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毒熱!闘う競輪記者マッチーが行く!

【KEIRINグランプリ2020展望】 愛すべき出場選手たちを“毒熱”で解説

2020/12/27 (日) 19:00 15

これは僕が記者としてデビューした専門紙『赤城』の時にやっていた、年末恒例の企画・グランプリ毒舌大予想。今年はnetkeirinで復刻してみました。

①郡司浩平

南関の幸せ配達人、周囲からの評判がすこぶる高い郡司浩平選手(提供:公財JKA)
 引退した親父さんは川崎競輪場で開催指導員をやっているが、昭和のザ・競輪選手だった。名物選手だし、シゴロ(4着、5着、6着)の郡司と呼ばれ、真ん中の着を取るのが巧かった。言葉は悪いが着取りの名人だったし、逆に言えば、最後まで勝負を諦めない生粋のマーカーだった。あのお父さんから、何故、こんな人間性の良いアスリートが生まれるのか、最初、信じられなかった(お父さんも笑いながら認めていた)。

 南関の幸せ配達人と呼ばれ、郡司に世話になった事のない南関の選手は不在。負けても、きちんと我々取材記者に対応してくれるし、関係者の間でも評判は高い。勝つ時は、捲りオンリーの組み立てだったが、近況、長い距離も持つ様になってきた。今の競輪で1番車を貰えるのは大きい。ボートレースの1枠と同じ価値はある。1号艇からのイン逃げは無理だし、外からの捲り差しを考えているのではないか。

 昨年のグランプリは存在感がゼロだった。今年はラインも出来るし、ワンチャンスありそう。自分から仕掛けに行ってはダメだが、もつれにもつれて、最後に仕掛ける展開なら勝つ可能性は高い。アスリートと職業競輪選手の間だし、こんな競輪選手が、どんどん出て来て欲しい。

②脇本雄太

 個人的に慎太郎と共に"チームイー新聞”のメンバーだから愛着は深い。僕が『イー新聞』とのスポンサー契約をお願いしたが、その基準は人の良さと、一芸に秀でている事。もう7年ぐらい前になるが、必ず、脇本時代が来ると確信していた。その時は、深谷知広の方が世間的な注目を集めていたが、いやいや、違うとの直感があった。

 今は、オリンピック選手としてのイメージしかなくなってきたが、実はかなりの叩き上げ。今の若手自力選手は、脇本のトレーニング方法や、フレームの事ばかり気にしているが、下積み時代の脇本を勉強して欲しい。先行しても、村上義さまに怒られ、失敗しても怒られ、愛のムチを受けてきた。これが本人の肥やしになったし、ふて腐れず、忠実に耳を傾けたのもワッキーの純粋さ。

 ナショナルチームに入る前は、大酒飲みで、体もメタボ気味だった。それが節制する様になったのは、ブノワコーチとの出会いが大きい。とにかく、レースの記憶力も良く、7年、8年前の競走もきちんと覚えている。突っ張られたり、主導権を取れずに終わった相手は、閻魔帳に名前を記載しているそうだ。普通なら東京オリンピックの開催延期でモチベーションが下がるところ。それが、現実を現実として受け止め、心を微動だにしなかったのも更なる人間的な成長。

 亡き母親との約束が、東京五輪の出場になっているが、決して、恵まれた家庭環境ではなかった。本当、お金の面から全て、苦労している。昨年は新田祐大の飛び付きでペース配分が狂った。誰もが予期せぬ展開だったが、本人は新田のイン粘りは頭にあったそうだ。単騎でなく、平原マークで更なる魅力が高まった。漢と漢の連係であるし、平原との1番人気を演出したい。高らかに手を挙げている姿が目に浮かぶ。

③松浦悠士

 数年前、誰が今の松浦を想像出来ただろうか。中途半端な自在選手だったし、97点ぐらいのイメージしかなかった。S級中堅のベテランマーカーからも「松浦の後ろでは…」と言われていたほどだ。それが人間的にも競輪選手としても超一流の仲間入りをした。

 全国的に松浦の後ろは人気があり、村上弟、稲川翔、佐藤慎太郎らも悩まずマークしている。感性で走っていると言うより、きちんと作戦を考えて走っているタイプの選手。先行しても強く、クレバーさも売りにしている。

 直前の別府記念も欠場せず、全くレースで手抜きをしないので、車券を買う時にも有り難い選手。昔のスター選手は、特別競輪だけ仕上げ、その他のレースはオープン戦みたいに走っていた選手がいたのも事実。決勝に照準を絞り、やらず、やらず、決勝だけ優勝と言う選手も多かった。

 脇本がいると、清水とのコンビでも色あせて見える時もあるがグランプリの大舞台。自ら前を志願したと言うし、どう走るか注目される。無心の前々勝負で必ず見せ場は作る。

④和田健太郎

スピードを貰って一発を狙う和田健太郎(提供:公財JKA)
 普通に考えてワダケンが優勝する姿は目に浮かばない。郡司が2角捲りを決めて最後差す? そんな夢みたいな展開があるだろうか。ただ、ここに乗った以上、勝つ可能性はあるので馬鹿には出来ない。グランプリが固く決まるケースは少ないし、豆車券で遊ぶ手はある。

 ヨコの厳しさはないが、タテに踏み込めるので現代競輪にマッチしている。えげつなく全部抜いてしまうが、それ程、自力選手からも嫌な顔はされていない。仲間や後輩選手へのフォローが上手いのだろうか。松浦同様に、和田も97点ぐらいの自在選手のイメージだった。いきなりSS様になったからといい、勘違い野郎にもならなかったし、その姿勢は素晴らしい。

 来年1年、SSのアドバンテージがあるし、そんなに大崩れはないだろう。優勝する時は、郡司の捲りが不発で、逆にそこそこのスピードを貰った時かもしれない。

⑤清水裕友

自ら前を志願した松浦悠士(左)と番手を回る清水裕友(右)(提供:公財JKA)
 盟友、松浦との連係は昨年と逆で今年は番手回り。どっちが前でも、そんなに大きく作戦は変わらないだろう。基本的にネガティブな発言が多く、大きな事は言わないタイプ。どちらかと言えば、松浦の方が本音ベースのコメントが多く、敢えてリップサービスする事もある。

 個人的に今年、清水に対して一番の思いは、地元防府記念の決勝戦。地元ファンから地響きがある様な声援があり、正面スタンドで一般人と一緒に見ていたが鳥肌が立つ思いだった。ローカルスターではないが、ご当地ソングと言うか、競輪は地元贔屓が魅力のひとつ。

 松浦が逃げて、番手捲りの展開は百パーセントないが、松浦の8番手もないだろう。必ず仕掛けてくれるし、誰かと併走にならなければ、リミッターをカットして狭いコースにも入ってくるだろう。グランプリの大舞台は普段と走り方が変わってくる。それが過去の山田裕仁の優勝や浅井康太の優勝で証明されている。

⑥守沢太志

 優しい面持ちと裏腹にかなりの暴れん坊だった。だけど、荒々しさが消えて、タテ脚勝負になり、成績が急上昇。慎太郎先生とは逆で、先行選手に煩い事は言わないし、本当、好きに走らせる。今のゆとり教育の世代の先行選手には、心地良いだろう。何の煩い事も言わず、しっかり仕事をしてくれるし、こんな有り難いマーカーはいない。

 普通に考えて新田祐大の3番手は、最も勝利に遠い位置。番手だって有利とは言えないし、まして3番手である。昨年の新田は別として、普通の新田ならいつも以上に勝負どころでも構える。一旦は7番手になり、守沢の位置は9番手になるが奇跡を祈るしかない。

 考えられる優勝のパターンは少ないが、新田が何故かカマシに行き、慎太郎が大きくブロック。その内を突く展開しか、僕的には考えられない。強いメッセージ性のある選手ではないが、守沢ファンは多い。ニコ生で言う6番車のメロン車券で大波乱を呼びたい。

⑦平原康多

漢と漢の連係が誕生した 平原康多(左)脇本雄太(右)(提供:公財JKA)
 究極の自在選手。あのさわやかなで優しい笑顔の裏に、人間の悪さが隠れていると疑ってしまうが、誰からも悪い話しを聞いた事がない。本当、みんなが思っている、平原のままだ。12月初旬の日刊スポーツの松井記者の記事を読み、僕自身も、平原が脇本マークもあるのではと考え始める様になっていた(松井記者、東スポの前田記者は優秀だし、同じ路線では勝ち目がないので僕は色物記者で頑張ろうと思っている)。

 とにかくダービーとかオールスター、もちろんグランプリも含めて、賞金の高い特別競輪は勝っていない。これは競輪界の七不思議のひとつだし、平原が勝負弱いとは思えない。

 今の関東の若手自力選手は、本当にダメで、競輪の本質が分かっていない。盟友・武田豊樹の力が落ちてきているし、一人で関東を背負っている感じだ。もっと後輩を叱れば良いのに? と聞いた事がある。その時の答えが「僕は自力選手だし、そこにプライドを持って走っている。後輩を怒るのは簡単だけど、それでは自分が弱いと認めてしまう事になる」。

 平原が脇本マークになった理由は色々あるだろう。GPに縁がないし、切羽詰まったのかもしれない。逆に脇本との連係で、競輪の魅力を伝えたいのかもしれない。何れにしてもこの選択は、今までの流れから、誰も責める事はしない。もし、関東の若手先行選手が、みんなが納得する様なレースをやっていたら、脇本マークはなかったかもしれない。後輩に対して示しがつかないと考えるからだ。

 確か、今年の名古屋オールスター。初日特選で落車し、簡単な怪我には見えなかった。それでも次の日は気迫の先行。結果は8着だったが、あれが平原が平原である所以(このレースで途中欠場)。あの平原の阿修羅の走りを、現場にいて若手に感じて欲しいと思った。毎日の様に僕もツイッターで呟き、SNSで競輪の魅力を発信しているが、統計を取っても、平原の記事が一番反響がある。踏み出しでワッキーに離れる事はないだろし、ゴール前勝負で、寸前差し切りたい。

⑧新田祐大

 人間サイボーグで、走る演説王。選挙に出れば、街頭演説の上手さで当選してしまうかも。経済人や社会的に地位のある人との交友関係も広く、競輪を世間的に広めようと日々努力している。某サイトの裏方責任者として、選手の露出を増やし、選手の地位向上、ファンとの交流など、新田の人脈を活かしてプロデュースしている。

 競技と競輪はカーボンフレームと鉄のフレームの差、競技は超大ギヤだし、ペーサーがスピードを上げてからの勝負になる。全く違う競技と言って良いが、競輪、ケイリンの両方で本当に強いのはワッキーでなく新田かもしれない。昨年は、あっと驚くイン粘り。番手が村上弟なので、踏んでおけば、離れてくる計算もあっただろう。ただ、今年は脇本の番手は平原。普通に考えれば、平原ならワッキーのスピードに対応出来る。いくら3車と言ってもカマシに行く姿は限りなくゼロに近い。

 お約束の構えるレースで7番手になるか、踏んで良い位置を確保して、そこからの勝負になるだろう。とにかく後ろに優しい仕掛けはやらないし、バイクみたいなスピードで捲る作戦が大方の見方。えげつないスピードを持っており、煽りがなければ、ワッキー、平原を飲み込む展開も十分ある。展開負けはあっても脚負けのレースがないのが新田の長所であり短所。もちろん、競輪史上、最強のパワーを持つ。

⑨佐藤慎太郎

 競輪界でナンバーワンのエンターテイナー。僕以上に毒を持つ、ウイットに富んだコメントは記者受けするし、有り難い存在。本音で話してくれるが、普段から若手への気遣いや、レースでの強引な仕事で、慎太郎節が炸裂しても、許されているのが実情だ。来年は、このnetkeirinでも、慎太郎劇場が見られる予定。

 今年、個人的に一番面白かったのは賞金争いが佳境に入った11月の四日市記念。連日、平原康多が慎太郎の為に男気のあるレースをやり「競輪界を背負っている平原に気を遣ってもらい男冥利につきる。これで賞金でグランプリに出場出来そうだし楽になったよ」。隣にいた平原が笑いながら「もう、慎太郎さん良いでしょ。疲れたし今後は勘弁」と言いながらも、お互いがお互いを認める良い光景だった。慎太郎もその場で、オフレコ&リップサービス&ブラックジョークで「グランプリは新田でなく、平原の番手がいいな。その方が堅い!」とメンバーが決まる前だったが、我々記者を爆笑させた。

 普通なら新田の番手は優勝に最も遠い位置。ただ、昨年の信じられないレースがある。あれが一発勝負の怖さであるし、一瞬のスキがあれば連覇も可能だろう。本人は、来年も1番車のユニフォームを、そのまま使うと公言している。

一発勝負の怖さを知り、そして一瞬のスキを狙う北日本勢の守沢太志(左)、 佐藤慎太郎(中)、新田祐大(右)(提供:公財JKA)


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町田洋一

Machida Yoichi

基本は闘うフリーの記者。イー新聞総合プロデューサー、アオケイ・企画開発パブリストの肩書きも持つ。自称グルメでお酒をこよなく愛す。毒のある呟きをモットーにして、深夜の戯言も好評を得ている。50代独身で80代の母親と二人暮らし。実態はギャンブルにやられ、心がすさみ、やさぐれている哀しき中年男である。

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