2026/05/06 (水) 16:30 56
4月は仲間の電撃引退や自身の優勝など重大ニュースが相次いだ。そのため、当初予定していた荒井崇博との熱い語らいの続きは来月へ持ち越しに。今回は競輪選手・中川誠一郎の周囲で起きた様々なできごとをつらつら振り返ります。【構成=塩次洋太(九州スポーツ)】
ーー3月末に嘉永泰斗選手の祝賀会がありました。先月は触れるタイミングを逸したため、まずはその話からお願いします。
泰斗も楽しそうだったし、やっぱりハレの席っていいですね。普段あまり話さないような珍しい人たちにも会えましたし。飲みにはいかないけど少しだけ仲がいい、とか。
ーー嘉永選手とはどのようなやり取りがありましたか。
泰斗や合志(正臣)さんらと壇上でトークショーのようなことをしたんですが、そのなかでオレに追いつくように「タイトルを3本獲ります!」って宣言していました。
ーーあまり、大風呂敷を広げないタイプだけに意外ですね。
そりゃ、主役ですから。コチラからすれば、もういくらでも取ってもらって結構です、という感じで頼もしかったですよ。
ーー他の方々との交流は。
荒井さんも来ていたんですけど、クルマで来ていたから飲めなくて。だから終始、物静かであまり存在感がなかったですね。あとは森内(章之)さんが元気でした。
ーー元選手の森内さんですね。
この間、熊本FIの中継でレポーターデビューをしていました。どうやら1着以外の選手に話を聞く担当みたいで。でも、着外の選手に話を聞きに行くと「何でオレなんすか」って感じでムッとされるらしくて「みんな、怖い」って嘆いていました(笑)。
ーー森内さんは現役時代、コワモテで知られていました。
そうですよ。森内さんが一番怖かったですから。だから若い子がそんな態度だなんて、ちょっとビックリですよ(笑)。でも引退して10年以上経ちますし、熊本の若手ですら森内さんが武闘派だったことは知りませんよ。
ーー面白いエピソードが他にもあれば。
元選手の本田博さんに久しぶりにお会いしました。今は宮崎で「バイオ茶」ってお茶を売っていて。本田さんがいきなり「コラム、読んでるよ」って。
ーーまさかの本田さんですか。
バイオ茶のお試しセットを送ってもらって焼酎のお茶割りで飲んでみたけど美味しかった。当コラム初のスポンサーが付きました(笑)。だけど、お茶割りは家でやったらダメですね。
ーーなぜでしょう。
あれは後半戦の飲み物。初手はビールやハイボールといった炭酸系を飲まないと。最初からお茶割りだと吸い込みが早くて軽〜く、酔っ払う。とはいえ、美味しかったしこの場を借りて宣伝しちゃいます。いくらでも送っていただいて構いませんし、お待ちしております。あとは決して面白いエピソードでは無いのですが、二次会が大変だったみたいです。
ーー何があったのでしょう。
(宮崎)大空が何か粗相をしたみたいで。詳しくはわからないのですが、後日バンクで会ったら坊主頭だった。だから「ああ、これはまた何かしくじったんだな」と察しました。アイツは飲むと誰彼構わずにからむんです。
ーー物騒ですね。
オレは何か嫌なニオイがしたから、あえて二次会をパスしたんです。変な嗅覚が効きましたね。
ーー4月は豊橋FIと熊本FIを走りました。熊本では待望の今年初優勝を飾りました。優勝は昨年10月の武雄FI以来でした。
高木(竜司)さんもいたし、メンバー的にも普段からよく話す顔ぶれだったので、道中は過ごしやすかったですね。
ーーダービーの裏開催とはいえ気合が入っていたのではないですか。
稼ぎどきですからね。もう気合だけですよ。決勝に乗れたのはよかったけど、まさか優勝できるとは思いませんでした。
ーー決勝は別線に飛び付かれておしまい、みたいなシーンを想像したファンが多かったと思います。
カマシだったら、タイミング的に飛び付かれていたでしょう。中団から切って、ホームで2車を出そうと思ったら誰も来なかったので、大西(貴晃)が仕方なく逃げるかたちになりました。こっちは「2車出して勝てるタイミングでまくればいい」とは言っていたんですけど。
ーー流れとしてはラッキーでした。
打鐘からホームにかけて、しゃくられたりしたらもうなかった。そのあとも大西が2角で外すとは思わなくて、後ろをみた瞬間に車間が詰まってしまい内に差し込んでしまった。瓜坊(瓜生崇智)と2人で追突するところでしたよ。
ーー2角過ぎで突っかかったところですね。
けっこう引っ張ってから駆けたし残れると思ったのでしょう。2角で波をつくるような感じだったでしょ。もしも発進のような走りだったらスピードを落とさないので。
ーー並びは順当に決まったのですか。
最初はオレが自力でもいいと思っていたんです。でも大西が「発進みたいなレースはできませんが、僕なりに形はつくります」と言ってくれたから、もう任せようと。
ーー結果的に先行になった、と。
幸いにも(小川)真太郎や藤井(昭吾)君も、誰かの地元感があったのか、そこまで激しくなかったしいろいろ恵まれました。あの展開で勝てないようなら、もう情けないですよ。
ーー熊本バンクが再開してから初めての地元優勝でした。特別な思いはありましたか。
聞いたら、10何年ぶりだったそうです。
ーー調べたところ、2014年8月のFIシリーズ以来でした。
そうでしょう。記念を勝っていますが、開催は久留米だったし、どうも熊本バンクとの相性が悪いんです。
ーー以前、お話をされていましたが、しばらく地元を走れない時期がありましたよね。
地元記念で飛びすぎて、施行者のところに苦情が大量にきて、とうとう呼ばれなくなったんです。施行者からNGが出るって、すごくないですか?
ーー出禁は何年ぐらい。
3、4年だったと思います。そんな人います? 追加も出ないんですから。そんな奴が後年、地元記念を何本も取ってしまうんだから変な話ですよ(笑)。
ーーなぜ、解けたのでしょうか。
ロンドン五輪に出たからですよ。さすがに五輪に出たやつを呼ばないわけにはいかないでしょ。ひっくり返したように走れることになりましたが、相変わらず相性は悪かった(笑)。今回で流れが変わればいいですね。
ーー今年もオールスターファン投票の季節がやってきました。4月の中間発表では43位につけていました。
まったく知らなくて、記者の方から「人気ありますね、伊藤旭より上ですよ」と言われて初めて知ったんです。
ーー伊藤選手という、また絶妙な例を挙げてきましたね。
今の自分が唯一、出られる可能性が高いGIですから。今のところセーフティ圏内ですが、どうなるかはわかりません。水物ですし、こればかりは自分の力じゃどうにもならないので神頼みですね。まだ余白がある方、清き一票を投じていただきワタクシを松山競輪場に送り込んでください!
ーー4月に大塚健一郎氏が引退しました。中川選手には話があったのでしょうか。
いや、知りませんでした。電話で報告があったという人もいましたけど、オレのところには。だから、大西に「オレに電話がなくて寂しかった」と大塚さんに伝言を頼みました(笑)。
ーー関係が深いだけに意外でしたね。
想像ですけど、大塚さんは飲み歩いていて、よくスマホを無くしているイメージがあるんですよ。だから無くしすぎて、オレの電話番号を忘れていたのかもしれません。
ーー小野俊之氏の直後でしたし、意外なニュースでした。
そうですね。解説者をやるという話を聞きましたが、熊本の開催中には選手たちの間で「辞めてもまた小野さんに競りに行くのか」なんて冗談もでていました(笑)。
ーー最近、お会いしたのですか。
それこそ小野さんのラストランのとき。そこでは辞めるような素振りはまったく感じなかった。ただ、ヒゲが伸び放題で痩せていて、失礼な言い方ですが覇気がなかった。いつもはギラギラしている人なので、そこだけ違和感がありました。
ーー同じ時期を戦った先輩が辞めてしまいました。
大塚さんとは若いころ、常に一緒にいました。ここでもよく話していますが「チーム冷や飯」というコンビを組んで飲むことが多かったんです。
ーーGI開催があると、九州勢のなかでおふたりの居場所がなかったという話をコラムでよくしていますね。
当時の九州で荒井さんや(井上)昌己は正統派だったからチヤホヤされていました。いわゆる出世街道まっしぐら。でもオレらは完全に列外で弾かれていて、はじっこにいるだけでした。
ーー存在が認められていなかった、と。
打ち上げに行っても、どうせ先輩たちに怒られる。大塚さんも行きたがらないから「2人で飲もう」と言って、よく脱走していました。もう20年以上前の話。
ーーヤケ酒ですか。
それでも結局オレは捕まってしまい、強制連行されるんです。そこでまた怒られるの繰り返し。でも大塚さんは、何とかうまい理由をつけてスッと消える。あのあたりはちょっとカッコいいと思っていましたね。
ーー当時のエピソードで印象に残っていることはありますか。
大塚さんはレースも酒の席も前のめり(笑)。ガンガン、ぶちあたっていくタイプでした。ビッグレースの帰りに大金の入った賞金袋を落としても「しょうがない」で済ませたりして、いろいろ破天荒でした。でも、優しいところもあるんですよ。
ーーどんなところでしょう。
苦境の時代を一緒に歩んできた同士と思ってくれているから、こっちに気をつかって一目置いてくれるんです。オレが初めてGIを勝ったとき、最初に泣いてくれたのが大塚さんでした。
ーーこれからは選手と解説者という関係になりますね。
今回の森内さんもそうでしたが、インタビューを受ける側になるともう違和感しかない。呂律が回るのかなとか、ちゃんとしゃべるのかなとか心配になったりして(笑)。
ーー最初はお互いに戸惑いそうですね。
逆に早く会いたいですね。電話も無かったので寂しい限りです。このコラムを見た大塚さんの周りの方、オレが寂しがっていたと伝言をよろしくお願いします。また、一緒に飲みに行きましょう、とも。これじゃあ、まるで人探しの伝言板ですね(笑)。
ーー今月も質問が届いていますのでお答えください。
Q、仮の話ですが、A級への降級が決まっても選手を続けますか? (東京都/男性/50代)
「電撃引退はあるの?」って質問はよく受けます。昔なら「電撃引退」もあったでしょうけど、これだけ弱くなってしまっては電撃もクソもないですよ。普通に「引退」です。A級を走るか、のご質問ですが来期A級なら普通に走りますよ。走る、走らないはタイミング。個人的には子供の学費もかかるからまだ物入りなんですよ。
Q、金子貴志選手の真面目なコラムを読んだ後に誠一郎のコラムを読んだら、温度差で風邪をひきました。どうすればいいですか? (愛知県/男性/30代)
これは色んな選手のコラムをサウナみたいに繰り返して読めば、そのうち整いますよ。松浦(悠士)とかの熱いやつのあとに、こっちのぬるま湯に浸かればいいわけですから。
【大募集】
中川誠一郎選手が、読者の皆さんのお悩みを解決します!「仕事がうまくいかない」「お酒がやめられない」「オフの日の過ごし方は?」……など皆さんからのお悩み&質問を中川誠一郎選手へお届けします!
中川誠一郎
Seiichiro Nakagawa
中川誠一郎(ナカガワセイイチロウ)。熊本県熊本市出身。日本競輪学校第85期卒業。日本競輪選手会熊本支部所属。師匠は従兄の瀬口慶一郎。 実妹の中川諒子は女子競輪選手、義弟の吉成晃一も競輪選手。2000年8月15日、ホームバンクの熊本競輪場でデビューし1着。後2日間も勝利し、デビュー場所で完全優勝。2016年日本選手権競輪(静岡)、2019年読売新聞社杯全日本選抜競輪(別府)、高松宮記念杯競輪(岸和田)を優勝している。好きな食べ物は寿司。
