021/10/29 (金) 15:00 47
弥彦競輪場で開催された「寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)」。24日決勝は、最後の直線で落車が起こり、新田祐大(35歳・福島=90期)が2位入線の失格。諸橋愛(44歳・新潟=79期)が落携入の8着ということになった。「あれっ、何で新田失格なの!? 」「諸橋も突っ込んでない!? 」といった声が多かった。
記者としてその状況を整理してみる。
複雑な動きで難しい審議だったと思う。関わっているのは平原康多(39歳・埼玉=87期)含め、3人。平原と新田の間を諸橋が突っ込んでいる状況…。新田が斜行を取られて、失格の判定を受けた。
一番のポイントは4角の走っている位置になる。バンクに引かれている線は、内圏線と外帯線と呼ばれ、その中のコースを内外線間、と呼ぶ。4角を回ってきた時、諸橋が内外線間にいて、新田は内圏線の内にいる。平原は外帯線の外を走っている。
内外線間を走っている諸橋に対し、新田が内圏線の内側から外に走り、諸橋の前輪を払う形。ざっくり言えば、諸橋は正規のコースを走っていて、そこを外れている内側からの新田の動きがあるという判断。その点において、失格の判定となりうる。
基本的な考え方として、内外線間を走っている選手に対する妨害行為が違反になるというものがある。この時の諸橋は、そこにいた。
ただもう一つ、中割りの失敗という違反行為も存在する。
わかりやすく言えば、コースのないところに突っ込んで落車などを引き起こした場合に失格となったりする。これが諸橋の走りに抵触するかどうか…。この見方もあったと思うが、新田が内側に降りていた分、諸橋は内外線間をまっすぐ走っている形になる。
落車後の諸橋は「勝負した結果」と話した。あれが自分のコース。やってきた走りがある。それは勝負するためのコースであり、内外線間だったので、本当に諸橋のコースと言えた。
新田は「上がりタイムも遅いと思う。力を使い果たしていたので」と振り返った。力の残っていない状態で、内外線間に復帰しようとしたが、動きを制御できなかった。新田が内外線間にいて、同じような事象が起きた場合は諸橋が中割り失敗と失格となるケースだったかもしれない。今回は、走っている位置が重要だった。
平原は「最後の落車がなければ、喜びだけの開催だったけど」と、一瞬表情を曇らせた。しかし、力を極限まで出し尽くした時に何が起こるかは、誰かが抑制できるものでもない。結果は様々だったが、勝負を貫いた選手たちがいた。
ただ…それだけだ。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。